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ラグビーワールドカップ大会2日目の9月21日(土)、前日に開幕戦が行われた東京スタジアムで、フランス代表vs.アルゼンチン代表のプールCの初戦が行われた。
「死のプール」と言われるプールCで、決勝トーナメントに進むためにも、互いに負けられない気迫のこもった激闘だった。
「レ・ブルー」こと、フランス代表はこの試合に先発したSO(スタンドオフ)ロマン・ヌタマックが、フランス代表として、史上初めて親子二代にわたってワールドカップでプレーした選手となった(父エミールは1995、1999年のワールドカップに出場)。
一方の前回大会ベスト4の「ロス・プーマス」こと、アルゼンチン代表は、サッカー界の英雄ディエゴ・マラドーナから、「そのジャージーに魂を込めろ。勝ちに行け!」と熱い手紙を送られ決戦に臨んだ。
2007年ワールドカップ開幕戦で、アルゼンチンがフランスを下して以来、何かとライバル関係が取りざたされてきた両チームの試合は、4万4004人の観客が集った。
試合は序盤、開幕戦の固さからか互いにミスもあり、またディフェンスのぶつかり合いで、互いになかなか点を取ることができなかった。試合が動いたのは前半14分、SOニコラス・サンチェスがPG(ペナルティゴール)を決め、アルゼンチンが3-0と先制する。
しかし、ここから勢いに乗ったのはフランスだった。17分、フランスはWTB(ウイング)ダミン・プノーの突破から、CTB(センター)ヴィリミ・ヴァカタワから、CTBガエル・フィクーへとつないで左隅にトライ。SOヌタマックのゴールも決まり、7-3と逆転する。
さらにフランスは21分、再びWTBプノーからサポートに入っていたSH(スクラムハーフ)アントワーヌ・デュポンが右隅にトライ。難しい角度のコンバージョンもSOヌタマックが見事に決めて、フランスは14-3とリードを広げる。
29分にもSOヌタマックのPGでフランスが3点を追加し17-3と突き放す。結局、アルゼンチンは追加点を奪えず、逆にフランス代表が前半終了間際にSOヌタマックがPGで3点をさらに追加し、20-3と大量リードで前半を折り返した。
しかし、南半球の強豪で、今年のスーパーラグビーで準優勝したジャガーズのメンバーがほとんどのアルゼンチンも反撃を開始する。
後半早々の2分、アルゼンチンは、マイボールラインアウトをキープ、モールで押し込んで最後はLO(ロック)グイド・ペティがトライ。SOサンチェスのゴールも決まり、アルゼンチンが10-20とする。
13分、アルゼンチンはラインアウトから再びモールで押し込み、途中出場のHO(フッカー)フリアン・モントーヤがトライ。ゴールは外れたが、15-20と1トライ差まで追い上げる。
勢いを取り戻したアルゼンチンは、さらに20分、フランスでプレーするSOベンハミン・ウルダピジェタのPGで18-20と迫る。28分、SOベンジャミン・ウルダピジェタがさらにPGを決め、ついにアルゼンチンが20-21と逆転に成功する。
しかし、直後の29分、「状況が冷静に見えていた」という、SOヌタマックに替わって入ったベテランのカミーユ・ロペスのDG(ドロップゴール)でフランスがすぐに23-21と再逆転する。
試合終了間際の39分、アルゼンチンはフランスの反則からPGを選択する。キャプテンのFL(フランカー)パブロ・マテーラが「絶大な信頼を置いている」という、ロングキックが得意なFB(フルバック)エミリアーノ・ボフェリは逆転を狙ったが、キックは残念ながら外れてしまった。
結局、そのままノーサイドを迎えて、フランスが23-21でアルゼンチンを振り切り激闘を制した。
【ハイライト】フランスvs.アルゼンチン ラグビーワールドカップ
(c) Rugby World Cup Limited 2019
勝利したフランス代表のジャック・ブリュネルHC(ヘッドコーチ)は、「この結果は良かった。ただ、ちょっと足りない部分もあり、完全に満足はしていないが、どんどんよくなっていくだろう」。
「ディフェンスも悪くなかった。もちろんまだやるべきことがあって、課題がわかったので良かった」と、まだまだ試合が続くため、表情を変えずに語った。
キャプテンのHOギエム・ギラドは、「勝てて良かったが、レフェリーのジャッジに一貫性がなかった。後半に課題が残ってしまった」と勝利にも笑顔はなかった。
敗れたアルゼンチンのマリオ・レデズマHCは、「準備通りのプレーができなかった。やりたかったことを遂行できるまでに、40分かかってしまった」と肩を落とした。
「少なくともレフリーが2つ違う判断をしていたら違ったかもしれない。何れにせよ、勝っていたとしても、前半あのようなパフォーマンスだったので、修正するべき点は多い」と終始厳しい表情を崩さなかった。
キャプテンFLマテーラは「とても厳しい。勝てる力があるのに、それが前半まったく出なかった。前半あれだけ点差を与えてしまうと、取り戻すのは簡単な相手ではない。残り3試合に全てをぶつけていく」と悔しさをにじませつつも先を見据えた。
フランスはボーナスポイントを獲得できず勝ち点4、一方、アルゼンチン代表は7点差以内の敗戦で勝ち点1を獲得した。
フランス代表は、予選プール2戦目は10月2日に福岡・博多の森競技場でアメリカ代表と対戦する。一方のアルゼンチン代表は9月28日に大阪・花園ラグビー場でトンガ代表と相まみえる。
文:斉藤健仁/Photo by Yuuri Tanimoto
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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