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9月21日、札幌ドームでラグビーワールドカップ(RWC)初試合が行われた。プール戦の注目カードの一つであるオーストラリア対フィジーである。スタンドには、3万6482人の観衆が集った。プールDは、オーストラリア、ウェールズの決勝トーナメント進出が濃厚と言われているが、ジャイアントキラーのフィジーがこの2チームを倒す力を秘めており、この日もフィジーがどこまでオーストラリアに食らいつくかが注目されていた。
午後1時45分キックオフ。立ち上がりは、フィジーがテンポよくボールをつないだ。WTBセミ・ランドランドラらが突進し、SOベン・ヴォラヴォラが防御背後にキックを蹴り込み陣地を進める。前半4分、ヴォラヴォラのPGで先制とすると、7分、WTBチョスア・トゥイソヴァが右タッチライン際を抜け出し、CTBワイセア・ナヤザレヴ、FLペゼリ・ヤトにつないでトライ。8-0とリードを広げた。ディフェンスでも素早く前に出て的確にタックルを決めるフィジーに対し、オーストラリアはなかなか前進できない。
15分過ぎ、ようやく連続攻撃を仕掛けたオーストラリアは、17分、スクラムを押し込みながらボールを出し、FLマイケル・フーパーがトライ、8-7とする。しかし、フィジーもヴォラヴォラが2PGを追加して、14-7。オーストラリアもWTBリース・ホッジが右コーナーに飛び込んでトライを返し、前半は14-12で終了。フィジーの健闘が光る接戦の一つ一つのプレーに、札幌ドームの観客席は敏感に反応。大歓声が何度も沸き上がった。
後半に入って攻勢に出たオーストラリアだが、ハーフウェーライン付近でパスミスが出てしまう。バウンドしたボールをフィジーCTBナヤザレヴが拾って約50mを一気に駆け抜け、トライ後のゴールも決まって、21-12。番狂わせの予感にスタジアムがざわめき始める。しかし、オーストラリアが本来の実力を発揮するのは、ここからだった。
後半10分、WTBホッジがPGを決めると、オーストラリアはベテランSHウィル・ゲニアを投入。ゲニアのロングキックでフィジー陣深く入ると、16分、ラインアウトからのモールを押し込み、HOトル・ラトゥがトライ。21-20と1点差に詰め寄る。5分後には、同じようにラトゥがトライして、21-25と逆転。ゲニアが熟練のパスさばきで、疲れの見えるフィジーのディフェンスを翻弄し、オーストラリアが完全に主導権を握った。
仕上げの2トライは、28分のCTBサム・ケレヴィ、31分のWTBマリカ・コロインベテ。ケレヴィはパワフルなランで左中間に飛び込み、コロインベテは抜群のスピードで左タッチライン際を駆け抜けた。奇しくもフィジー出身の2人が母国代表チームを突き放したことになる。
前半は苦しんだオーストラリアだが、終わってみれば、バックスのスピーディーなラインアタック、強力スクラム、モールと、多彩な攻撃での快勝だった。マイケル・チェイカヘッドコーチは、「とにかく勝ててよかった。(フィジーは)危険なチーム。ミスなどがあり、リードを許したが基本に戻って逆転できた」と安堵の表情。マイケル・フーパーキャプテンは、「厳しい試合だった。(フィジーの)パワーある選手に対し、何とか立て直せた。選手交代も功を奏した」とゲニアら交代選手の奮闘を勝因にあげた。フーパーは、チームNO1の18回のボールキャリーで64mを前進し、チームを勢いづけた。プレーヤー・オブ・ザ・マッチ(最優秀選手)は、2トライのラトゥが受賞している。
敗れたフィジーのドミニコ・ワンガニンブロトゥキャプテンは、「いい試合ができたが、勝つにはまだ足りないものがある」とコメント。次は中3日(9月25日)でウルグアイと対戦する。会場は、7月27日に日本代表と戦った釜石鵜住居復興スタジアムだ。「次は極めて大事な試合になる。疲れを取って明日移動する」(ジョン・マッキーヘッドコーチ)。オーストラリアは、9月29日、東京スタジアムでウェールズとの大一番に臨む。
【ハイライト】オーストラリア vs. フィジー ラグビーワールドカップ2019 プールD
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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