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2019年ワールドカップでの南アフリカ代表
2019年、ラグビーワールドカップを制した「スプリングボクス」こと、南アフリカ代表が次のワールドカップに向けて再始動した。
ニュージーランド、オーストラリアに続き、南アフリカでも10月9日(金)にスーパーラグビーが開幕する。それに先立ち、10月3日(土)「スプリングボク・ショーダウン」という名の南アフリカ代表の選考試合が、ケープタウンのDHLニューランズで開催された。
11月7日(土)に開幕が予定されているニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンの4カ国対抗戦「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」に挑むスプリングボクス入りをアピールするため、ワールドカップ優勝メンバー13人と若い有望株加えた約50名の代表候補選手たちが緑のジャージーを着た「グリーン」チーム、白いジャージーを着た「ゴールド」チームに分かれて、セレクションマッチを行った。
コロナウィルス感染拡大防止対策のため、試合は無観客で行われ、選手もプレー時以外はマスク着用し、入場時には手指を消毒していた。
約半年に及ぶロックダウンののち、待ちに待ったラグビーの再開となったこの日、スタジアムは快晴で、風もほとんどなく、絶好のラグビー日和となった。試合は現地時間午後5:05に、グリーンのSO(スタンドオフ)エルトン・ヤンチースによりキックオフされた。
さすが南アフリカ代表候補選手たちの一戦である。ラグビーができる喜びとともに、接点で激しく身体をぶつけ合うシーンが終始、目立っていた。
先にチャンスを得たのはゴールドだった。ジャッカルで相手の反則を誘い、前半9分、PG(ペナルティゴール)のチャンスを得たが、若きSOダミアン・ウィレムセが外してしまう。
その後は徐々にセットプレー、特にスクラムが優勢だったグリーンの流れになる。グリーンは16分、21分とSOヤンチースがPGを落ち着いて決めて、6-0とリードする。
前半、残り10分くらいになると逆にゴールドのFW(フォワード)陣が奮闘し、スクラムで相手の反則を誘うなどペースをつかむ。28分にSOウィレムセが再びPGを外してしまうが、33分にやっと正面のGPを決め、3-6とする。その後、2度のPGのチャンスをSOウィレムセが外してしまい、試合はそのままグリーンが6-3とリードしたままで折り返した。
両チームともコンバインドチームのため、ノックオンやミスも多く、ボールがつながらない前半だった。
後半、リードされたゴールドはSHハーシェル・ヤンチースを中心にボールを継続し、相手ゴール前に迫る。だがグリーンはSOヤンチースがインターセプトしピンチを脱する。
なかなかトライシーンが生まれないかと思った矢先の後半5分、試合が大きく動く。カウンターからグリーンのSH(スクラムハーフ)サネレ・ノハンバがゲインし、裏へゴロパン。
さらにそのボールをキャッチしたWTBヨウ・ペンスが足にかけてインゴールに迫る。だが、ゴールドのSOウィレムセがWTBペンスを引っ張ってとめてしまいペナルティトライ。グリーンが13-3とリードするとともに、SOウィレムセはシンビン(10分間の一時的退場)となってしまう。
なんとか点差を詰めたいゴールドは14分、途中出場のSOカーワン・ボッシュがPGを決めて、6-13と追い上げる。だが17分、グリーンもすぐに反撃し、ゴール前のモールを押し込み、最後は2019年ワールドカップでキャプテンだったFL(フランカー)シヤ・コリシが体を反転させてインゴールにグラウンディン。18-6とリードを広げる。
29分、ゴールドのSOボッシュがPGを決めて9-18と点差を縮めたが、最後まで試合を支配したグリーンは34分、ゴール前でオープンサイドにハイパント。相手の頭に当たったボールが転がり、最後は途中出場のFLジュアルノ・アウグスタスが押さえて右隅にトライ、若きSOケイド・ウォルフターが、難しい角度のゴールを決めて25-9。試合はそのままグリーンが勝利してノーサイドを迎えた。
勝利したグリーンの指揮官ムズワンディル・スティック南アフリカ代表アシスタントコーチは「できるだけテストマッチに近づけたかった。プレッシャーをかけたかったし、相手にボールを持っている時間とスペースを与えたくなかった。私たちはセットプレーとキックのゲームを使いたいと思っていた」と振り返った。
ラグビー南アフリカ代表選考試合
【ハイライト】スプリングボク・ショーダウン グリーン vs. ゴールド
スプリングボクスでもスキッパーを務めていたキャプテンのFLコリシは「私たちにとっても個人的にも、若い選手たちと一緒にやることは特別でした。彼らがスプリングボクスの新しいメンバーとして歓迎されていると感じていることを確認したかったし、彼らと一緒に時間を過ごした。彼らが今夜プレーするのを見るのは特別だった」と若手選手たちとの機会を喜んだ
ただ、コリシは「南アフリカのラグビーとしては自分たちの才能を発揮して良かったが、フィットネスや試合準備の面ではワールドカップの時とは程遠い」とナショナルチームとしてのパフォーマンスには、やはり満足な出来とはいかなかったようだ。
一方、ゴールドを率いたキングスのHC(ヘッドコーチ)のデオン・ダーヴィッツは、「この試合の目的は、選手たちが自身の才能を披露することと、経験を積み、先輩と後輩の間で情報を共有することでした」と述べた
さらに「若い選手たちはスプリングボクスの環境に触れることができ、私たちのチームでは素晴らしい1週間でした。グリーンチームからも聞いたことですが、シニアの選手たちが経験を共有し、指導してくれました。
選手たちのトレーニング能力を見て、どこに準備があるのか、何が必要なのかを知ることができたのも素晴らしい機会でした」と振り返りつつ、「選手たちには貴重な経験を積んでもらい、より良い選手になるためにこの経験を持ち帰って欲しいと思います」と締めくくった。
ゴールドキャプテンを務めたCTB(センター)ルカニョ・アムも「我々のチームの若い選手たちにとって、経験豊富なスプリングボクスと肩を組むことができ、この環境で吸収する機会を得ることは大きな意味があった。そしてスプリングボクスとして、私たちは彼らと知識を共有することを楽しんだし、彼らがより良いプレーヤーとして彼らのチームに戻れることを願っています」と若きタレントの成長を願った。
優勝した2019年ワールドカップ後、やっとスプリングボクスもリスタートした。ここから南アフリカのスーパーラグビーなどの試合を重ねながら、11月7日に開幕予定の「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」に向けてギアを上げていく。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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