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激戦は最後の笛がなるまでもつれた
お互いの意地と意地とがぶつかったラストゲームは、最後まで勝敗のわからないクロスゲームとなった。
スーパーラグビーでオーストラリアに本拠を持つ4チームと、2017年まで参戦していたフォースの計5チームで行われる国内大会「スーパーラグビー2020 オーストラリア」は、9月5日(土)にレギュラーシーズンの最終戦となる第10節が行われた。
なお、コロナウィルスの感染拡大防止のためのロックダウンの影響で、試合はレベルズの本拠であるヴィクトリア州のメルボルンではなく、中立地のニューサウスウェールズ州ニューカッスルのマクドナルド・ジョーンズスタジアムで開催された。
レベルズは、この試合でフォースに4点差以上で勝てば、3位のワラターズを抜いて、初のプレーオフ進出を決めるという大一番だった。
他にもSO(スタンドオフ)マット・トゥームア、CTB(センター)リース・ホッジ、WTB(ウィング)マリカ・コロインベテといったワラビーズを中心のメンバー構成となった。
また、今年サンウルブズでプレーした2人、HO(フッカー)エフィトゥシ・マアフ、近鉄でもプレーするLO(ロック)マイケル・ストーバーグはベンチ入りした。
一方のフォースは、先週もブランビーズに試合途中まで接戦を演じたものの、14-31と敗れて、白星なく7戦全敗で勝ち点2の最下位に沈んでいる。ただ、7月31日の第5節でのレベルズ戦では、20-25と善戦しただけに、ラストゲームで勝利したいところだった。
50キャップの節目となるFL(フランカー)ブリナード・スタンダーが先発し、釜石シーウェイブスでのプレー経験のあるFLケイン・コテカはベンチに回った。
東芝でもプレーする元オールブラックスのCTB(センター)リチャード・カフイはメンバー外となってしまったが、チーム最多の4トライをあげている20歳のWTBバイロン・ラルストンが先発復帰した。
前半開始早々は、全敗は避けたいフォースが相手陣で試合を進める。相手の反則後、前半8分、キャプテンSHイアン・プライヤーがPG(ペナルティゴール)を決めて、3点を先制する。その後はレベルズの時間帯になるが、ラストパスやラインアウトが合わず、自分たちのミスで得点を取ることができない。
だが、悪い流れを断ち切ったのはHOジョーダン・ウエレセのキックチャージだった。その直後の17分、相手陣5mのスクラムのチャンスを得て、ラインの裏から走り込んできたWTBトム・ピンクスが中央にトライ。SOトゥームアのゴールも決まって、7-3と逆転に成功する。
すぐにフォースも反撃し、直後の19分、キックオフしたボールをキープし、FBジャック・マクレガーのショートパスから、サモア代表CTBヘンリー・タエフが抜けだし、そのままステップを切って中央にトライを挙げて、8-7と逆転する。
その後は地力に勝るレベルズが、キックを使い相手にプレッシャーをかけると相手が反則を犯してしまい、23分、25分とSOトゥームアがPGを連続で決めて、再び13-8と試合をひっくり返す。
その勢いのまま、27分、レベルズのLOトレヴァー・ホセアがチャージし、転がったボールを、PR(プロップ)キャメロン・オアが右大外にロングパス。そのパスを受けたCTBホッジが、タックルを受けながらもグラウンディングし、20-8とさらにリードを広げる。
35分、レベルズはPRオアのトライかと思われたが、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)の末、オブストラクションでノートライ。一方、なんとか相手の攻撃をしのいだフォースは前半終了直前に、相手ゴール前モールを押し込み、HOアンドリュー・レディーが押さえてトライ、13-20として前半を折り返した。
後半、7点差を追うフォースが畳みかける。3分、再び相手陣奥でモールを形成し、最後は再びHOレディーが押し込み、SHプライヤーのゴールも決まって、20-20の同点に追いつく。さらに15分、相手の反則で得たPGをSHプライヤーが決めて23-20とついに逆転する。
