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決勝トーナメントに入ったラグビーワールドカップ、10月20日(日)は、大分スポーツ公園総合競技場での今大会ラストゲームとなった。
今年のシックスネーションズ優勝の「レッドドラゴン」、ウェールズと、今大会に入って調子を上げている「レ・ブル」、フランスの欧州勢同士が準々決勝で激突した。
フランスが勝利した2011年大会準決勝以来のワールドカップでの対戦は、どちらが勝ってもおかしくない互角の戦いが予想されていた。
準優勝3回で「ワールドカップに強い」と言われるフランスがまず仕掛ける。
前半5分、ラインアウトからモールでゴールライン際まで持ち込むと、その後はFW(フォワード)で押し込み、最後はLO(ロック)セバスチアン・バアアマイナのトライで5-0と先制に成功する。
さらに勢いに乗ったフランスは、8分、自陣で短いパスをつないで、CTB(センター)ヴィリミ・ヴァカタワが相手のディフェンスを突破。
ラストパスを受け取ったFL(フランカー)シャルル・オリボンがインゴール中央へと持ち込んだ。SO(スタンドオフ)ロマン・ヌタマックのコンバージョンも決まり、12-0とリードを広げた。
しかしこの数年、常に世界のトップ5のチームとして実力を発揮しているウェールズに焦りは見られなかった。
終始ディフェンスでプレッシャーをかけ、12分にラックからこぼれ球を拾ったFLアーロン・ワインライトがそのまま走りきってトライ。
SOダン・ビガーのゴールも決まり7点を返す。20分にはビガーのPG(ペナルティゴール)で3点を追加し10-12と追い上げる。
だが、ウェールズは28分過ぎに途中出場で入ったばかりのFLロス・モリアーティがシンビン(10分間の一時的退室)となり、前半残り約10分間を14人で戦わなければならなくなった。
するとフランスはこの好機を逃さず、パスで展開し31分にCTBヴィリミ・ヴァカタワが中央にトライ、SOヌタマックのゴールも決まり、19-10と再びリードを広げて前半を折り返した。
後半に入っても、試合の流れはフランスにあった。しかし9分、その流れはいきなりウェールズに向きを変える。
フランスはモールでのラフプレーで、FLバアアマイナが危険なプレーをして一発退場のレッドカード。今度はフランスが、それも残り30分以上を1人少ない状況で戦い続けなければならなくなった。
数的有利となったウェールズは、14分にSOビガーのPGで13-19とし、1トライ1ゴールで逆転可能な点差にする。
ただ、その後はフランスが粘りのディフェンスを見せて、FB(フルバック)マクシム・メダールのキックで陣地を取りながら相手の攻撃を食い止める。
だが、ウェールズはラインアウトからドライビングモールでゴールラインに迫る。
ノックオンでフランスボールのスクラムとなるが、34分、そのスクラムで、SHトモス・ウィリアムズが相手ボールをターンオーバーし、FLロス・モリアーティがトライを決めると、SOビガーのコンバージョンも決まり、遂に20-19と逆転に成功する。
最後はウェールズがモールで時間を使って、SOビガーが外に蹴り出しノーサイド。予想通り接戦の展開となったが、ウェールズがフランスを1点差でかわして、2大会ぶりの3度目のベスト4進出を決めた。
惜しくも、逆転負けを喫したフランスのジャック・ブリュネルHC(ヘッドコーチ)は「準々決勝で試合の半分を14人で戦うのは難しい。それでも勇敢に戦った選手たちのクォリティは評価されるべきだ」と話した。
続いて、2023年の自国開催のワールドカップに向けて「必要なのは、これからの4年間に結果を出して自信を持てるチームを育て上げることだと感じている。今回はそれが欠けていた」。
「しかし、未来の世代にとっては、我々は今大会では一番若いチームの1つであり、可能性をキープして学んでいけば成熟したチームになるだろう。このチームには明るい未来がある」と自身最後のワールドカップを締めくくった。
キャプテンのHO(フッカー)ギエム・ギラドも、「残酷という言葉が適切。試合に勝って勝負に負けたという残酷なシナリオだ。もちろん、これがラグビーというものだ」と悔しさをにじませた。
また「国を代表してプレーするという喜びは何ものにも変えがたい。自分は時として若い選手たちに厳しかったかもしれないが、彼らにとって良いチームメイトであったら幸いだ」。
「彼らにはさらに上のレベルに行く力がある。明日に向けて進んでいってほしい。」と若い選手が多いこのチームにエールを送った。
フランスは次の2023年大会ではホスト国となる。ブリュネルHCは退任し、アシスタントコーチで、元フランスSH(スクラムハーフ)のファビアン・ガルティエの就任が発表された。
今大会の経験を加えて、母国でウェブ・エリスカップを掲げるために、明日からまた新たな4年間が始まる。
一方、接戦を制したウェールズのウォーレン・ガットランドHCは「今夜はより良いプレーをしたチームが負けた。明らかにレッドカードが大きかった」。
「だが、私たちの選手は最後まで絶対あきらめずに戦った。厳しいフィジカル戦だった。フランスは立ち上がりがよかった。それでも逆転の可能性を大きくして、ハーフタイムに入れた」。
「とにかくあのレッドカードで試合の流れが変わった」と薄氷を履む思いの激戦を振り返り、「まずは回復に努める。ケガ人はあまりいない。今日は静かな夜を過ごすつもりだ」と準決勝に向けて切り替えた。
キャプテンのLOアラン ウィン・ジョーンズは、「フィジー戦と同じようにスローな入りになったのが残念です。カードが相手にあったにせよ、セットピースは上回れたと思いますし、後半は我々の持ち味を出せたかなと思います」。
「たくさんのウェールズファン、そしてレッドドラゴンズのジャージを着た日本のファンに見守られて勇気づけられました」と話した。
ウェールズは10月27日(日)に、横浜国際総合競技場で、日本を下しベスト4に入った「スプリングボクス」こと、南アフリカと決勝をかけて相まみえる。
文:斉藤健仁
【ハイライト動画】ウェールズvs.フランス ラグビーワールドカップ
(c) Rugby World Cup Limited 2019
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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