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ナミビア、オールブラックスに大敗も未来につながる大きな経験。ラグビーワールドカップ2019 ニュージーランド vs. ナミビア
ラグビーレポート by 斉藤 健仁熱戦が続くラグビーワールドカップもプール戦終盤を迎えて、ベスト8争いも佳境に入ってきた。10月6日(日)は、東京スタジアムでプールBのニュージーランド代表vs.ナミビア代表の一戦が行われた。
「オールブラックス」こと、ニュージーランドは初戦の大一番・南アフリカ戦を23-13で勝利し、続く2戦目ではカナダ代表を63ー0と完封勝ちで圧倒した。
一方のナミビアは、初戦は善戦するもイタリア代表に22-47、南アフリカ代表には3-57と大敗し、2連敗を喫した。
カナダ戦から中3日で戦うオールブラックスは、12人の先発を入れ替えた。LO(ロック)にはケガで休んでいたブロディー・リタリックが復帰し今大会初出場となり、ゲームキャプテンを務めるLOサム・ホワイトロックとコンビを組む。
また、スプリングボクス戦でも先発したWTB(ウィング)ジョージ・ブリッジ、セヴ・リースが入り、SH(スクラムハーフ)アーロン・スミス、FB(フルバック)にベテランのベン・スミス、リザーブにはWTBリーコ・イオアネなど実力者が並ぶラインアップだった。
また、SO(スタンドオフ)にはカナダ戦でWTBとして出場したバレット家の末弟・万能BK(バックス)のジョーディー・バレットが務め、注目を集めた。
一方のナミビアは南アフリカ戦から9人の選手を替えた。キャプテンのCTB(センター)ヨハン・デイゼル初先発。また、LOチウイ・ウアニヴィ、WTBのJC・グレイリン、FBのヨハン・トロンプが3試合連続先発し、ベテランのSHユージン・ヤンキースはリザーブに入った。
2015年大会では、現在キャプテンを務めるCTBデイゼルが、オールブラックスからトライを奪っている。
王者オールブラックスにナミビアがどこまで戦うかが注目された一戦は、直前まで小雨が降っていたが、試合開始前には晴れ間が見えた。
4万8354人の大観衆が見守る中、両チームの国歌斉唱、オールブラックスのハカ「カ・マテ」に続いて、試合は午後1:45にキックオフされた。
立ち上がり、ややコンビネーションが安定しないオールブラックスに対して、「ボールをキープすることを心がけていた」(CTBヘイゼル)と言うように、ナミビアは積極的にボールを乗ってアタックする。
ニュージーランドはラックで反則してしまい、ナミビアはショットを選択。2分、イタリア戦でもトライを決めているSHダミアン・スティーヴンズが22mの左からPG(ペナルティゴール)を決めて、ナミビアが0ー3と先制する。
しかし、5分、今度はナミビアがペナルティで、ニュージーランドは敵陣5m左側でのラインアウトからワイドに展開し、SOジョーディー・バレットのキックパスを右隅に張っていたWTBセヴ・リースがキャッチして走り込んでトライ。オールブラックスが5-3とすぐに逆転に成功する。
その後、勢いづいたニュージーランドは左右にパスを展開し、ナミビアディフェンスを翻弄しながらフェーズを重ねるが、フィニッシュすることができなかった。
逆にペナルティからナミビアは大きくエリアを戻し、LOのPJ・ファンリルのブレイクからキャプテンのCTBデイゼルに渡り、あと一歩でトライというところまで行くがトライとはならなかった。
オールブラックスも決められないまま、しばらく得点の入らない時間が続くが、ようやく21分、NO8(ナンバーエイト)アーディー・サヴェアからCTBアントン・レイナート ブラウンにつないで、30mを走り切ってトライ。10-3とする。
だが、それでも波に乗り切れないニュージーランドは、反則が多く、25分、29分にナミビアのSHスティーブンスにPGを決められ、10-9と1点差にまで迫られてしまう。
さらに、PR(プロップ)ネポ・ラウララが、JC・グレイリンへの頭へのタックルでイエローカードとなり、10分間の退場。このため、予定より早く、30分にLOリタリックが退き、PRアンガス・タアヴァオが入る。
35分、ゲームに入ったばかりのPRタアヴァオが、ラインアウトから継続したボールを最後はパワーでトライラインを超え、15-9。SOジョーディー・バレットのコンバージョンも決まり、17-9とする。