16分、逆転されたレベルズのWTBピンクスが焦りからか、デリバレイトノックオン(インテンショナルノックオン)を犯してしまい、イエローカードを出されてシンビン(10分間の一時的退室)となる。
数的有利となったフォースは17分、ラインアウトを起点にボールを継続して、最後はFLスタンダーがピックして持ち込んで右中間にトライ。ゴールも決まって30-20とリードを広げた。
ここで得点を許すと勝利から遠ざかってしまう14人のレベルズだが、カウンターから現役ワラビーズたちが魅せる。
19分、相手のキックをキャッチしたFBハイレット ペッティ、WTBコロインベテ、CTBホッジとパスを回し、さらにホッジからコロインベテ、ハイレット ペティと戻して、そのまま右中間にトライ。同じくワラビーズのSOトゥームアのゴールも決まって、27-30と追い上げる。
残り20分弱、どちらに勝負が転ぶかわからない中、21分、相手キックオフ直後に、空中でボールをキャッチした相手にフォースのWTBラルストンがコンタクトしてしまい、シンビンとなる。
数的優位となったレベルズだが、終盤でプレッシャーと疲れのため、ノックオンなどのミスも増えて、トライに結びつけることができない。33分、WTBコロインベテのトライもTMOの末、直前のパスがスローフォーワードの判定となりノートライ。
35分、再びフォースは規律を守れずにFLファーガス・リー・ワーナーが寝たままプレーしてしまいシンビン。再び数的優位となったレベルズは38分、LOマット・フィリップが中央にグラウンディングしたかに思えたが、これもTMOの末にノートライ。
スーパーラグビー2020 オーストラリア
第10節 レベルズ vs. フォース
さらに攻勢をかけるレベルズは39分、スクラムを起点に途中出場のFBアンドリュー・ディーガンが前に出て、HOマアフが持ち込み、最後はPRカブス・エロフが中央にトライ。
試合終了のホーンを待って、SOトゥームアがゴールを決めて34-30と大逆転し、4点差の勝利を挙げて、ワラターズを交わして3位となり、プレーオフ進出を決めた。
逆転勝利を収め、クラブ史上初のプレーオフ進出を決めたレベルズのデイビッド・ヴェッセルズHC(ヘッドコーチ)は、まず「両チームとも全力を尽くした。フォースは色々と厳しい状況にあっても素晴らしい努力をしていた」と自身の古巣でもあるフォースの健闘を称えた。
そして指揮官は「とにかく(プレーオフ進出という)この結果に満足している。クラブにとってとても大きなことだ。これまで多くの関わった人たちのためにも意味のあることだ」。
「セミファイナルにたどり着くまでに、他のチームよりもタフな戦いとなった。だが、やり切った選手たちを本当に誇りに思うし、今までに経験できなかったチームスピリットを作ることができたと思う」と感慨深げに話した。
キャプテンのFBハイレット ペッティも「ちょっとホッとしたし、選手たちを誇りに思う。かつてのレベルズだったら、このような苦しい状況に陥ったらそこから立ち直ることができなかったかもしれないが、今日はそれができた」と胸を張った。
一方、新型コロナウィルス感染拡大の影響により、ホームで1試合もできない状況の中で何度も善戦したが、1勝もできず大会を終えることになったフォース。
ティム・サンプソンHCは「準備期間も短く、ホームから離れて過ごさねばならなかったが。慣れない土地でトレーニングし、愛する人々がそばにいないというのはなかなか難しかった。だが、そのことがチームの結束を強くした」と話した。
続いてサンプソンHCは「私のやり方がうまくいかなかったこともあって、反省も多いが、チームは日を追うごとに良い準備ができるようになった。最後まで、チームは諦めなかった」と選手たちをねぎらった。
1つ歴史を作り、プレーオフ進出を決めた3位のレベルズは、9月12日(土)に、ブリスベンのサンコープ・スタジアムで、2位のレッズとプレーオフ準決勝を行う。最終戦でもリーグ戦首位のブランビーズを26-7で下した上り調子のレッズに対し、レベルズはすべてをぶつける。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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