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1月12日(日)、ついにワールドカップイヤーの2019-20シーズンのトップリーグが開幕した。
全国各地で8試合が行われたが、東京・秩父宮ラグビー場では、昨シーズン準優勝のサントリーサンゴリアスと同11位の東芝ブレイブルーパスが激突。
両者は練習場がともに東京・府中市にあるため「府中ダービー」と呼ばれるトップリーグ伝統の一戦だ。ワールドカップ直後の試合ということで2万1564人とほぼ満員のファンが訪れた。
日本代表としてベスト8に貢献した東芝のFL(フランカー)リーチ マイケルがボールを持つと「リーチ」というコールが響き、サントリーのSH(スクラムハーフ)流大、FB(フルバック)松島幸太朗にも大きな声援が送られていた。
写真:出色の出来だった東芝FLラベマイ
試合は開幕戦、そして「ダービー」らしく、序盤から熱のこもった展開となる。
元オールブラックスのトッド・ブラッグアダーHC(ヘッドコーチ)が新たに指揮官に就任した東芝は従来のFW(フォワード)のフィジカルを前面に出すスタイルに、しっかりとスペースにパスでボールを動かす戦い方で主導権を握る。
前半8分、東芝は相手の反則からゴール前に迫るとモールを形成。モールではトライは奪えなかったがFWにこだわり、最後は拓殖大学出身の新人FL(フランカー)シオネ・ラベマイが右中間にねじ込みトライ。主将のSH(スクラムハーフ)小川高廣がゴールを決めて7-0と先制する。
写真:今週から練習に本格的に合流した東芝のリーチ
だが、ワールドカップでジョージア代表を率いていたミルトン・ヘイグ氏が新たに指揮官に就任したサントリーも負けていない。相手のミスを誘い、(フルバック)松島が足にかけて敵陣深くに攻め込み、相手反則を誘う。
ラインアウトからボールを動かし、20分、最後は左隅にFL西川征克が飛び込んでトライ、SO(スタンドオフ)マット・ギタウのゴールも決まり、7-7の同点に追いつく。
その後はサントリーが徐々に相手の守備に対応しはじめ、FB松島が縦に切れ込み、新加入のオーストラリア代表CTB(センター)サム・ケレビのキックもあり敵陣でのチャンスを迎える。
しかし前半29分、ゴールラインまで5mというところで、ジャッカルに来た選手をサントリーのFL西川がノーバインドで頭部にチャージしたという判定で「レッドカード」となり一発退場。残り時間をサントリーは数的不利で戦うことになった。
写真:サントリーのCTBケレビ
これ以降は攻める東芝、守るサントリーという構図になり、前半終了間際、東芝はゴール前まで攻め込み、連続攻撃からSH小川主将が相手の隙をついて近場でトライを挙げて12-7とし前半を折り返した。
後半、先に得点を奪ったのは1人少ないサントリーだった。7分、ボールを大きく動かし、CTBケレヴィの突破からチャンスを作り、最後はFB松島が左外に股の下を通す約20mのパスを通し、最後は新戦力のWTB WTBテビタ・リーが押さえて12-12の同点に追いつく。
しかし、1人多くFW戦でも優勢だった東芝は、20分、ゴール前のスクラムを起点に左に展開しWTB松岡久善がトライ、SH小川のゴールも決まって19-12と再びリード。
その後もサントリーが激しいタックルを繰り返して守備で粘るものの、30分、FWにこだわった東芝、最後はポスト下にPR(プロップ)三上正貴が押さえて26-12とリードを14点差とした。
サントリーも36分にCTBケレヴィがラインブレイクし、トライを挙げて26-19としたが、最後も数的有利な東芝が試合をコントロール。そのまま26-19でノーサイド。東芝がサントリーに勝利したのは4シーズンぶりのことだった。
昨シーズン11位の東芝が準優勝だったサントリーを下して勝点4を得て、サントリーも負けたが、7点差以内の敗戦のため勝点1を獲得。MOM(マン・オブ・ザ・マッチ)には東芝の主将SH小川が選出された。
写真:東芝のブラックアダーHCと共同主将のSH小川
初のトップリーグの試合でチームを勝利に導いた東芝のブラックアダーHCは「タカ(小川主将)と選手たちを誇りに思います。プレシーズンですごくハードワークをしてきました。それが今日見せることができた。特に後半、落ち着いてプレーできたことが良かった」と初勝利も先を見据えて冷静に話した。
