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25年ぶりの全勝対決となった早明戦は、12月1日、秩父宮ラグビー場(東京都港区)に立錐の余地なしの2万2987人の観衆を集めて行われた。
午後2時、早大ボールのキックオフ。このボールを取った明大NO8坂和樹がまっすぐ突進して激しくコンタクトし、伝統の定期戦への意気込みを全身で表現する。序盤は早大がSH齋藤直人、SO岸岡智樹の正確なハイパントなどで攻め込み、前半10分までは明大陣での攻防が続いた。流れが変わったのは、前半11分のスクラムから。3回の組み直しの末、早大に反則があり、明大にフリーキックが与えられる。ここで明大がスクラムを選択すると今度は早大がスクラムを崩す原因になったとするコラプシングのペナルティを犯してしまう。このPKから明大はタッチキックで前進し、早大陣でのラインアウトを得て連続攻撃。前半17分、FW陣が縦突進を繰り返し、最後はSO飯沼蓮からのフラットなパスに走り込んだLO箸本龍雅が先制トライをあげる。
前半21分、早大はFB河瀬諒介が右タッチライン際を駆けあがってチャンスを作り、明大ゴール前5mでの右中間スクラムを得る。ここで、SO岸岡が歩くように右のショートサイドに移動し、反応が遅れた明大ディフェンスを易々と破ってトライを返す。スコアは、7-7の同点。その後は互いに譲らず、明大SO山沢京平がPGを追加し、10-7で前半を折り返した。
後半は明大FWが激しく前に出る。2分、SO飯沼のハイパントで早大陣深く入ると、LO箸本がタックラーをかわしながら突進。ゴールラインまで10mほどの地点から、ボールを右に動かすと、箸本、山沢、HO武井日向キャプテンとパスがわたり、武井がタックルを弾き飛ばしてトライ。山沢のゴールも決まって、17-7とリードする。連続攻撃のなかで、FWとBKが一体となって攻撃ラインを整え、おとりのランナーが走り込むなど、各選手が的確な判断と、正確な技術を使いながら役割を果たしたトライだった。8分には、スクラムで早大のペナルティを誘い、タッチキックからのラインアウト、そしてドライビングモールという必勝パターンでHO武井が連続トライ。24-7と突き放した。
その後は明大がモールのターンオーバーを勝ち取り、スクラムでも圧力をかけ、完全に主導権を握った。20分にはPR安昌豪が勝敗を決定づけるトライ。終了間際にもWTB山村和也が自らインゴールに蹴り込んだボールを押さえてダメを押した。一人一人のコンタクトの局面で明大が前に出るシーンが多く、パワー、スキルともに明大が上回っているように見えた。セットプレーもしかり。スクラムでも圧力をかけ、早大がチャンスのラインアウトでは、明大のLO片倉康瑛が早大ボールをスチール。得点機をつぶした。早大はなかなかディフェンスを破ることができず、課題が多い。最終スコアは、36-7。7戦全勝で対抗戦を終えた明大は4年ぶり17回目の「対抗戦優勝」を飾った。マン・オブ・ザ・マッチは先制トライをあげ、再三にわたって早大のディフェンスを切り裂いたLO箸本龍雅。
「我慢強くアタックとディフェンスを続けた結果です」と田中澄憲監督。キャプテンの武井も自身のトライを「一人一人が役割を全うしてくれたトライ」だと強調した。見据えるのは全国大学選手権の連覇だ。「きょうの試合は通過点。今季のチームで日本一になることに意味があるので、『真価(チームスローガン)』を体現していきたいです」と武井は前を向いた。
「優勝」と書いたが、対抗戦グループはそれぞれ伝統ある定期戦を大切に考え、「優勝」は決めていない。だから表彰もない。全日程を終了し、順位は、明大、早大、帝京大、筑波大となり、この4チームが大学選手権に出場する。明大と早大が登場するのはベスト8が出そろう準々決勝(12月21日)から。明大は東京・秩父宮ラグビー場で関西学院大学、九州共立大学、朝日大学の中で勝ち上がったチームと対戦。早大は大阪の花園ラグビー場で、日大、京産大の勝者と対戦する。決勝戦は、2020年1月11日(土曜)、新・国立競技場での開催だ。果たして、両大学の再戦は実現するのか。阻止するチームは現れるのだろうか。
文:村上 晃一
【ハイライト】明治大学 vs. 早稲田大学 ラグビー関東大学対抗戦2019
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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