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2018年度の日本ラグビーは、神戸製鋼コベルコスティーラーズが主役だった。ニュージーランドの至宝ダン・カーターが質の高いプレーで観客を沸かせ、頂点に立つ。このシーズンは2019年のラグビーワールドカップイヤーに備えるため、トップリーグは短縮バージョンで行われた。16チームを2つのカンファレンスに分けたレギュラーシーズンを経て、全チームが総合順位決定トーナメントに進む方式である。1位~8位を決めるトーナメントの準決勝以上を第56回日本選手権と兼ねて開催した。
ベスト4に進んだのは、神戸製鋼、トヨタ自動車ヴェルブリッツ、サントリーサンゴリアス、ヤマハ発動機ジュビロだった。準決勝は、12月8日、大阪・東大阪市花園ラグビー場、東京・秩父宮ラグビー場で行われ、花園では神戸製鋼が31-19でトヨタ自動車を破る。本コラムで取り上げるのは、歴史に残る死闘となった秩父宮での一戦、サントリー対ヤマハだ。
かつてサントリーを率いた清宮克幸監督がヤマハの指揮官となって以降、両チームの闘いは因縁の対決として語られてきた。サントリーの沢木敬介監督をコーチの道に導いたのは清宮監督である。両チームは前年の準決勝でも対戦し、サントリーがヤマハを49-7で破っていた。しかし、ヤマハも着実に力をつけている。互いに手の内を知り尽くした者同士の闘いは、立ち上がりからアグレッシブに攻め合う好試合になった。
前半2分、サントリーはラインアウトから仕掛け、SH流大、SOマット・ギタウ、WTB尾崎晟也で先制トライを奪う。ヤマハは13分、ラインアウトからモールを押し込み、HO日野剛志がトライ。18分にはモールを押し込むとみせかけて、WTBシオネ・トゥイプロトゥが走り込んでトライをあげた。12-7とヤマハリード。集中力の高い攻防が続き、前半は、22-13とヤマハが9点差をつけて折り返す。
後半に入っても力のこもった攻防が観客を魅了した。パワフルなCTBヴィリアミ・タヒトゥアを筆頭にガツガツと前進するヤマハに対し、サントリーが粘り強くディフェンス。その規律の高さは、試合後、清宮監督が称賛したほど。サントリーは後半2トライを奪い、ヤマハをノートライに抑え込む。前後半80分が終了した時、スコアボードには、25-25という同じ数字が並んだ。
日本選手権史上初、10分間のサドンデスの延長戦が始まった。先にスコアしたチームが勝者となる。開始3分、連続攻撃を仕掛けていたヤマハのSO清原祥がキックを蹴り込んだ。これがやや中途半端な飛距離になる。自陣22mライン付近でボールをキャッチしたFB松島幸太朗がカウンターアタックを仕掛け、一気にヤマハ陣に入ってボールをつなぐ。ヤマハのボールハンター、FLクワッガ・スミスが倒れたサントリーの選手からボールを奪おうと手をかけた。ターンオーバー成功か。しかし、レフリーの笛が鳴る。タックルで倒した選手からはいったん手を放すというルールに反するペナルティだった。紙一重の判定ながら、サントリーに決勝PGチャンスが巡った。
キッカーは元オーストラリア代表のSOマット・ギタウ。ゴールポストまでの距離は約40m、位置は中央。ボールはまっすぐ伸びていった。そして、ノーサイドの笛が鳴る。試合後、称え合う指揮官のコメントは清々しかった。じっくり、見返してもらいたい一戦だ。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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