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写真:渡瀬裕司CEO
6月2日(火)、ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの運営法人である一般社団法人ジャパンエスアールが、『スーパーラグビー オーストラリア』への参戦が不可能になったことを受けて、オンラインにて記者会見を行った。
新型コロナウィルス感染拡大の影響により、今シーズンのリーグ戦は中断し、サンウルブズはオーストラリアの国内大会への参戦を模索していた。
しかし、日本からオーストラリアへ入国できない措置が取られており、もし入国が許可されても選手は、トレーニングを開始する前にホテルの個室内で14日間の強制的な隔離が義務付けられ、さらに、チームが12週間滞在するための拠点も用意する必要があった。
その結果、サンウルブズが7月3日からオーストラリアで試合を行うための準備が間に合わないため、オーストラリア国内リーグに参戦しないという現実的な結論に至ったという。
サンウルブズは、来シーズンよりスーパーラグビーから除外されることが決まっており、これによって、5シーズンに渡るスーパーラグビーへの挑戦は、一旦終了することになった。
ジャパンエスアールのCEOである渡瀬裕司氏は「当初、(オーストラリア入国後の)隔離の間もトレーニングをさせてほしいと要望を出していたが、その通りにいかなかった」と話した。
そして、5月27日にオーストラリア協会から、今回、オーストラリア国内で試合は難しいと内々に通知を受けて、5月30日にチームミーティングを行い選手に伝え、前日のリリースに至ったという。
渡瀬CEOは「2020年のサンウルブズは、トップリーグと試合の時期が被り、選手派遣が難しく、多くのご心配をいただいた。パナソニックやいくつかのチームにはご協力をいただきながら、選手の中には覚悟を持って、退路を断って参加してくれた。
思いを持った集合体でまとまりのあるチームになれた。まだまだ、伸びシロのあったチームでしたが、こういう形でシーズン終了することになり、本当に申し訳ない気持ちでいっぱい」と悔しそうに話した。
写真:大久保直弥ヘッドコーチ
今シーズン、コーチから日本人初のヘッドコーチに昇格し、指揮を執っていた 大久保直弥氏は「率直に言って、こういう終わり方になって残念です」。
「この2ヶ月、もう一度、(サンウルブズが)プレーできるように、渡瀬さんはじめ、多くの方が選手のために一生懸命、交渉する姿を横で見させていただいて、納得しています。
(チームミーティングでは)今シーズン、一言で説明するのは難しいですが、選手には胸を張ってほしいということは伝えました。こういう結果になったことで、選手、チームの努力が否定されるわけではない。
特に(今シーズン)集合して(開幕戦の)レベルズ戦までの4週間、現場にいて、本当に日本のラグビーの歴史に名を残すチームであったと思いますし、ひとりひとりの努力がレベルズ戦の勝利につながった。
国境、文化を超えて、一致団結して戦っていくサンウルブズのチームのアイデンティティはもっと評価されてもいいと思いますし、このアイデンティティを私も現場に携わってきた人間として、ファンを含めて共有していきたい。僕個人の意見ですが、サンウルブズの名前を残してもらえれば嬉しい」と話した。
今季、再び試合ができるように交渉等を行っていいたため、来季に関してはまだ何も決まっていないのが現状だ。
ただ、来季、どこかの国内外の特定のリーグに参加するという話もないため、選手を保有し続けることは現実的にはありえないだろう。
今後、ジャパンエスアールやサンウルブズというチームの存続に関して、日本ラグビー協会がメインとなり、協議して決めていくという。
「(2019年の)ワールドカップに向けて日本代表の強化の器として、(サンウルブズは)スーパーラグビーに参戦し、十分にその役目を果たした。
我々が想像する以上に多くのファンが声援を送ってくださり、カルチャーを作ってくれた。あっという間の5年間、ファン、スポンサー、メディアに支えられた5年間でした」(渡瀬CEO)。
ただ、今季のシーズンの締めくくりとして、コロナ禍で状況が許せば、渡瀬CEOは「ファンの方々とつながりができればと思う。贅沢を言えば、試合ができたらベストですが、現実的にどこまでできるか。ファン感謝祭の方が現実的ですし、それはオンラインなのかもしれないが」と話した。
時間的な制限や世の中の状況が許せばということになるが、今季や過去の選手も集まった試合やイベントがあれば、関係者もファンもおおいに喜ぶのではないかと思う。
渡瀬CEOが、今シーズンの活動終了を選手たちに報告すると、選手や今までのコーチングスタッフも含めて、「ありがとう」というメッセージが送られて来たという。
過去、サンウルブズに所属した選手の多くも相次いで、Twitterに感謝のコメントを上げていた。
例えば、SH(スクラムハーフ)流大は「スーパーラグビーでの経験は自分の成長に欠かせないものでした。
2018年シーズンにキャプテンをしたことも素晴らしい経験になりました。サンウルブズは日本のラグビーにとって重要なものだと思います。サンウルブズありがとうございました」と、Twitter上で謝辞を述べた。
渡瀬CEOは「サンウルブズの初年度に真っ先にサインをしてくれた堀江(翔太)、立川(理道)や田中(史朗)もそう、ファンはもちろんのこと、手のみなさんにとってもそういう(大切な)チームだったんだなと思いました。
サンウルブズのために、日本ラグビーのために戦ってくれた全ての選手とスタッフに、心より感謝を申し上げたい」という言葉で締めた。
サンウルブズは日本ラグビーの強化に一役買ったことだけでなく、新たなラグビー文化をもたらした。願わくば、もう一度、サンウルブズの勇姿をホームの秩父宮ラグビー場で見てみたい、ファンの「Awooo!」の声援が聞きたいものだ。
なお、サンウルブズのドキュメンタリー番組が7月12日(日)午後10時から、J SPORTS 3で放送、J SPORTSオンデマンドで配信される。
文:斉藤健仁
ドキュメンタリー 〜The REAL〜
【ラグビー ヒトコム サンウルブズ特集】
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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