また、「なぜ、タカがキャプテンなのかということがプレーを見てわかったと思います。キャプテンは常にベストなパフォーマンスを見せることでチームを勝利へ導きます」と称えた。
写真:東芝の小川主将。MOMに選ばれた
小川主将も「(昨年の)カップ戦で自分たちの自信を取り戻したというのがまずありました。それからトットさん(ブラックアダーHC)が来て、ラグビーとして、より詳細なプレーをするようになって、そこをみんなが一緒に理解して、勉強してというのをやってきました」。
「みんなでつくりあげてきたことがよかった。今日は今シーズンここまで準備してきたこと、サントリー戦に向けて今週準備してきたことをノンメンバー含め、それを信じて23人が実行できた。その結果、勝利をつかめた」と胸を張った。
日本代表のキャプテンを務めたFLリーチは「(勝てた理由は)いろいろありますが、ボールをスペースに運ぶことができたのが一番。HCの影響大きいです」。
「アタックコーチのジョー・マドック、森田佳寿のコンビが良くて、FWには(マット・)トッドと湯原(祐希)さんがいる。スクラムが強かったから今日、勝てた」。
「(東芝復活に向けて)先々週のトヨタ戦も少し(兆しが)見えて、今日も久々にサントリーに勝って勢いが作れる。東芝の中ですごく盛り上がっている。会社もラグビー部もかなりみんなポジディブなコメントばっかり。東芝、これからもっともっと強くなる」と満足げに話した。
写真:サントリーのヘイグHCと共同主将のSH流
一方、初采配で破れてしまったサントリーのヘイグHCは「望んでいた試合ではなかった。まだ14試合ある、自分たちはこの試合を過去に置いて、次に何をしないといけないかを(試合後の)ロッカーで話した」。
「65分間、14人でディフェンスし最終的に(勝点を)1ポイント得られたことは良かった。得にFWのタイトファイブ(前5人)が頑張った」。
「来週はNTTコミュニケーションズ戦です。ショートウィーク(準備の日数が少ない週)なので、レビューして、来週の試合の準備をしたい」と悔しそうな表情を見せるも先を見据えた。
また、共同キャプテンの1人SH流は悔しい表情を見せながらも「こんなに満員のスタジアムで、府中ダービーができたことすごく誇りに思いますし、関係者の皆さんに感謝します」。
「14人で大半を戦って1ポイントを獲得したことはすごく誇れる。この1点が取れたのはカジ(CTB梶村祐介)が相手のゴールキックにチャージにいったこと」。
「それがなかったら、この1点は獲得できなかった。そういうことができる選手がいる、チームだということを再認識し、サントリーというチームをすごく誇れるチームだと思いました」。
「ラグビーの内容はいろいろ改善すべきところがあります。もっとアタックする時間を増やさないと、サントリーの良さが出ないと思います。次に何ができるかが大事で今日の負けはしっかり受け止めて、次の試合でいいラグビーが見せられるようにいい準備をしたい」と前を向いた。
写真:サントリーFB松島
敗れたものの日本代表らいしいプレーを随所で見せたFB松島は「14人なってリズム崩してしまったが、14人で強いチームに対して7点差で終われたのでいい収穫だった」。
「(股の下を通すパスに関しては)とっさの判断で狙ったんですが、意外と上手くいった。日頃から練習しているわけではないです。負けている状態で、僕に来た選手がラストだったので、スローフォワードにならないように、とにかくつなごうという意識でやりました」と試合を振り返った。
ダービーとなった開幕戦に勝利し勢いに乗る東芝は1月18日(土)の第2節、大阪・東花園ラグビー場で昇格組のひとつ、NTTドコモレッドハリケーンズと対戦する。
開幕戦で敗北し、なんとして2節目で勝利したいサントリーは同日、秩父宮ラグビー場でNTTコミュニケーションズと相まみえる。
文/写真:斉藤健仁
ジャパンラグビー トップリーグ2020
東芝ブレイブルーパス vs. サントリーサンゴリアス
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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