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アジア初開催のラグビー・ワールドカップ(W杯)日本大会で、初のプールステージ突破を目指している日本代表(世界ランキング9位)が、9月28日(土)、プールA最大の敵と相まみえる。
ロシア代表との開幕戦に勝利した日本に立ちはだかるのは、世界ランキング2位のアイルランド代表。舞台は静岡・小笠山総合運動公園エコパスタジアムだ。
名将ジョー・シュミットHC(ヘッドコーチ)が就任した2013年以降で、ニュージーランド代表を2度も撃破。2018年は欧州6か国対抗戦「シックス・ネーションズ」を全勝優勝。今大会は初戦でスコットランド代表に27-3で快勝した。
昨年がピークだったとも囁かれるが、通算対戦成績で9戦全敗の日本にとっては大きな敵だ。
日本は2017年にも連敗を喫しているが、このとき相手は英愛ライオンズ遠征に参加するSHコナー・マレー、SOジョナサン・セクストンら主力数人が不在だった。
今大会はともに初戦に勝利し、勝ち点5で並んでいる。日本は意欲的なメンバー構成で番狂わせを狙う。
FLリーチマイケル主将をリザーブに置き、ゲーム主将は猛タックラーのFLピーター・ラブスカフニが務める。
ロシア戦からは先発4人を入替。PR具智元、LOトンプソンルーク、NO8アマナキ・レレイ・マフィ、FB山中亮平を起用する。
FLリーチのリザーブ起用を問われた日本のジェイミー・ジョセフHCは、「リーチは主将だが、我々が成功し、目標を達成するためには経験値の高いインパクトを与えるリザーブが必要」と途中入替からの効果を狙ったと説明した。
ゲーム主将を務めるFLラブスカフニは、「とても光栄で栄誉なこと。大会前からチームの目標は変わっていないし、リーチもまだ大きな役割を背負っている。この試合に関しては(主将の)役割を受け継ぐだけ」と殊勝に語った。
FLリーチ主将が一角を担ったFW第3列(バックロー)は、ロシア戦で大活躍のFL姫野和樹、FLラブスカフニ、そして今大会初出場・初先発のNO8アマナキ。世界トップクラスの3人が揃った。
試合をコントロールするハーフ団(スクラムハーフとスタンドオフ)は、初戦に続いてSH流大とSO田村優。
SH流はアイルランドの印象について、「すごくミスが少なく手ごわいチームだなと。ボール保持率も高いし、守備も集中力が切れずに戦ってくるので手ごわいことに変わりはないけど、こちらも速い展開でいけば、チャンスもあるし、スペースも出てくるので、そこを突いていく」
「キックも多用してくるので、そこの対処をしっかりしてボールをうまく使えれば、チャンスは出てくる」と分析した。
このキックの対処を多くの場面で担うのが、挑戦的な構成となったバックスリー(WTBとFB)だ。
両WTBはロシア戦でハットトリックの松島幸太朗、残る2人は身長188センチのWTBウィリアム・トゥポウ、FB山中で臨む。9月の壮行試合で右ふくらはぎを負傷したWTB福岡堅樹はメンバー外となった。
「(ウイングは)昨年、サンウルブズでレベルズ戦とシャークス戦でプレーしたと思う。ハイボールをキャッチしてサイドでチャンスを狙いたい」(WTBトゥポウ)
「(アイルランドは)守備もすごく良いし、ハイボールキックも結構、蹴ってきていた。試合に出たらキック処理を確実にやっていきたい」(FB山中)対するアイルランドも初戦から先発4人を変更した。
HOローリー・ベスト主将をはじめ強力なフォワード8人の顔ぶれは変わらず、バックスでは、大腿四頭筋を痛めたSOジョニー・セクストンに代わりSOジャック・カーティーが10番を担う。
また脳しんとうの影響により休養のバンディー・アキにかわりCTBクリス・ジャック。主力組であるWTBキース・アールズ、FBロブ・カーニーが、怪我からの先発復帰を果たした。
アイルランドのシュミットHCは日本について「今年は180~200日間というキャンプをしてきたチームで準備万全だ。(勝つためには)当然いいパフォーマンスをしないといけない」
ファースト・チョイスのセクストンに代わり、先発10番を担うSOカーティについては「24日にSOでの先発を伝えた。しっかりと準備してもらうためにも」と予定を前倒しして先発起用を伝えたと語った。
アイルランドは2018年ワールドラグビー年間最優秀選手であるセクストンが不在になったが、影の王様ともいえるSHマレーは健在だ。
日本のバックス最高身長に並ぶ188センチの巨人で、初戦のスコットランド戦では両チーム最多となる14本のハイパントを上げ、いずれもコンテストが起こる絶妙な位置に落とした。
巧みなパスさばきはもちろん、巨躯を活かしてエリア外側の守備にも貢献。スクラムハーフのイメージを覆すようなスター選手だ。
スクラムやラインアウトで劣勢になれば、当然ながら分が悪くなる。アイルランドのスクラムは安定性重視ではなく、PK(ペナルティキック)獲得を目的として押してくるのだという。
「すごくスクラムで押そうとする気持ちが強い。どこでもペナルティーを取ってこようとする。こっちはやることは変わらない。やってきたことを、80分通して最後までやることが大事」(PR具)
日本としてはセットピース(スクラム、ラインアウト)を安定させながら、相手を混乱に陥れたい。スローペースで相手を気持ち良くプレーさせれば、地力の差が現れるだけだろう。
今年6月の地獄の宮崎合宿では、プレーが継続している「ボールインプレー」を世界最高レベルの40分以上に伸ばすため、過酷なスタミナ強化に臨んだ。ボールインプレー時間を増やし、終盤のスタミナ勝負に持ち込めれば、勝機は広がるのではないか。
W杯では何が起こるか分からない。日本代表の勝利を願い、明日16時15分のキックオフを待ちたい。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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