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ラグビー王国の精鋭が北島と南島に分かれて激突 リッチー・モウンガ対ボーデン・バレットほか ファン垂涎のマッチアップは必見。 88年ぶりに発見された伝統のカップにもご注目を。
村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一ラグビー王国ニュージーランド(NZ)の精鋭を集めた「インターアイランドマッチ2020 北島対南島」が、9月5日(土)、日本時間の午後4時10分に同国の首都ウェリントンでキックオフされる。南北対決は1897年から始まり、かつてはNZ代表オールブラックスを選出するセレクションマッチだったが、1986年以降は定期的に行われなくなった。1996年に発足したスーパーラグビーのチームからオールブラックスを選ぶようになってからは必要もなくなっていたが、今年はコロナ禍で試合数が少なく、伝統の一戦が復活することになった。Covid-19の各都市の警戒レベルに違いがあり、当初予定されていたオークランドからウェリントンに場所を移し、無観客で行われる。
オールブラックスを選ぶにあたっては、単に個人技だけではなく、規律の高さやチームの中で機能できるか、コーチ陣の作りたいチームにフィットするかどうかなど、さまざまな視点があるが、観戦側としては、ラグビー王国のスター選手の織り成すスーパープレーの数々を堪能したい。発表されたメンバーを見ると、さらに胸が高鳴る。チーム分けは、初めてプレーした州代表が北島か南島かが基準になっている。
【北島】スターティングメンバー
チームを操るハーフ団は、北島がTJ・ペレナラとボーデン・バレット、南島はブラッド・ウェバーとリッチー・モウンガだ。すでに全員がオールブラックスで昨年のラグビーワールドカップ(RWC)に出場しているが、モウンガはNZ版スーパーラグビー「アオテアロア」でクルセイダーズをけん引し、優勝に導いた。正確なキック、パスだけではなく、ランでも魅せた。世界最高のSOとも言われるバレットも卓越したスキルを持つ。オールブラックスの正SOに相応しいのはどちらなのか。2人の動きから目が離せない。
【南島】スターティングメンバー
アオテアロアで猛アピールした成長株と言えば、南島のウィル・ジョーダン(22歳)、北島のケイリブ・クラーク(21歳)のWTBだ。クルセイダーズのトライゲッターとして、WTB、FBでランニングスキルの高さを見せたジョーダン、ブルーズのWTBとしてパワフルなディフェンス突破を連発したクラークは、まだオールブラックスでは試合に出ていない。代表デビューを果たすのはどちらかのか。この対決も面白い。
北島のキャプテンはLOパトリック・トゥイプロトゥ。FLアーディ―・サヴェア、CTBアントン・レイナートブラウン、リーコ・イオアネ、WTBセヴ・リース、FBダミアン・マッケンジーなどオールブラックスのスター選手に今後の代表入りを狙うNO8ホスキンス・ソトゥトゥやクラークが入ってどう機能するか。
南島もLOサム・ホワイトロックをキャプテンに、PRジョー・ムーディー、コーディー・テイラー、FLシャノン・フリゼル、WTBジョージ・ブリッジ、CTBジャック・グッドヒュー、FBジョーディー・バレットとオールブラックスのスター選手が並ぶ。代表入りを狙うFLトム・クリスティー(22歳)、NO8トム・サンダース(26歳)、CTBブレンドン・エノーら、すでにスーパーラグビーの実力を証明している選手も多く、クルセイダーズを軸にしている南島が組織プレーでやや優位か。
いつもは南島のクルセイダーズでプレーするセヴ・リースは北島のワイカトでデビュー、北島のハリケーンズでプレーするジョーディー・バレットは、カンタベリーでデビューしており、それぞれ北島、南島でプレーする。このあたりの組み合わせも興味深いところだ。
なお、試合には、2つのトロフィーが用意されている。新しく作られたものは、NZが南北の島に分かれたマオリ族の神話をベースに釣り針を象っている。そしてもう一つが「Loving Cup」(愛でられる杯)だ。実はこのカップ、かつて北島と南島の定期戦の勝者に贈られていたが、1932年に北島が授与された後、跡形もなく消えた。このほど、長らく行方を探っていた歴史家が改めて呼びかけたところ、オークランドのイーデンパークで発見された。カップと台の部分が別々に保管されていたために、管理者が気付かなかったようだ。大きさはラグビーワールドカップの優勝チームに贈られる「ウェブエリスカップ」の2倍近くある。88年ぶりに日の当たる場所に出てきたカップにも注目していただきたい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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