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待ち望んでいた、秋が来た。昨年度、対抗戦では明治大学に敗れて準優勝だったが、大学選手権で同校を下し、11年ぶりに悲願の優勝を果たした早稲田大学ラグビー蹴球部。
真新しい国立競技場に『荒ぶる』を響かせた勢いそのままに新たなスタートを切ろうとした矢先、新型コロナウイルス感染症の影響で活動自粛を余儀なくされた。全体での練習が制限され、もどかしい日々が続く中、先日ついにラグビー関東大学対抗戦の開幕が決定。今年の『荒ぶる』に向け、本腰を入れて動き出した。
今季主将を務めるのはNO8(ナンバーエイト)丸尾崇真(文構4=東京・早実)。2年時からNO8を背負い、チームを支えてきた。早稲田への思いが人一倍強く、闘志に燃えるプレーヤーだ。副将は、LO(ロック)下川甲嗣(スポ4=福岡・修猷館)、FB(フルバック)南徹哉(文4=福岡・修猷館)の2人体制となった。
昨季の優勝を支えたタレントは、FW(フォワード)、BK(バックス)ともに残ってはいるが、スター揃いだった昨年の4年生の存在は大きかった。
特に1年時から4年間、不動のHB(ハーフバックス)としてチームを率いたSH(スクラムハーフ)齋藤直人(令2スポ卒=現サントリー)、SO(スタンドオフ)岸岡智樹(令2教卒=現クボタ)が抜けた穴をいかに埋められるかがカギを握るだろう。
鍵を握るHB、写真はSH小西泰聖
個人の判断力を要する早稲田のラグビーにおいて、チームの司令塔となり、試合のテンポを作り出すハーフ団が果たす役割は大きい。SH河村謙尚(社3=大阪・常翔学園)、SH小西泰聖(スポ2=神奈川・桐蔭学園)、SO吉村紘(スポ2=東福岡)らの活躍に期待がかかる。
FWにはジュニア・ジャパンに選出されたPR(プロップ)小林賢太(スポ3=東福岡)や、セットプレーの中心となる下川、丸尾など献身的に仕事をこなす選手が揃う。
さらに、昨年度桐蔭学園高を初の単独優勝に導き、鳴り物入りで入部した伊藤大祐(スポ1=神奈川・桐蔭学園)にも注目が集まる。CTB(センター)、FB、SOと多くのポジションを経験してきたユーティリティープレーヤーは、どのポジションでの起用となるか。
また、BKを引っ張る1人としてCTB長田智希(スポ3=大阪・東海大仰星)が挙げられる。2年時からCTBに定着し、安定感のあるプレーを披露してきた長田は、優れた調整力や判断力に加え、身体を張ったプレーも魅力である。昨年度磨いたディフェンスや突破力を武器に、今季のBKをけん引する不可欠なピースとなるに違いない。
昨季、大きな飛躍を遂げたFL相良昌彦
特筆すべきは昨年から破竹の勢いで成長を続け、決勝に当時1年生で唯一スタメン入りしてトライを挙げてみせた、FL(フランカー)相良昌彦(社2=東京・早実)だろう。ジュニア・ジャパンにも選出され、キャプテンとしてパシフィック・チャレンジでの初優勝に貢献した経験は、さらなる飛躍の糧となるはずだ。
FWについて、「層の厚みが必要。こいつがケガをしていたから勝てなかった、ということがないように競争してほしい」と相良南海夫監督(平4政経卒=東京・早大学院)は語る。
昨年度はスクラムの強化に力を入れた結果、屈強なFWを強みとする明大にも押し負けない手ごたえをつかんだ。今年度も実力の底上げとセットプレーの安定を図れるか。
また、丸尾主将が「今年は去年の圧倒的なAチームの存在の陰に隠れていた選手たちが出てくる年」と言うように、去年までBチームに甘んじていた選手たちにも目を向けたい。
副将の南をはじめ、191cmのサイズを持つLO(ロック)星谷俊輔(スポ4=東京・国学院久我山)、スピードを武器とするWTB(ウィング)槇瑛人(スポ2=東京・国学院久我山)など、新たな戦力の台頭も見られるシーズンとなるはずだ。
今年度のスローガンは『BATTLE』と設定。『常に仲間と戦い続ける』『自分自身と戦う』『早稲田ラグビーが一つとなり戦う』といった意味が込められている。
自粛期間は自分自身とのバトル。フィジカルトレーニングに力を入れ、個人の体力やスキルを強化する期間となった。そしてついに、他校とのバトルがはじまる。早稲田が1つになる時だ。
通常は春から練習を開始し、春季大会や夏合宿を経て万全の状態で望む対抗戦。今季は実戦経験の不足がどこのチームも課題となり、試合を重ねる中での調整力が重要となってくるだろう。結果は「日々の積み重ね」の先にあると強調する相良監督。
限られた練習時間内でどれだけクオリティーを上げられるか。そして試合を重ねる中で正しい方向へ修正を続けどれだけ成長できるか。全ての「積み重ね」を力に変えるべく、再びの『荒ぶる』へ向けて歩みはじめる。
文:山口日奈子/写真::石井尚紀氏、石名遥氏(早稲田スポーツ)
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