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ラグビー コラム 2020年3月30日

スーパーラグビー2010~2012は、群雄割拠の時代 マット・フィールド、ソニー・ビル・ウィリアムズほか 不世出のスーパースターが躍動する。必見!

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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スーパーラグビーは、1996年から始まった。今シーズンは25周年だ。いまは中断しているが、それまでの中継のなかでは、ときおり懐かしい映像がはさみこまれていた。世界最高のエンターテインメントラグビーとも呼ばれるスーパーラグビーは、激しくぶつかりあいながら、フィールド内を動き回り、変幻自在のパスやキック、スピーディーなラン、鋭角的なステップなどで観客を魅了してきた。

写真:2009年、2010年と連覇した強豪ブルズ

そのスーパーラグビーが新型コロナウイルスの感染症拡大で予期せぬ中断に追い込まれている。こんなときは蔵出し映像である。スーパーラグビーは10年前も20年前も魅せるラグビーだ。この時代に、すでにこんなプレーしていたのかと驚くことも多い。J SPORTSが、3月31日にから放送するのは「スーパーラグビー プレーオフ10年大放出!」。まずは、2010年から3年間のプレーオフ、準決勝、決勝を一気に見せる。

2010年シーズンは「スーパー14」の時代。ニュージーランド5、オーストラリア4、南アフリカ5の計14チームが参加して行われていた。2009年はブルズが優勝。ヘッドコーチは現在クボタスピアーズを率いるフラン・ルディケ。連覇を目指してレギュラーシーズンを10勝3敗の1位通過。準決勝で2008年の王者クルセイダーズと対戦する。この試合は必見だ。ブルズは、のちにサントリーサンゴリアス入りするSHフーリー・デュプレアが的確な判断とパスでチームを操る。俊足NO8ピエール・スピース(2015~近鉄ライナーズ)の突破力はすさまじい。SOは正確無比のプレースキックを誇るモルネ・ステイン。この時代、世界最高のLOだったヴィクター・マットフィールドがFWの軸だ。

対するクルセイダーズは、現東芝ブレイブルーパスのヘッドコーチ、トッド・ブラッカダーが率いていた。選手はFLリッチー・マコウ、NO8キアラン・リード(2019~トヨタ自動車ヴェルブリッツ)、SHアンドリュー・エリス(2015~神戸製鋼コベルコスティーラーズ)、SOダン・カーター(2018~神戸製鋼)とオールブラックスのスター選手が勢ぞろい。マコウ以外は現在、日本のトップリーグ所属だ。このメンバーが負けてしまうのだから、ブルズがいかに強かったか。ぜひ、確認してもらいたい。激しいコンタクト合戦は迫力満点だ。

もう一つの準決勝はストーマーズ対ワラターズ。ここではのちのトップリーガーがSO対決している。ピーター・グラント(神戸製鋼)とベーリック・バーンズ(パナソニックワイルドナイツ→リコーブラックラムズ)だ。そして、決勝戦は、ブルズ対ストーマーズという南アフリカ対決。デュプレア、スピースほか、金髪のCTBヴァイナンド・オリフィエ、SHとWTBを兼任するフランソワ・ホーハートが躍動する。

写真:LOジェームズ・ホーウィル(左)とSOクエイド・クーパー

2011の準決勝、レッズ対ブルーズは、レッズの天才SOクエイド・クーパーの個人技がさえわたる。SHウィル・ゲニアとのHBコンビは、2019年度には近鉄でプレーした。決勝戦は、レッズ対クルセイダーズ。必ず上位に食い込んでくるクルセイダーズの安定感が際立つが、試合前はLOブラッド・ソーン(2011~宗像サニックスブルース)が話題になった。ソーンは試合会場のサンコープ・スタジアムを本拠地とする13人制ラグビーリーグのブリスベン・ブロンコスでプレーしていたからだ。CTBはソニー・ビル・ウィリアムズ(SBW、2012~パナソニック)。SBWってクルセイダーズにいたの? と忘れている人がいるかもしれない。実はSBWはフランスのトゥーロンからニュージーランドに戻り、州代表でプレーしたのちスーパーラグビーデビュー。この一年だけクルセイダーズでプレーしてチーフスに移籍した。SBWも決勝では活躍するが、やはり主役はクエイド・クーパーだ。アフロヘアが印象的な長身NO8ラディケ・サモ(2013~近鉄)、WTBディグビー・イオアネ(2015~HondaHEAT、2017~パナソニック)もいる。レッズのキャプテンはLOジェームズ・ホーウィル。レッズのラグビーが面白い。


2012年は前年10位のチーフスが台頭する。躍進の鍵を握ったのは、クルセイダーズからやってきたSBW、ハリケーンズから移籍のSOアーロン・クルーデンだ。キャプテンは、のちに東芝入りするFLリーアム・メッサム。レギュラーシーズンを12勝4敗の2位通過し、準決勝でクルセイダーズとの死闘を制する。この試合の見どころは、ダン・カーターとクルーデンのオールブラックスSO対決。クルセイダーズのインサイドCTBは現クボタのライアン・クロッティだ。決勝戦の相手は、フランス代表SOフレデリック・ミシャラクがゲームリーダーのシャークス。チーフスの本拠地、ハミルトンのワイカト・スタジアムが超満員となる。試合はチーフスが攻撃力で上回る。トライ後、インゴール後ろの観客席に飛び込むSBW。交代出場のWTBレリア・マサンガ(2016~Honda)が、彼のニックネーム「フラッシュ(閃光)」のごとき独走トライを見せる。



この頃のほうが面白いと感じる人もいるだろう。日本でプレーすることになる選手たちの若い頃の初々しいプレーが、そう思わせるのかもしれない。いま、トップリーグにスーパーラグビー出身の選手が多数いるからこそ身近に感じることができるのだ。そんな幸せをかみしめつつ観戦したい。

文:村上晃一

村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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