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海を渡ってきたサムライたちが挑むワールドカップの第2回目、中学時代から日本で研鑽を積んでいる、いわゆる「ホームグロウン」の2人の選手を紹介したい。
国籍を変えずとも日本代表になれるにも関わらず、キャプテンのFL(フランカー)リーチを筆頭に、海外生まれの日本代表15人中、8人がすでに日本国籍を取得し、15人のなかで日本の中学、高校、大学といった教育機関を卒業している選手も9人いる。
なかでも韓国出身のPR(プロップ)具 智元(グ・ジウォン/Honda)や、トンガ出身のWTB(ウィング)アタアタ・モエアキオラ(神戸製鋼)の2人は、日本国籍は取得していないものの、中学から日本に住んでラグビーに打ち込んでいる「日本育ち」、つまり「ホームグロウン」の選手として知られている。
右PRの具はアイルランド代表戦で背番号「3」でワールドカップ初先発、誰よりも大声で国歌を歌っていた。
そして前半35分、相手ボールのスクラムでペナルティを誘い、雄叫びを上げてチームを鼓舞していた。「1回目がダメだったので、自然と感情が出ました」。
具の父は・東春(ドンチュン)氏は韓国代表の伝説的PRで、日本のHondaでも活躍した名選手だった。
父や兄(智充/Honda)の影響で具も小学6年からラグビーを始め、兄とともにニュージーランドのウェリントンカレッジに留学し、中学2年で来日。中学3年から日本の大分の公立中学へ転向し、相撲部の助っ人として県大会で優勝した実績も持つ。
高校は、日本文理大学附属高に進学し、花園こそ出場できなかったが当時から注目されていた逸材だった。そして高校日本代表に選ばれたことで、「将来日本代表になってワールドカップに出ること」が具の夢となった。
2014年、U19日本代表に選ばれ、日本代表のエディー・ジョーンズHC(ヘッドコーチ/当時)が、「2019年ワールドカップのグラウンドに立っている若手の1人」として名指しし、練習生として招集したほどだった(ケガのため代表合宿自体には不参加)。
そして、拓殖大学では1年から活躍し、大学時代には早くもサンウルブズでプレー。2017年11月のトンガ代表戦で日本代表初キャップを獲得して以来、日本代表の中心選手のひとりとして活躍している。
好きな食べ物は、キムチ、サムギョプサル、そしてとんこつラーメン。本人が第二の故郷という大分県佐伯市にある「南国」がお気に入りだ。
そんな具はワールドカップに出場して、「夢がかなった」と破顔した。大会前、「日本も韓国の人にも頑張っている姿を応援してほしい」と話していた通りの活躍を見せている。
アイルランド代表戦に続いてサモア代表でも先発として出場する具は25歳だ。スクラムだけでなく、ボールキャリアーやタックルでも気を吐く。ワールドカップ日本大会はもちろん、今後も日本代表のスクラムを引っ張っていくはずだ。
もう1人は、チーム最年少の23歳のWTBアタアタ・モエアキオラだ。12歳からラグビーをはじめて、具と同様に、中学時代から日本で研鑽を積んでいる。
2019年、キャプテンを務めた東海大学を卒業後、すぐにチーフス(ニュージーランド)でプレーし、8試合で3トライを挙げた。唯一の海外組の選手であり、その勢いのまま、ワールドカップの日本代表メンバー入りを果たした。
モエアキオラは、NO8(ナンバーエイト)テビタ・タタフ(現・サントリー)と一緒にトンガから来日。東京・目黒学院中に入学した。
目黒学院高校時代は2年生の時に花園に出場。高校時代は主にSO(スタンドオフ)としてプレーした。高校日本代表には1年時、2年時と選出され、大学入学後はU20日本代表にも選出。2016年4月の韓国戦で初キャップを獲得した。
「日本代表に戻ってきたことが嬉しいですし、感謝しています。ワールドカップ日本大会でプレーしたかった」というモエアキオラは、「力強いでランで、試合に出られるように頑張りたい」とメンバー外から出場チャンスをうかがっている。
好きな言葉は「Malo」(マロ)。トンガ語で「感謝」を意味する言葉のため、スパイクには「感謝」という文字を入れている。
残念ながらワールドカップではまだ出番は回ってこない。ポジション争いの激しいバックスリーの中で、モエアキオラは強みのフィジカルを活かして、ワールドカップの舞台に立つことができるか。
中学から日本でラグビーに打ち込み、日本の高校、大学で育ち、日本代表としてワールドカップ入りを果たしたPR具、WTBモエアキオラの勇姿に注目してほしい。
文:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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