大野均×大西将太郎 台所のアスリート対談

僕とは同い年でワールドカップにも一緒に出た特別な友の引退。寂しい気持ちもあるが、新しい「大野均」を知ることもできて新鮮な部分もある。そこで、J SPORTSオンデマンドで配信中の「実況！台所のアスリート」の企画で僕が聞き手となり、均ちゃんが料理と酒＆その他代表の事などについて、リモートで語ってくれた。

将太郎─ 大野さん？キンちゃん？ん？何て呼べばいいんだ？（笑）とりあえず、こんにちは。

大野均─ ほんとだね。変な感じです（笑）こんにちは。

将太郎─ まず映像の自己紹介で東芝ブレーブルーパス普及担当の大野均です。っていうのに、違和感もありましたし、やっぱり引退してしまったんだな。と寂しくなりました。

大野均─ そうだよね。俺もまだしっくりきてないし、慣れないね（笑）

将太郎─ 今日はアスリートの台所事情を探っていくという企画です。日本代表で一緒に戦ってきた仲間ではありますが、シェフ大野とライター大西というポジションで楽しくやっていきたいと思いますのでよろしくお願いいたします。

大野均─ はい。よろしくお願いします。

将太郎─まずは、今回作った料理「アクアパッツァ」にしようと思ったのはどうして？

大野均─やっぱりこういうコロナ禍の中で、家で料理をする時間が多くなり、ちょっと手の込んだ珍しいものを作りたいと思ったんだよね。そこで、コロナになる前に行った秩父宮ラグビー場の近くにある「アクアパッツァ」っていうイタリアンレストランで食べたアクアパッツァがすごく美味しかったことを思い出したんだよね。それで調べていたら、そこの日高シェフがYouTubeにレシピ動画をupされていたのでそれを見て作ろっかなと思った。

将太郎─この動画でのが「アクアパッツァ」が初チャレンジ？？

大野均─いや、何回も作ってるよ。

将太郎─この動画の魚は鯛ですよね？

大野均─そう！この時は鯛だったけど、前にはイサキで作ったり他の白身魚で作ったりして、すごくハマってるかな。

将太郎─それでは、きんちゃんと料理について聞いていくね。きんちゃんと料理の出会いは？

大野均─料理は中学時代から興味を持っていて、見様見真似でチャーハン作ったり、色々なものを作ってたかな。でも、一番は大学時代に居酒屋でバイトを始めたことが大きくて、その時に色々な基本を教えてもらったかな。

将太郎─ということは、居酒屋のバイトで厨房に入っていたわけ？

大野均─うん。でも、もともとはウエイターをやりたくて面接に行ったんだよね。そこで、「採用するから明日から来て」って言ってもらって、楽しみに行った。そしたら、店長に「君は大きいし、君に合うウエイターの制服がないからとりあえず厨房に入っといて！」って言われた。（笑）

将太郎─その後、ウエイターもした？

大野均─いや、最終的に「君はデカくて、お客さんが怖がるから外に出るな！って言われてずっと厨房にいた」そこから2年間ずっと厨房で最初から厨房に入れるつもりでダマされた。（爆笑）最後はラグビーの試合で指を開放脱臼してしまって厨房に入れず、辞めなくちゃいけないことになったけど。

将太郎─まじ？ということは、料理人への道はラグビーの怪我によって断たれたってこと？？

大野均─そういうことにしておこっか（笑）

将太郎─その時にはすでにめちゃめちゃ作ってたんでしょ？

大野均─厨房で？

大野均─そうね。揚げ物、てんぷらやったり刺身さばいたり。そのときにはもううまくなってたかな。

大野均─逆にしょっさんは料理いつから？（逆質問をうける）

将太郎─俺もきんちゃんと同じで小さい頃から興味があって、よく作ったりしてたかな。あとは大学の寮に食堂がなくて、節約の為にみんなで料理したりしてたかな。今も毎日作ってるよ。

将太郎─あっ！あと、これは後で言おうと思ってたんだけど映像を見たら包丁が一緒やってんな、俺と。 

大野均─ぷはは〜ほんと？！

将太郎─あのグローバルの包丁めちゃめちゃ良くて切れるよね！！

大野均─こだわりあるんだ？俺、全くこだわり無くつかってたけど（笑）

将太郎─でしょうね。気にしてなそう（笑）ほんま良い包丁なんです、アレ！あとはまな板は木のまな板が良いよね。

大野均─あはは！それはやっぱり雰囲気出るかなと思って！！

将太郎─これまで、世界中色々な国で美味しい料理を食べてきたきんちゃんは舌が肥えてるから、自分で作る料理も必然的に美味しくなるでしょうね！今回のアクアパッツアは美味しかった？美味しくなかったとは言えないね（笑）

