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写真:天理・小松監督と健闘をたたえ合う大西監督
関西学生ラグビーAリーグは11月30日最終節が行われた。王者・天理大に挑んだ京都産業大学は12-50で敗北し、関西学生リーグ4位が決定した。
前節、京産大が敗れたために天理大の4連覇が決定。京産大も既に大学選手権出場が決まっていたが、「誰も俺らが勝つと思ってないから、勝って全員を見返してやろうと2週間練習してきました」(寺脇駿・4)。と闘志を燃やして準備してきた。
◆天理大学に敗れ関西リーグ4位。全国への切符は確保
最終節ということもあって、西京極陸上競技場には5200人以上の観客が訪れた。通常のリーグ戦よりも2倍程多い観客。メインスタンドは満員、バックスタンドにも多くの観客が詰めかけていた。
午後2:05、京産大ボールでキックオフ。いきなりゴール前に攻め込むと、マイボールスクラムを獲得。スクラムでプレッシャーをかけ、最後は田中利輝(東海大仰星・3)が飛び込んだ。
この日キッカーを務めた栢本光(天理・4)が、しっかりとゴールを成功させて7-0。王者相手に前半4分での先制トライ。会場は番狂わせを予感し盛り上がる。
しかし、それも長くは続かなかった。先制から僅か2分後、天理大のLO(ロック)モアラにビッグゲインされ、そのままボールを繋がれトライを与えてしまう。
その後も主に外国人留学生の突進を止めることが出来ず、連続してトライを奪われてしまった。それでも前半は7-17と、10点差で折り返す。
後半で巻き返しをはかるも、5分、20分にトライを取られてしまう。赤紺軍団もなんとか食らいつき、32分に宮崎達也(伏見工・4)がトライを返すも、そこから連続3トライを許して試合終了。
京産大の強みであるスクラムでは何度もコラプシングを奪うなど優勢だったが、ラインアウトモールやアタックでミスが多く、なかなかチャンスを作れなかった。残り10分弱までは19点差も、そこからディフェンスが崩れた。
写真:ダブルタックルにいく選手たち
「ディフェンスのシステムは問題なかった。個々のタックルで負けてしまった」(中村悠人・4)。
大西監督は、「最後のリーグ戦だった。完膚なきまでにやられましたね。天理大はバランスが取れたチームで本当に強かった。ファイトが違いました」。
「今日の試合では、セットプレーで勝つ。BK(バックス)が前に出る。ディフェンスは前で止める。という3つを目標にしていました。3つ目のところがだめで、やられてしまいましたね」。
天理大の小松監督のインタビューを聞き、涙を流した後の取材。試合後いつもは積極的に報道陣の質問に答える大西監督も、沈黙が多かった。
取材が終わると、しばらく呆然と座り込む。普段は涙を見せない伊藤鐘平キャプテンも、試合後は悔し泣き。最終学年のフェインガ・ファカイは試合後の気持ちを「悲しい」と表現した。
大西監督のラストイヤーということで、悲願の大学日本一達成に沢山の期待が集まった今季。ここで終わるわけにはいかない。座りつくした監督に、宮崎ら最終学年の選手たちが次々と握手を求める。
監督は何度もリベンジという言葉を口にし、その度に表情が蘇っていくように見えた。「這いつくばってでも勝ち進んで、なんとしても天理ともう1回試合をします」(大西監督)。
写真:「落ち込んでいる時間はない」と前を向く大西監督
◆約半世紀に及ぶ大西監督のラストシーズン
京産大ラグビー部の歴史は1973年、大西健監督が就任したところから動き出した。当時、関西リーグ3部と弱小だったラグビー部を日本一厳しい練習で鍛え、関西の強豪に育て上げた。
47年間、京産大ラグビー部の監督を務め、元日本代表の田倉政憲、大畑大介、伊藤鐘史、田中史朗ら多数の名選手を指導した。
そんな大西監督は今年で勇退するため今季がラストシーズン。過去何度もあと一歩まで行きながら、未だに達成できていない大学日本一を成し遂げるために、今年も選手たちと過酷な練習を行ってきた。
今年キャプテンを務める伊藤鐘平(札幌山の手・4)は、元日本代表の兄の応援で幼少期から大西監督と関わってきた。「監督がいたから京産にきた。自分も最後だし大西監督も最後。絶対に日本一になりたいです」(伊藤)。
しかし、多くの期待を背負って出発した今シーズンは、試練の連続となった。6月の練習試合、日大戦で伊藤キャプテンが足首を負傷。キャプテン不在で迎えた公式戦では、昨年圧勝した関西学院大学に敗北。目標としていた関西優勝へ、厳しい戦いを強いられる。
追い込まれたチームは、宮崎達也(伏見工・4)らを中心に1週間でチームを立て直し、大阪体育大学戦に圧勝。
好調の近畿大にも勝利し、ラグビーワールドカップ中断期間に入った。中断期間には練習試合で慶應義塾大学に勝利。中断明けの後半戦では、摂南大学に逆転勝ち。ライバル同志社大学にも競り勝った。
崖っぷちからの4連勝で関西王者の望みを残していたが、立命館大学にダブルスコアで敗戦。天理大学にも惨敗し、最終的に全国出場ギリギリの関西4位でリーグ戦を終えた。
「今季は本当にいい勉強を沢山させてもらった。関西王者にはなれなかったが、大学チャンピオンへの道は残っていますから」(大西監督)。
そんな京産大は12月15日(日)午後2:00、全国大学選手権の初戦で関東大学リーグ戦2位の日本大学と、熊谷ラグビー場で対戦する。
日本大は従来、高校時代無名だった選手たちを徹底的に鍛え上げ、ヘラクレス軍団と恐れられてきた存在だった。
しかし、近年はグラウンドや寮などの環境が飛躍的に充実し、全国各地から有名選手や留学生が入学するようになった。
強化が実を結び、実に6大会ぶりの出場。流通経済大学、大東文化大学、法政大学など強豪を次々と撃破してきた。強みは何と言っても力強いFW(フォワード)だ。NO8(ナンバーエイト)のハラシリ・シオネの突進は脅威。LO(ロック)のテビタ・オトも力強いプレーが持ち味だ。
スクラムにも自信を持っている。「日本大のスクラムは強い。相手もうちと同じで、スクラムにプライドを持っていると思います」(宮崎)
写真:チームを引っ張る伊藤キャプテン
大西監督は「日本大は天理大と少し似ているチームだと思います。留学生をはじめとするFWが強い。でも、BKは天理の方が上」と分析する。
京産大は2週間で今シーズン一貫して指摘されてきたBKのディフェンスをいかに修正できるかの勝負となるだろう。昨年は3回戦で慶應大に敗戦し、涙を飲んだ。今年はまず、昨年の成績を越えたいところだ。
日本大に勝利すれば、次戦は優勝候補、早稲田大学と激突する。その先の準決勝では天理大と当たる。もちろん負ければ終わりのトーナメントだ。
「這いつくばってでも、もう一度天理と試合をする」。監督の言葉を実現した先に、悲願の大学日本一が見えてくる。
文/写真:岩田悠吾(京産大アスレチック)
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