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2019年10月13日、日本代表が横浜に刻んだ歴史的瞬間。ラグビーワールドカップ、日本 vs. スコットランド レポート
ラグビーレポート by 斉藤 健仁ラグビー日本代表がついに新しい歴史の扉を開いた。
10月13日(日)、神奈川・横浜国際総合競技場でラグビーワールドカップのプールステージ最後の試合となる、プールAの日本(世界ランキング8位)vs.スコットランド(同9位)の一戦が行われた。
日本は3連勝で勝ち点14、スコットランドはアイルランドに敗れたものの、その後は2連勝でボーナスポイントも取って勝ち点10。
前日にアイルランドがサモアに勝利し、勝ち点を16として決勝トーナメント進出を決めため、ベスト8の残り1枠を賭けての激突となった。
「今日は私たちにとって単なるゲーム以上のものだった」とキャプテンのFL(フランカー)リーチ マイケルが試合後に語ったように、前日に日本列島に襲いかかった台風19号の影響で、試合開催は当日の朝に決まった。
また、この台風で多くの方が被害に遭われたこともあり、「自分たちがしっかり勝って勝利を届けることが最大にできること」(松島幸太朗)と、チーム全員が強い気持ちで臨んだ。
日本ラグビーの歴史的瞬間を見届けようと、6万7666人が詰めかけた横浜国際総合競技場で、台風被害の犠牲者に捧げる黙祷、そして国歌斉唱の後、試合は日本のSO(スタンドオフ)田村優のキックオフで開始された。
日本は最初から積極的に仕掛けていくが、先に点を取ったのはスコットランドだった。
前半6分、ペナルティ絡みで敵陣深い位置へ攻め込んだスコットランドはSOフィン・ラッセルのキックパスから崩し、そのラッセルのトライで先制すると、SH(スクラムハーフ)グレイグ・レイドロウがキックを決め、7-0とする。
対する日本はボールを保持して積極的に展開し17分、左サイドに展開すると、WTB(ウィング)福岡堅樹のオフロードパスを受け取ったWTB松島がそのままインゴールまで持ち込みトライ。SO田村のキックも決まり、7-7と試合を振り出しに戻す。
さらにホームの大声援を背に勢いを増す日本は25分、敵陣深い位置から攻撃。
最後はHO(フッカー)堀江翔太、LO(ロック)ジェームス・ムーア、FB(フルバック)ウィリアム・トゥポウとつないで、最後はPR(プロップ)稲垣啓太が中央にトライを挙げて逆転。田村のコンバージョンも決まって14-7とする。
その後も日本はボール支配率を高めながら優勢に試合を運び、39分には左サイドタッチライン際へCTB(センター)ラファエレ ティモシーの繰り出したキックパスに、走り込んだ福岡が快速を飛ばしてトライを決め、21-7とリードして前半を折り返した。
勢いの止まらない日本は後半開始間もない2分、福岡が相手ボールを奪い、そのまま50m独走しトライを決め、ボーナスポイントを確定させる4トライ目を得て28-7とした。
しかし、過去8大会で7回決勝トーナメントに進出しているスコットランドもベスト8に向けて意地を見せる。
クイックスローを起点に、テンポの早い攻撃から敵陣深い位置でのピック・アンド・ゴーで押し込み、最後は9分にPRのWP・ネルのトライで得点を挙げると、14分にもクイックスローからパスを繋いでトライを奪い、28-21と盛り返す。
それでも日本は動じずにボールを保持しながら攻めつつ、ディフェンスで身体を張り、最後は途中出場のFB(フルバック)山中亮平がタッチに蹴り出しノーサイド。
日本は予選プール戦4試合全勝で堂々の1位で悲願の準々決勝進出を果たした。一方、スコットランドは、2011年大会以来となる2度目の予選プール敗退となった。
プレイヤー・オブ・ザ・マッチは2トライ、1アシストのWTB福岡が選出された。「本当にこの時のためにすべての時間を犠牲にしてこの勝利のために頑張ってきたので、本当に最高です」。
「因縁の相手に最後、しっかりと勝ち切ってベスト8に行くというのが、自分たちの歴史を作るという中での最高の目標だったので、それが達成できて最高です」(福岡)。
スコットランドのグレガー・タウンゼントHC(ヘッドコーチ)は、「前半でリードを与え過ぎてしまった。日本が素晴らしかったと思う」。
「自分たちのペースで進めていた。最初は調子が良くいい攻撃ができていたが、ハーフタイムには押されていた。最後の15分はいいプレーができたが勝てなかった」と相手を褒めつつ、完敗を認めた。
ゲームキャプテンを務めたSHレイドロウは、「日本はボールを常に回してキープして、日本がしたいようにプレーしていました」。
「前半も日本に28点を与えてしまったらなかなか難しい。日本相手なのでクイックなゲームになると思っていました。だからボールをキープしようとしました。
「私たちは前半良くなかったので、後半少しは盛り返せたかとは思います。しかし、常に日本を追う展開は厳しかった。私たちはほとんどボールを手に入れることができなかった」と涙を見せた。
歴史的快挙を果たした日本のジェイミー・ジョセフHCは「選手全員は身体を張っていいプレーをした。スコットランドに匹敵するゲームをした。経験値もスコットランドに劣る中で最高のプレーをした」と選手たちを讃えた。
また、指揮官は続いて「まぐれではない。いろいろな人たちが懸命に努力した結果だ。4年間一緒にやってきたトニー・ブラウンコーチは特別だ。彼のおかげで選手たちも自信を持って試合に臨むことができた」。
「スコット・ハンセンや長谷川慎コーチもよくやってくれた」とコーチ陣に感謝を述べつつ、「壁を乗り越えるには何が必要かを理解してきている。信念は持てば持つほど強くなる」と締めくくった。
キャプテンのFLリーチも「我慢と最後まで走って立ち上がってタックル行ったのが勝因だと思う。今日23名のピッチ立っていた選手だけじゃなくてワンチームでよくできたと思う」。
「今日は喜んでいい。ただ1回ガス抜きして、また1発目の練習から切り替えて、ガス満タンで準備しないといけない」と準々決勝をも見据えた。
初のベスト8に進出した日本が世界ランキングも過去最高の7位まで上昇した。
準々決勝に進出した日本は10月20日(日)、東京スタジアムで「ブライトンの奇跡」で勝利し、そして9月6日に熊谷で敗戦した南アフリカと、再び相まみえる。
文:斉藤健仁
【ハイライト動画】日本vs.スコットランド ラグビーワールドカップ
(c) Rugby World Cup Limited 2019
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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