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ラグビー コラム 2020年10月12日

【ハイライト動画あり】名勝負誕生。7か月ぶりのテストマッチは88分超の死闘に!ブレディスローカップ2020第1戦「ニュージーランド×オーストラリア」

ラグビーレポート by 多羅 正崇
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ホイッスルの直後、膝から崩れ落ちる選手も

「ここまでの死闘になるとは思っていなかった」

試合後のピッチで、この日オーストラリア代表で節目の100キャップを獲得したFLマイケル・フーパーはそう振り返った。

ラグビーの国代表戦(テストマッチ)は新型コロナウイルスの世界的流行により、今年3月の欧州6か国対抗戦から約7か月にわたり中断されていた。

そして迎えた、中断後初のテストマッチ。

10月11日(日)、ニュージーランド(NZ)のウェリントンで、NZとオーストラリアの定期戦「ブレディスローカップ」第1戦が開催された。

強風が吹きつける港湾都市、首都ウェリントンのスカイスタジアムに集結したファンは3万1020人。

ホームのオールブラックス(NZ代表)はFLサム・ケインが新キャプテンに就任し、指揮官も8年アシスタントを務めたイアン・フォスターHC(ヘッドコーチ)に。

心機一転の初陣では、この日3人のノンキャップ選手(LOトゥポウ・ヴァアイ、FL/NO8ホスキンス・ソトゥトゥ、WTBケイリブ・クラーク)が、リザーブから嬉しい黒衣デビューを果たした。

一方、NZ出身であるデイヴ・レニーHCを新指揮官に迎えたワラビーズ(オーストラリア代表)はFLフーパーが主将。

若手の台頭著しいオーストラリアで、この日はFLハリー・ウィルソン、CTBハンター・パイサミ、WTBフィリポ・ダウングヌが先発から代表デビュー。控えのノア・ロレシオも初キャップが期待されたが、両軍で唯一出場がなかった。

キックオフ直前、NZ代表はTJ・ペレナラのリードで先住民マオリの舞踊「ハカ」を披露。対峙するワラビーズは弧状の陣形で受けとめた。

そしてワラビーズ主将をして「死闘」といわしめた試合は、曇天の下、オーストラリアボールでキックオフを迎えた。

序盤の攻勢は、強烈な風下に立ったワラビーズ。

アタックではフェーズを重ねて勢いよくキャリアーを走らせ、ディフェンスでは出足の鋭いディフェンス、激しいブレイクダウン(ボール争奪局面)でプレッシャーをかけた。

【ハイライト】ニュージーランド vs. オーストラリア|ラグビー ブレディスローカップ2020 第1戦

しかし先制トライはオールブラックス。

前半9分、先発予告のあったボーデン・バレットに代わり、急きょ15番を背負ったダミアン・マッケンジーがキックカウンター。

敵陣に入ると巧みなハンドリングスキルで、右大外のWTBジョーディー・バレットを余らせてフィニッシュ。ゴールは不成功も5点を先取した。

ワラビーズはこの日デビューのWTBダウングヌが活躍。

俊敏かつ強靱な走りでゲインを重ね、ディフェンスではジャッカルでも貢献。FLウィルソンもキャリアーとして再々ボールを持ち、CTBパイサミはロングキックでも魅せた。

ただオールブラックスは堅守で対抗。

FLケイン主将、NO8アーディー・サヴェアらFW陣だけでなく、FBマッケンジーなどBK陣も要所でジャッカル。得点機の芽を摘み、1PGを決め合って5点リード(8-3)をキープした。

前半終了間際にあったCTBリーコ・イオアネの独走トライはビデオ判定でグラウンディングが認められず、8-3とリードしたまま後半へ。

するとオールブラックスは後半3分、ラインアウトからWTBジョージ・ブリッジが突破し、左隅を駆けていたSHアーロン・スミスが片手トライ(ゴール失敗)。リードを10点(13-3)に広げた。