大野均─もちろん、美味しかったよ（笑）

将太郎─このアクアパッツァの魚は鯛だよね？！ちょっと小ぶりの鯛でしたね。

大野均─そうね、ちょうど家のフライパンに入る大きさの鯛だね。でも、1人で食べるには身も詰まっていて十分な大きさだったよ。それにその後、アクアパッツァの残ったスープでパスタを作るんだよね。にんにくとオリーブオイルと塩、そしてあさりの出汁でシンプルだけど本当に味がコクがあって美味しいの。だから、またそのパスタの残ったスープにフランスパンをつけて食べるという、一つの料理で3度楽しめたんだよね。

将太郎─間違いないね！！それにバジルあるしね。

この前メチャクチャ美味しいバジルを探し求めて見つけたのよ。 バジルって良いものを買うとやっぱり全然匂いが違うから、バジルとかもこだわった方がいいよ。

大野均─ははは〜こだわります！じゃあ（笑）

大野均─バジルといえば。昔、2007年JKジャパン、W杯の直前合宿でイタリアに行ったでしょ？あの時のホテルで食べたパスタ。ジェノベーゼが美味しすぎて、それからずっとジェノベーゼにハマってるわ。

将太郎─覚えてる〜。出てくるパスタ全部美味しかったよね。なつかしいね。

将太郎─今回このようなコロナ禍のなか、またStay Home期間は自炊をする時間というのは増えましたか？特に。

大野均─そうだよね。ほとんど毎日自炊してたよね。

将太郎─特に夜やんね？

大野均─そう、夜！！

将太郎─今回も白ワインがすごく似合っていて美味しそうだった。
で、きんちゃんと言えばお酒！！一番聞きたかったことかもしれないけど、やっぱり家でも料理によってお酒ってを変えはるんすか？

大野均─それはそうだね。というよりも、その日に何を飲みたいか？！それで、晩ご飯のメニューを決めるというのが正解かな。

今日は日本酒が飲みたいとなれば、刺身だったり、みょうがとしらす和えのように飲みたいお酒によって作る料理を変えるかな。

将太郎─あっ！そっちが先？お酒が先に来るっていうのがきんちゃんらしくていいね！！
でも、お酒はまずはビール？他のお酒の時もある？

大野均─いや、最近ビールはあまり飲まないね。ワインやハイボールそれか、日本酒か焼酎とかかな。あれ、ビール以外全部か（笑）ビール飲んでしまうとすぐお腹一杯になっちゃうからさ。

大野均─しょっさんは家で飲まないの？

将太郎─うーん。まず、外でもあまり飲まないから家ではまず、飲まないよね。
料理はほぼ毎日作るけど、何かを作ろうと思ってスーパーに買い物に行くというよりもその日に安かったり、美味しそうなものを買って冷蔵庫に入れる。それから、何を作ろうか考える。いや、主婦やん（笑）

大野均─あー！さすが！！それが出来ればなかなかだね。

大野均─じゃ、しょっさんがもしこの「台所のアスリート」するとしたら何作る？
俺は最初、パスタ作ろうかと思ったんだけど、この企画に出てる人たちは麺類が多かったからやめたんだよね。

将太郎─あっ。今、それを踏まえて言おうと思ったことは「絶対に冷やし中華は作らない」かなと言おうとした（お互い爆笑！）あれだけ、魚を捌いて素晴らしい料理技術をSNSで発信しておきながらこの企画でまさかの「冷やし中華」だったから思わず吹いてしまった。（これは、中村亮土選手の流れをうけて。）

将太郎─今まで遠征や合宿などで思い出に残っている料理やエピソードってある？

大野均─2015年W杯前の宮崎合宿がすごくキツくて、食事も喉が通らない日が続いてた時に翔太（堀江翔太）がホテルのバイキングで美味しいポークサンドを作ってくれたのね。

そのおかげで辛い練習を乗り切れた思い出がある。ポークサンドだけどブルーベリージャム塗ったりとかして。翔太もニュージーランドに単身で行ってる時にチームメイトに教えてもらって頑張れたんだって。

将太郎─翔太とかすっごいうまそう。なんでもこだわってね！また、なんでも出来そうやし。
ラグビーと一緒で！！

大野均─ははは

将太郎─きんちゃんが思う料理とラグビーの共通点は？

大野均─共通点かぁ〜。なんだろうね。
ラグビーも色々な個性があって、それが上手く合わさると良いチームができる。
料理も一緒で、さっき言ったようにブルーベリージャムとソースとマヨネーズみたいに、いっけんどうなの？みたいな感じでもうまくまとまれば良い味が出る。
その辺は似ているのカナ（笑）こんな感じで、どう？（我慢できずに笑う）

