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「緊急事態宣言」が延長され、不要不急の外出を控える日々。ラグビーの試合もなく、チームとしての練習も原則できない。しかし、選手たちに話を聞いてみると「いま出来ることをするしかありません」、「再開の時により良い自分を目指して日々を過ごします」など前向きだ。過去の名勝負を見て、ラグビーの理解度を深くするのも必ず再開後に役に立つ。観戦する立場でも、過去の試合でチームの足跡を知っておけば、見える景色も違ってくる。今回ご紹介する3試合も胸が熱くなる戦いだ。
J SPORTSは、5月8日~10日、日本ラグビー名勝負!を銘打ち、「全国大学選手権2018-19決勝 天理大学対明治大学」、「日本選手権2006決勝 東芝府中ブレイブルーパス対NECグリーンロケッツ」、「トップリーグ2012-13プレーオフファイナル サントリーサンゴリアス対東芝ブレイブルーパス」の3試合を放送する。
2018年度の全国大学選手権は、絶対王者の帝京大が10連覇を狙った。しかし、関西リーグ三連覇の天理大が待ったをかける。2019年1月2日の準決勝ではFW戦で優位に立ち、29-7で快勝する。秩父宮ラグビー場は王者の完敗という衝撃的な結果にどよめいた。初優勝を狙う天理大は1月12日、決勝戦で明治大と対戦する。明治大は1996年度以来、大学王座から遠ざかり、19年ぶりの決勝戦進出だった。大学随一の人気チームの久方ぶりの躍進に、秩父宮ラグビー場は2万人超の観衆で埋め尽くされた。
結果を先に書けば、明治大の22シーズンぶり13回目の大学日本一が達成される。ただし、ラグビーの面白さが詰め込まれていた。明治大は前半22分、ラインアウトからのサインプレーでWTB高橋汰地がゴールラインを駆け抜けるなど常にリードを奪い、後半21分、HO武井日向がトライ、ゴールで22-5と点差を広げる。しかし、天理大もあきらめない。キャプテンのHO島根一磨がすさまじい闘志でチームを引っ張り、自らトライを返す。その熱いプレーは観客の心を鷲づかみにした。胸が熱くなること請け合いの試合だ。
2006年2月26日、秩父宮ラグビー場での雨中の激闘は観戦した者の脳裏に深く刻まれている。シーズン最終戦となる日本選手権決勝は、トップリーグ、マイクロソフトカップの二冠を手にしていた東芝府中ブレイブルーパス(現・東芝ブレイブルーパス)と、前年の日本選手権王者NECグリーンロケッツの戦いとなった。
東芝は黄金時代を築いた薫田真広監督、冨岡鉄平キャプテン体制4年目、NECは高岩映善ヘッドコーチ、浅野良太キャプテンが率いていた。東芝は立ってボールをつなぐ「スタンディングラグビー」、NECは鉄壁のディフェンスが強み。終盤、東芝の猛攻を止め続けるNEC。雨の中でキック戦略が主体にはなったが、集中力の高いフィジカル勝負からは目が離せない。
2012年度のトップリーグは14チームで行われ、総当たり戦のレギュラーシーズンはサントリーサンゴリアスが13戦全勝で駆け抜ける。4強によるプレーオフトーナメントに進んだのは、2位東芝ブレイブルーパス、3位パナソニック ワイルドナイツ、4位神戸製鋼コベルコスティーラーズ。準決勝では、サントリーが神戸製鋼を38-19で勝ち、東芝は20-8でパナソニックを破った。
決勝戦は、2013年1月27日、秩父宮ラグビー場で行われた。サントリーのキャプテンはLO真壁伸弥。タフに戦い続ける姿でチームを鼓舞する。前半8分、サントリーはPKからSHフーリー・デュプレアが仕掛け、FLジョージ・スミス、WTB村田大志がつないでトライ。34分にもSO小野晃征のキックパスから村田がトライ。CTBニコラス ライアンのゴールも決まって12-3とリードする。
東芝もNO8豊田真人キャプテン、HO湯原祐希、FLスティーブン・ベイツらを軸に得意のモールでトライを目指すが、サントリーのジョージ・スミスが立ちはだかる。サントリーが抜きんでた実力を示したシーズン。運動量豊富に動き回る組織プレー、そして、先発SO小野、途中出場で攻撃を加速させるSOトゥシ・ピシという「アグレッシブ・アタッキングラグビー」を司るプレーメイカーの動きにも注目してほしい。
文:村上晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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