しかしワラビーズにもトライが生まれる。

CTBパイサミの好キックから敵陣へ入ったワラビーズは後半12分、デコイ(おとり)でフリーになったSOジェームズ・オコナーが左サイドへ走り、大外で待っていたWTBマリカ・コロインベテのフィニッシュに繋げた。

ビハインドを5点(8-13)に縮めたワラビーズはさらに10分後(後半22分)。

運動量豊富に動き回りながら、ハイテンポな連続攻撃の5フェーズ目で3対2を創出。そこからWTBダウグンヌの代表戦初トライが右隅で生まれた。13-13

この辺りから雨が激しくなり、ハンドリングエラーも増えて混沌としていく。

ワラビーズは後半34分、風上を利用したロングキックから敵陣に入り、PG成功でついに3点をリード(16-13)。

しかし観客席からの「オールブラックス!」のコールを受け、NZも試合終了間際に敵陣のエリア中央でPG成功。ふたたびスコアを同点(16-16)に戻した。

そしてこの後のリスタートから、試合は死闘の様相を呈していく。

ワラビーズは後半40分、自陣で待望のペナルティを獲得。するとここでワラビーズは途中出場のモンスターブーツ、リース・ホッジによるショットを選択。

距離は風上ながら約60メートル。これが決まればオーストラリアにとってウェリントンにおける2000年以来20年ぶりの勝利となるキックだ。

そしてホッジの右足により放たれ、風に乗ったボールを大きく飛び――なんとH型ゴールの右ポストに直撃した。

跳ね返ったボールは、チェイスしていたワラビーズの手に。ここからNZファンにとっては悪夢のような連続攻撃が突如として始まるが――7フェーズ目で、NO8サヴェアが値千金のジャッカル。

さらにプレーは継続され、後半44分、NZ代表は逆転をかけて敵陣左のラインアウトへ。しかしここで雨の影響もあってかジャンパーがキャッチできず、またワラビーズが攻撃に転じる。

オーバータイムは6分を超え、ワラビーズの攻撃は10フェーズに。すると再度ターンオーバーが起こり、SOモウンガ、途中出場のWTBクラーク、NO8ソトゥトゥらが激しく突進。

沸き起こるオールブラックコールのなか、オールブラックスも波状攻撃。さらにめまぐるしく攻守交代が起こり、雨の中、観る者すら酸欠に陥るような死闘が続く。

後半44分30秒からピッチ全面で動き続けた両軍の戦いはついに88分を超えた。と、ゴール目前に迫ったオールブラックスだが、ここで途中出場のソトゥトゥのパスアウトが乱れたところから相手ボールに。

しかし自陣ゴール前から攻め上がる気力なしと判断したのか、ワラビーズのSOオコナーはボールを受けると、外へ蹴り出した。

ピッチに歓喜はなく、全てを出し切った様子の両軍選手の姿があるばかり。ワラビーズの数選手はホイッスルの直後、膝から崩れ落ちていた。伝統の定期戦は16-16という壮絶なドロー決着となった。

ワラビーズのFLフーパー主将は試合後に語った。

「ほぼ1年ぶりの試合だったが、結束して試合をすることができた。悪天候のなか、このような結果になったが良い試合だった。ここまで死闘になるとは思っていなかった」

一方、NZ代表のFLケイン主将も、試合後のピッチでテレビインタビューに答えた。

「どちらのチームにもチャンスがありました。後半はもっと工夫が必要だったでしょう。前半と同じようにプレーすることが求められていました。ワラビーズと対戦することはいつでも誇り。来週はもっとシャープな感覚で臨みたい」

第2戦は10月18日(日)、NZの大都市オークランドのイーデンパークで開催される。

コロナ禍による中断後初のテストマッチで、ライバル国同士の譲れない想い、ラグビー国際試合の醍醐味を伝えてくれた両チーム。次戦はどんな熱戦を私たちに届けてくれるのだろうか。

文:多羅正崇

多羅正崇

多羅 正崇

スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。

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