前半ロスタイムの40分、スクラムから、最後はギャップをついたFBベン・スミスがトライを挙げて、4トライでボーナスポイントを獲得。ニュージーランドが数的不利を感じさせぬまま、24-9で前半を折り返す。
後半に入ると、一気呵成にオールブラックスが猛攻を仕掛ける。開始直後の1分、スクラムからPRジョー・ムーディがトライ。
さらにSOジョーディー・バレットのパスからCTBレイナート ブラウンがこの日2本目となるトライ。11分にはWTBリースも2本目となるトライ、15分にはLOホワイトロックのトライと一気畳み掛けて52-9と突き放す。
ナミビアも何度かラインブレイクしてチャンスを探すが、敵陣の22mラインを越えることがなかなか難しくなってきた。
その後もオールブラックスは攻めの姿勢を崩さず、27分にもFBスミスのトライとSOジョーディー・バレットのゴールで7点を追加し、59-9と大きくリードする。
残り10分となったところで、ナミビアも最後まで諦めることなくトライを狙って行く。すると32分、ニュージーランドPRオファ・トゥウンガファシが首へのタックルでイエローカード。再び、オールブラックスが14人で戦うことになる。
ナミビアは敵陣5mのラインアウトからボールをキープし展開するも、逆にSOからWTBへ移動したジョーディー・バレットのキックで、エリアを大きく挽回されてしまい、35分、ラインアウトからジョーディー・バレットがトライ。ゴールも決めて66-9。
38分、WTBリーコ・イオアネ、SHブラッド・ウェバーがパスをつないで、最後はSOに入っていたTJ・ペレナラが、相手のタックルを受けながら左隅にトライを挙げて71-9とし、ノーサイドを迎えた。
規律の悪さとミスが目立ったものの、オールブラックスが大量11トライを挙げてナミビアに貫禄勝ちし、勝ち点5を獲得した。
ナミビアのフィル・デーヴィスHC(ヘッドコーチ)は、「ボールのキープや前線突破といった試合ぶり、特に前半は良かった。今大会ベストのチャンピオンチームとの戦いだったが、これ以上はできないというくらい、持っているものは全部出せた」。
「スコアボードを見るのはちょっと辛いが、得られるものがいっぱいあった」と大敗したものの、選手たちの奮闘を大いに称えた。
キャプテンのCTBデイゼルも「素晴らしい経験だった。若い選手たちは世界チャンピオンと対戦すれば学べることがたくさんあるし、ゲームのやり方も詳しく分かる」。
「日本は厳しい練習と実際の対戦を通じて、ティア1に勝てるということを示してくれた。我々もトップチームと戦うことで学べる絶好の機会だった」と前向きに語った。
一方のニュージーランドのスティーブ・ハンセンHCは、「前半は気持ちが入っておらず、ナミビアにやられたが、後半はいい面が出た。ジョーディー・バレットがSOのポジションでいいプレーをしてくれて喜ばしい」。
「うちは2人のスター選手が欠場し、3人目のSOでの試合だったが、ジョーディー・バレットのおかげでトライがたくさん取れた。最後のTJ(ペレナラ)のトライの時は思わず席を立ってしまったね」と振り返った。
ゲームキャプテンのLOホワイトロックも「ナミビアは素晴らしかった。序盤、プレッシャーをかけられ、ペナルティを犯し、チャンスを与えてしまった」。
「落ち着きを取り戻すとペナルティを取られなくなり、試合に入ることができた。しかし、日本はいつもたくさんの観客の中で戦えて幸せだ」と話した。
これでオールブラックスは勝ち点を14に伸ばし、決勝トーナメント進出をほぼ確実なものとした。最終戦は、10月12日(土)に愛知・豊田スタジアムでイタリア代表と対戦する。
一方のナミビアは予選プール敗退が決まったが、悲願の1勝をかけて、10月13日(日)に岩手・釜石鵜住居復興スタジアムでカナダ代表と戦う。
文:斉藤健仁
【ハイライト動画】ニュージーランドvs.ナミビア ラグビーワールドカップ
(c) Rugby World Cup Limited 2019
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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