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写真:伝統の「魂のタックル」は今年も健在
今年の対抗戦は例年と比べて変則的な日程で行われている。ラグビーワールドカップが日本で開催されるのに伴い、これから約1ヶ月の間、試合がないためだ。
ワールドカップが始まる前の3試合を消化した現在、慶應義塾大学は2勝1敗で4位につけている。ここまでの「前半戦」の戦いを振り返っていきたい。
長野県・菅平で迎えた開幕戦は、青山学院大学と対戦。近年は続けて勝ち星を挙げている相手に、35-3と今年も快勝した。
開始早々から相手にPG(ペナルティゴール)を決められ先制を許すも、その後のスクラムで押し込んでトライを奪い、逆転に成功。
「自分たちがやろうとしていたスクラムを組むことができた」とPR(プロップ)有賀光生(総4・國學院久我山)が振り返るように、この試合ではスクラムで優位に試合を進め、その後も得点を重ねていく。
後半も青学大を圧倒すると思われたが、ゴールライン付近でミスが見られる場面が続き、なかなか追加点とはいかなかった。苦しい時間帯をなかなか抜け出せないという課題こそ残ったが、相手をノートライに抑えて幸先よくスタートを切った。
翌週に行われたのは筑波大学戦。春季大会は1勝4敗と勝ち星が遠かった慶大にとって連勝といきたいところだった。序盤から敵陣に攻め込むも、筑波大のディフェンス陣が粘りを見せ、苦戦を強いられた。
ラックからスペースを突いたFL(フランカー)川合秀和(総4・國學院久我山)のトライで先制し、試合はほとんど慶大ペースではあったものの、決め切れない展開が続く。
14-7とリードして迎えた試合終盤だったが、終了間際に2連続トライを許し、ラストワンプレーでの逆転負けを喫した。
試合後、栗原徹HC(ヘッドコーチ)は「FW(フォワード)とBK(バックス)がアタックで分離してしまった」と振り返った。
フィールド場の15人がリンクし、全員がオプションとなって攻撃するという今年度のテーマが達成できず、この敗戦は結果以上に重くのしかかった。
「FWも含めて15人でアタックするマインド」(中楠一期)を意識して臨んだ第3戦は、成蹊大に101-0と100点以上差をつけての完封勝利。
15個のトライのうち、FW陣によるものが13個と多くを占めていたことから、前週の課題を克服できたといえよう。アタックのテンポを速くしてきたことも功を奏している。
写真:ここからは一戦も落とせない戦いが続く
ここまでの戦いを振り返って、今年の慶大が持つ強み、抱える課題が見えてきた。
まず、「Unity」をスローガンに掲げ、全員で戦うラグビーを持ち味としている通り、スタメンを張る選手とベンチに控える選手たちの戦力差が、大きく開いていないことは強みと呼べるだろう。
勝利した2試合はいずれもベンチ入り選手を全て動員している。慶大はベンチ入り選手を、試合終盤にチームを勢いづける選手として「ブースター」と呼んでいるが、途中出場した選手たちはまさにチームを「ブースト」する役割を果たしている。
成蹊大戦では後半の方が多く得点を重ねており、栗原HCも、選手を多く入れ替えたことがその理由だと述べている。
対抗戦3試合を終え、試合に先発出場する選手は固まってきたように見えるが、ベンチも含めた全員での戦いが今年の慶大の持ち味だ。使える選手が多いことは、試合をする上での選択肢が多いことを意味する。
対抗戦後半、そして大学選手権で相見える個性豊かな、高い実力を誇るライバル校を相手にこの強みが効果を発揮してくるだろう。
だが、多くの選手が出場するということは、緻密な連携が必要となってくることは間違いない。大学選手権に向け、負けられない戦いが続く中、ひとつの細かいミスが命取りとなることがある。
青学大戦では早々に先制のPGを献上してしまい、筑波大戦では敵陣ゴール前までボールを運んでも取りきれない場面が続いた。小さなミスから好機を生かしきれず、相手に得点を与えてしまうことは防ぎたい。
無失点で勝利した成蹊大戦でも、自らのペナルティや、ディフェンスの間を突かれ自陣に切り込まれることがあった。アタック、ディフェンス双方において連携を高め、数字に出ないミスまで徹底して、なくしていくことが求められる。
関東大学対抗戦Aグループに所属する8チームのうち、大学選手権に進めるのは上位4チームだ。現在4位につける慶大はまさに背水の陣。
だが、強豪校との対戦を控え、まだ対抗戦優勝の可能性も消えたわけではない。創部120周年となるメモリアルイヤー、日本一を目指す慶大の戦いはまだまだ終わらない。
文/写真:竹内大志
慶應スポーツ新聞会
慶應義塾大学文化団体連盟所属の公認サークル。通称ケイスポ。全40ある体育会の取材から記事の執筆、年7回の新聞製作まで全て学生の手で行う塾内唯一のスポーツ新聞サークル。部員数約50名、35年の歴史を持つ。»慶應スポーツWebサイト
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