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現在、新型コロナウィルスの世界的拡大の影響で、中断を余儀なくされているスーパーラグビー。
参入5年目、ラストシーズンのヒトコム サンウルブズの中で、次のワールドカップこそ、日本代表として出場するために「より高いレベルで」という強い思いを抱き、スーパーラグビーでのプレーを選択したのがFL(フランカー)布巻峻介(パナソニック ワイルドナイツ)だ。
布巻は東福岡高校の2年でFB(フルバック)松島幸太朗らとともに高校日本代表に選ばれ、花園も制した。日本代表の松島、SH(スクラムハーフ)流大、WTB(ウィング)福岡堅樹ら、「黄金世代」のトップを走っていたCTB(センター)だった。
早稲田大学入学後の3年時にはCTB(センター)からFLに転向し、パナソニックに入団。ジェイミージャパンとなった直後の2016年11月のジョージア代表戦で、日本代表初キャップを得た。
その後もトップリーグだけでなく、サンウルブズや日本代表で研鑽を続けて、2019年8月の網走合宿まで日本代表として帯同した。だが、31名のワールドカップスコッドには選ばれることはなかった。
それでもバックアップメンバーとなった布巻は、いつ日本代表に招集されてもいいように、トレーニングを続けていた。
昨年10月、ワールドカップの予選プールの最終戦のスコットランド代表戦では、J SPORTSのゲスト解説を務め、試合終了のホイッスルが鳴ると、感情の赴くままに、横浜国際総合競技場のピッチに降りて、スーツ姿のまま、選手たちと喜びを分かち合ったことは大きな話題を呼んだ。
ただ、父親がコカ・コーラウェスト(現コカ・コーラ)の選手だったこともあり、4歳で「かしいヤングラガーズ」からラグビーに打ち込んできた布巻にとって、桜のジャージーを着てワールドカップに出場することは大きな夢だった。だが、あと一歩のところで逃してしまった……。
2020年、トップリーグとスーパーラグビーの時期が被る中で、サンウルブズから布巻にオファーがあった。昨シーズン、パナソニックのキャプテンを務めた布巻は悩んだ末に、2017年、2018年に続いてサンウルブズでプレーすることを決める。
「トップリーグとの時期が重なったにもかかわらず、送り出してくれるパナソニックには本当に感謝しかありません。今回の挑戦は自分の中でも難しい決断になりましたが、今の自分にはスーパーラグビーへの挑戦での成長が必要と考え、このような決断にいたりました」。
パナソニックのロビー・ディーンズ監督も「他のチームに関係なく、パナソニックの方針として日本ラグビーをサポートしています。選手にとってもっとも大事なことは、自分が指導するチームで、何を目標としてベストを出すか、です。
布巻はワールドカップ直前で(日本代表から)落選し、アンラッキーでしたが、(サンウルブズで)再び、世界に挑戦する切符を得たことは彼にとってプラスになると思います」と布巻の背中を押した。
迎えた2月1日の開幕戦、サンウルブズは福岡・レベルファイブスタジアム(現・ベスト電器スタジアム)に、同じオーストラリアカンファレンスのレベルズを迎えた。
「今シーズンのサンウルブズは大久保直弥ヘッドコーチの色が出ていて、ワクワク感を持たせてくれる。前回のサンウルブズは日本代表との兼ね合いもあり、僕自身、違うプレッシャーを感じていたし、行ったり来たりでコミットしにくい部分もあった。今シーズンに関しては、(サンウルブズに)集中できています」。
小さい頃から慣れ親しんだ地元のスタジアムで7番をつけて先発した。「家族も友達も来てくれていたし、その中でプレーできたのは幸せでした。声援は力になりました」という布巻は、得意のジャッカルを成功させるなど、36-27の勝利に貢献。1月7日に、双子の父親となった布巻にとっては、二重の喜びにとなった。
正直、今シーズンのサンウルブズは日本代表や、各国代表選手の揃うトップリーグよりもラグビーファンの注目度は低かった。1月6日の合宿スタート時、BK(バックス)は5人しか集まらず、合計21名という少なさだった。
それでも布巻は「あまり注目されない、選手も集まらない中、僕らは見とけよって感じでした」と正直に吐露する。
また、「スーパーラグビーのレベルの高さ、サンウルブズの価値をすべての選手、ファンの方々にも知ってほしい」とも話していた。そんな鬱憤を見事に晴らす開幕戦の勝利だった。
サンウルブズを選んだ選択は間違っていなかったのでは?と聞くと、布巻は「シーズンが終わった時に、心から言いたいですね!」と語気を強めた。
2019年ワールドカップの日本代表の躍進を下支えしたのは、個々の選手のスーパーラグビーでの経験だったことは明白である。布巻はまだ27歳。サンウルブズの経験が再びワールドカップを目指すオープンサイドFLの成長を加速させる。
文:斉藤健仁
スーパーラグビー2020 第1節
【ハイライト】サンウルブズ vs. レベルズ
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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