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雪辱を果たす時が来た。多くのラグビー関係者が待ち望んだラグビー関東大学対抗戦の開幕だが、慶應義塾大学蹴球部がこのシーズンにかけてきた思いはただならないものがある。
昨年、慶大は様々な「変化」を経験した。それまでチームの中心を担ってきた一昨年の4年生が引退し、大幅に戦力ダウンしたところからチーム作りを行った。新指揮官として栗原徹監督を招き入れ、新たな戦術を導入した。
さらに慶大蹴球部の長い歴史の中で初めて留学生が2人チームに加わった。創部120周年のメモリアルイヤーに「大学日本一」への期待は高まっていた。しかし、こうした過渡期の最中で結果は思うように奮わず、対抗戦5位、22シーズンぶりに大学選手権出場を逃すこととなった。
LO相部は主将として「誰よりも身体を張る」と意気込む
昨年の4年生の思いと名門校としてのプライドを背負う今年のチーム。主将、副将はそれぞれLO(ロック)相部開哉(政4・慶應)とCTB(センター)三木亮弥(総4・京都成章)が務める。
形骸化しがちなスローガンはあえて掲げず、「常に全力で」「指摘し合う」という行動指針を定めたことに、彼らの勝利への貪欲さや覚悟が垣間見える。
昨年の主な敗因の1つが、ゼロからのチーム作りや新戦術の落とし込みに時間を要した点だといえる。それを踏まえて今年のチームを分析すると、見通しは比較的明るいといえるのではないか。
今年は、昨年レギュラーとして出場していたメンバーの多くがチームに残っている。栗原監督の指揮も2年目に突入し“栗原イズム”は選手にかなり浸透してきているはずだ。
1年生だった昨年からSOに定着した中楠
特に、ゲームをコントロールし、また昨年から積極的に取り入れられ始めたキック戦術では起点になる重要な役割を務めるハーフ団。このハーフ団がSH 上村龍舞(環4・國學院久我山)とSO(スタンドオフ)中楠一期(総2・國學院久我山)に昨年から固定されていることは大きな意味を持つだろう。
FW(フォワード)は、主将のLO相部、FL(フランカー)/NO8(ナンバーエイト)山本凱(経3・慶應)、さらにサンウルブズ練習生を経験し3年生ながらスクラムリーダーの立場を担うHO(フッカー)原田衛(総3・桐蔭学園)を擁する。愚直で、ひたむきな、「慶應ラグビー」をまさに体現する選手がそろい踏みだ。
そしてBK(バックス)は“魂のタックラー”とも称されるCTB三木に、キーパーソンとして栗原監督が名前を挙げたCTB鎌形正汰(商4・慶應)といった上級生組。
加えて、WTB(ウィング)佐々木隼(総2・桐蔭学園)、イサコ・エノサ(環2・King’s college)、さらにルーキーながらすでにトップチームになじんでいるというFB(フルバック)山田響(総1・報徳学園)など、若い力の台頭も見られる。
このように、選手層に厚みが出てきている点も今年の慶大に期待できる要素といえよう。実際、先日明治大学と行われた30分ハーフの実戦形式での練習では26-33と7点差まで迫り、スキル面で劣る相手に対して大きく健闘した。
「チームにとってポジティブな結果だった。自分たちの練習が間違っていないことを確認できる機会になった」(相部)と確かな手応えを得られたようだ。
しかし、いくら実戦形式といえども練習と公式戦では全くの別物。選手たちは公式戦未経験のまま、さらに制約のある練習環境のまま対抗戦に突入することになる。こうした状況で、どの大学も例年通りの準備とはいかないだろう。そうした中で最終的に勝敗を分けるのが「勝利への執念」だと栗原監督は言う。
22シーズンぶりに大学選手権出場を逃すというまさかの結果を受け、どの大学よりも早い昨年12月に新チームを始動させた慶大蹴球部。他校に劣るタレント性をカバーすべく、体づくりや基礎スキルの積み上げを地道に行ってきた。
活動休止期間もモチベーションを保ち、今何ができるかを考え抜いて行動してきた。これらの泥臭い努力の原動力はすべて昨年の悔しさであり、この思いこそが「勝利への執念」に他ならないだろう。
初戦の相手は筑波大学。昨年の対戦では苦杯をなめさせられた相手だけに、意気込みを尋ねると「いつも以上に全力で、食ってやる勢いで」(相部)と強い言葉が飛びだした。
目指すは大学日本一。猛虎復活へ、逆襲の秋がいよいよ始まる。
文/写真:松嶋菜々美(慶應スポーツ)
慶應スポーツ新聞会
慶應義塾大学文化団体連盟所属の公認サークル。通称ケイスポ。全40ある体育会の取材から記事の執筆、年7回の新聞製作まで全て学生の手で行う塾内唯一のスポーツ新聞サークル。部員数約50名、35年の歴史を持つ。»慶應スポーツWebサイト
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