将太郎─あの〜良いこと言ってる途中で笑うのやめてもらっていいですか？（笑）

大野均─いや、言ってて恥ずかしくて（爆笑）

将太郎─俺はさすが均やなーと上手くまとめたなぁ〜と思ってたのに途中で笑ってたから。

大野均─個性が大事！！

将太郎─そうね、個性ね！！

将太郎─きんちゃん、現役の時は食事どうしてた？東芝ってクラブハウスの食堂だったっけ？

大野均─あ、東芝は寮生は食堂でご飯出るけど、俺はもう最後一人暮らしだったから自分で作ってたね、夜は。

将太郎─えーー練習終わった後に？

大野均─昼は会社の食堂で出るけど、夜は1人で作ってたね。
練習終わってスーパー行って食材買って、食べたいもの、いや、飲みたいもの（笑）選んで買ってたかな。

将太郎─へ〜〜そうなんや。

大野均─そう。でも、その時間が俺は好きだったかな。疲れたから作りたくないっていう感じじゃなくて、その料理を作ってる時間で1日のスイッチがオフになるという感じかな。

将太郎─疲れたからとか、料理がしんどいからとかじゃなく逆に、その時間があるから頑張れるみたいな感じかな。

大野均─う〜ん。そうね。

将太郎─まぁ〜その時間というのは料理なのか、お酒なのかちょっとわからんけど（笑）

大野均─ははは（笑）さすが、その通り」！！

将太郎─そうやんね（笑）

将太郎─じゃ、東芝の外国人も家で自分たちで作るスタイルなのかな。

大野均─一人暮らしの外国人は自分で家で作ったり、外で食べたりしてるかな。

将太郎─じゃ、今回の料理でここは見て欲しい！みたいな所はどうですか？

大野均─なんだろうな〜。料理のポイント？う〜ん。
でも、味付け塩しか使ってない。塩だけだけど、鯛の油だったり、あさりの出汁だったり、ニンニクの風味だったり、それだけでもすごく美味しい料理ができる。
見てるだけではわからないけど一回作って、食べて感じてもらえたらいいな。

将太郎─均ちゃんのラグビースタイルと同じやね！「シンプルだけどやり通す！！」みたいな

大野均─ははは・・。・ありがとう。さすが、上手くまとめてくれるね（笑）

将太郎─シンプルで愚直にやり通す！！ってね。

大野均─あと一応、途中でフランベしてファイヤーもしてるから！！

将太郎─あ、ほんまや。フランベしてるわ（笑）

大野均─想像以上に火が出たけどね（笑）

将太郎─ははははは〜〜予想以上に火出てた！あれも、日高シェフがやってた？？

大野均─あれは、俺がやりたいからやっただけ（笑）

将太郎─さすが！ラグビーと同じで見ている人達に喜んでもらおうとする姿勢やね。

将太郎─じゃ、やっぱり料理が好きだし、やってる時間というのは夢中になれるものなのかな？

大野均─そうね。野菜だったり肉だったり、何かを切ってる時間て、ストレス発散じゃないけど、そういうリフレッシュす時間になるのかなと思う。

大野均─この味と、この味を混ぜたらどんな味になるのかな？とか、そういうのを考えてるの楽しいし。

将太郎─わかるわ〜。その気持ち！！

将太郎─料理が出来上がるまでに色々味見して、出来上がる頃にはもうお腹いっぱいみたいな。

大野均─で、もう酔っ払ってるし（笑）

将太郎─それは、アンタだけや（笑）！！

将太郎─リーチとかとはご飯食べたりするの？

大野均─うん。リーチはね料理をするっていうよりも、アイツ・・・
焼酎がすきなのね。

将太郎─へーーーーー！！

大野均─俺の家に来たときは、田村優にもらったっていう泡盛を持ってきて・・・
1人で1本空けてたよ（笑）

将太郎─強っ！！！

大野均─アイツ、ああいう見た目だから、知り合いとかファンの人たちからワインやウイスキーとかをよく貰うらしんだけど、「僕、ワインとウイスキー好きじゃないんです」って言って、ほんとは日本酒と焼酎が好きだって言ってた。

将太郎─めっちゃ日本人やん（笑）

大野均─ははは

大野均─一回リーチの家にあるワインとウイスキー、全部オレの家に持ってきたことがあって「コレ、も全部飲んでください」って（笑）

将太郎─へーーそうなんや。

将太郎─じゃ、また飲みにいきましょう。
ありがとう！均ちゃん！

大野均─ありがとう！！

将太郎─バイバイ〜〜〜！！

この取材を終えた数日後、たまたま堀江翔太選手に会う機会があった。その時、本文にあったエピソードをきんちゃんが話していてよ。コラムに書いていい？と聞いてみた。すると、「ありがたいですね。きんさんにそんなことを言ってもらえて！ぜひぜひ書いてください」といってくれた。日本で1番多くの仲間と共に、世界と戦ってきた男は先輩、後輩関係なく、誰からも愛される男だ。
そんな均ちゃんが今回作ってくれた料理は「アクアパッツア！！」
シンプルな味付けながらもしっかりと作り上げる料理を、彼の貫き通したラグビースタイルと被せてぜひとも見て欲しい。