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ラグビー コラム 2020年5月1日

ステイホーム週間は、ラグビーの名勝負を見よう! 多くの若者の人生を変えた早稲田大学の歴史的勝利。 「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」の誇り高き激闘。

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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ステイホームが多くの人の命を救い、新型コロナウイルスと最前線で戦う人たちをサポートすることになる。ラグビーファンの皆さんも未曽有の事態を乗り越えようと踏ん張っている。しかし、ラグビーのない生活は味気ないと感じている方も多いだろう。ステイホーム週間にお勧めしたいのが、ラグビーの名勝負観戦だ。


J SPORTSは、5月2日に「第43回日本選手権2回戦 トヨタ自動車ヴェルブリッツ対早稲田大学」、5月3日に「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ 2017年ニュージーランド遠征テストマッチ第3戦」を放送する。


2006年2月12日、この日の秩父宮ラグビー場にいた人々は若者に夢を与える歴史的勝利を目撃することになった。第43回日本選手権 2回戦、トヨタ自動車ヴェルブリッツ対 早稲田大学。かつては社会人王者と大学王者の実力が拮抗し一騎打ちをしていた日本選手権だが、1987年度の日本選手権で早稲田大学が東芝府中を破って以降、学生は日本一になっていない。実力差は開く一方だった。

第35回大会からは複数参加が基本になり、2005年度シーズンは、社会人5、大学2、クラブ王者1の8チームが出場。大学選手権2連覇の早稲田は1回戦でタマリバクラブを破り、2回戦でトップリーグのベスト4であるトヨタ自動車と挑戦した。清宮克幸監督、佐々木隆道キャプテンというカリスマ性あるリーダーが理詰めで作り上げたチームがどこまで戦えるのか。HO青木佑輔、PR畠山健介、SH矢富勇毅、CTB今村雄太、FB五郎丸歩といった日本代表で活躍することになるタレントを擁することもあり、ラグビーファンの期待は高まった。

対するトヨタ自動車は、LOトロイ・フラベル、NO8フィロ・ティアティアのオールブラックス・コンビに、PR山本正人、豊山昌彦、SH麻田一平、SO廣瀬佳司、CTB難波英樹、遠藤幸佑らの日本代表勢がおり、負けるはずのないメンバーだった。しかし、そう感じるのは外からの視線であり、早稲田の充実はトヨタ自動車の選手たちにプレッシャーをかけていた。トヨタ自動車は試合前のトスに勝ちながら、風下を選択し、後半勝負にかけたのだ。

試合は、早稲田SO曽我部佳憲のキックオフで始まった。緻密な戦略で真っ向勝負を挑んだ早稲田は、前半7分、14分に五郎丸がPGを決め、23分にはラインアウトからのモールを押し込み、佐々木がトライ。11-0とリードする。スクラムでも真っ向勝負。モールを押し込み、早稲田ペースで試合は進んだ。トヨタ自動車も反撃。フラベル、ティアティアのトライで21-14に迫る。後半も手に汗握る展開。そして、ノーサイド。フラベルは「早稲田にはパッションがあった。明確なゲームプランがあった」と学生を称えた。清宮監督、佐々木キャプテンが泣き、曽我部は号泣。この試合を見て、早稲田大学入学を志した選手たちは数知れない。人生を変えるような試合にはそうは出会えない。見るべき試合だ。

続いてご紹介するのは、「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」だ。ラグビー発祥の母国イングランドほか同等の歴史を誇るスコットランド、ウェールズ、アイルランドの英国系4協会のことを「ホームユニオン」と呼ぶ。この4協会の代表チームは「ブリティッシュ&アイリッシュ・ライオンズ」と称され、4年に一度、南半球の強豪国に遠征するのが恒例で、ラグビー界ではラグビーワールドカップに次ぐ一大イベントと言っても過言ではない。

2017年はラグビー王国ニュージーランド(NZ)へ遠征。同国代表オールブラックスとのテストマッチを含む10試合を行った。この遠征も歴史に残る結果になった。NZへは2005年以来12年ぶり。前回はテストマッチに3戦全敗という不甲斐ない戦績だったこともあって、2017年はテストマッチでの勝ち越しを狙った。ライオンズのキャプテンは、ウェールズのFLサム・ウォーバートン。LOマロ・イトジェ(イングランド)、SOジョナサン・セクストン(アイルランド)、FBスチュワート・ホッグ(スコットランド)など2019年のラグビーワールドカップ(RWC)で活躍することになる選手が多数含まれていた。

遠征第7戦、テストマッチ第1戦は6月24日、オークランドで行われ、オールブラックスが30-15で快勝。ライオンズは第2戦(7月1日、ウェリントン)、24-21で僅差勝負をものにし、対戦成績を1勝1敗とする。そして、最終戦は7月8日、再びオークランドのイーデンパークで開催された。試合は互いの意地がぶつかり合って死闘となる。


序盤からスピーディーに攻めるオールブラックスは、FBジョーディー・バレット、CTBンガニ・ラウマペら若手の活躍で前半を12-6とリードで折り返す。ライオンズも後半1分、WTBエリオット・デイリーが約55mのPGを決め、その後も体を張ったディフェンスで互角の好勝負を繰り広げた。


試合は最後までもつれる。その結末は皆さんの目で確認していただきたい。この試合では、オールブラックスのバレット3兄弟(ボーデン、スコット、ジョーディー)が揃ってプレーした。スコットが途中出場だったので、3人が同時にピッチに立ったのは3分間だけだが、3兄弟が同時にプレーするのはオールブラックス史上初のことだった。2019年のRWCを思い出しつつ、楽しんでいただきたい。


文:村上晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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