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ラグビーワールドカップ(RWC)日本大会の開幕まで、あと24日である。8月24日にも注目のテストマッチが行われ、イングランドがアイルランドに57-15で歴史的大勝、スコットランドはフランスを17-14と逆転で下して前週の雪辱を果たした。8月23日には、過去2回の優勝を誇るオーストラリアが、31名のRWCメンバーを発表。ふくらはぎの負傷で戦列を離れていたデヴィッド・ポーコックが入り、6年間代表から離れながら、7月に復帰したジェームズ・オコナーも選ばれた。さて、前回の本コラムではプールAの注目選手をあげたが、今回はプールBに触れてみたい。チームの顔ぶれは、ニュージーランド(NZ)、南アフリカ、イタリア、ナミビア、カナダになる。
NZはスター選手揃いで、少数の名をあげるのが難しいほど。キャプテンは、世界最高のNO8と言われるキアラン・リード(33歳)。193cm、111kgで幅広い動きが特徴。2016年、2017年と2年連続で世界最優秀選手となったボーデン・バレット(28歳)は、正確なキックパスで味方を走らせ、自らもWTBばりのスピードで独走するスーパープレーヤー。SO、FBどちらでもプレーできる。超新星はWTBセヴ・リース(22歳)。フィジー出身で爆発的なスピードを持ち、スーパーラグビーのクルセイダーズで活躍し、オールブラックスにまで上り詰めた。RWCでも勝負を決めるトライを決めそうな期待感を抱かせる選手だ。
ここにきて調子を上げているのが南アフリカだ。こちらも世界的スターが揃うが、誰が見ても分かりやすいのは、PRテンダイ・ムタワリラ(34歳)、HOマルコム・マークス(25歳)。ムタワリラが突進すると、観客席から「ビースト!」のうなり声が出るのが定番。マークスは、189cm、112kgとHOとしては大きなサイズ。ボールキャリアーとしての力強い突進に加え、タックル後にボールを奪う「ジャッカル」の名手。スーパーラグビーのライオンズの一員としてサンウルブズを何度も苦しめた超人的HOだ。南アフリカが優勝するとすれば、カギを握るのはSOハンドレ・ポラード(25歳)だろう。NTTドコモでプレー経験があるが、思い切りの良いラン、正確なキック、パスに加えて、プレースキッカーでもあり、ポラードが得点王になるような活躍ができれば南アフリカが頂点に立つ可能性もある。
イタリアといえば、必ず名前が挙がるのがキャプテンのセルジョ・パリッセ(35歳)だ。そのキャリアは突出している。2002年に18歳で代表デビューして以降、195cm、110kgの恵まれたサイズと世界トップレベルのスキル、突進力で不動のNO8となっている。2008年からキャプテンとしてチームの先頭に立ち、同年、イタリア人として初めてIRB(現在のワールドラグビー)の年間最優秀選手候補になった。2005年からはフランスの名門スタッド・フランセで長らくプレーし、2019年よりトゥーロンに移籍。若い選手では、マッテオ・ミノッツィ(23歳)がいる。175cm、77kgと小柄だが切れ味鋭いステップが魅力だ。彼らがNZ、南アフリカの2強にどんな挑戦を見せてくれるか楽しみだ。
ナミビアは、アフリカの二番手チームなのだが、南アフリカとは実力的に大きな差があり、RWCでいまだ勝利がない。ここには、トヨタ自動車でプレーしたFLレナルド・ボスマ(29歳)がいる。南アフリカ生まれだが、母親がナミビア生まれのために資格を得た。現在はイングランドの名門ハリクインズクラブでプレーしている。190cm、105kgのサイズでパワフルな突進が持ち味だ。SHユージン・ヤンチース(33歳)も経験豊富なプレーヤーで攻撃選択の要になる。
カナダといえば、日本代表キラーのDTH・ファン・デル・メルヴァ(33歳)がいる。南アフリカ生まれだが、2003年にカナダに移住してその実力を発揮。2006年にカナダ代表入りし、2007年からはイングランドのサラセンズを皮切りに、スコットランド、ウェールズ、イングランドなどヨーロッパでプレーしてきた。CTB、WTBの両方でプレーでき、2007年、2011年のRWCでは日本代表戦でいずれも引き分けの要因となるトライを決めた。タイラー・アードロン(28歳)は、NZのチーフス(スーパーラグビー)に2018から所属し、2021年まで契約をした屈強なFWだ。FW第二列、第三列両方でプレーする。
プールBは、NZ、南アフリカが決勝トーナメントに進出するという予想がもっぱらだが、個々の選手たちにも目を向け、勝敗だけではない楽しみを探してみてはどうだろう。
文:村上 晃一
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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