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パシフィックネーションズカップ(PNC)の連勝スタート。日本代表の強さに慣れていない人々から戸惑いの声も聞かれる。この時期に、こんなに調子が良くて本番は大丈夫なのか?という不安の声もある。たしかに、フィジー戦は完全に試合を支配していて、モールを押し込まれ、ディフェンスの連携が乱れてトライされたことを除けば課題は少なかった。
トンガ戦はどうだっただろう? 8月3日の花園ラグビー場には、20,942人の大観衆が集った。多くは日本代表の新しいレプリカジャージーをまとっていた。そんなサポーターを歓喜させるのに、この日の日本代表は時間がかかった。前半4分には、WTB松島幸太朗が相手のパスを叩き落としたという反則(デリバレイト・ノックオン)でシンビン(10分間の一時退場)となる。その後はピンチの連続。ようやく攻め込み、最初のトライは前半10分、国歌斉唱で涙を流したNO8アマナキ・レレイ・マフィが決めた。
前半20分、今度はPRヴァル アサエリ愛が相手のタックルを受けながらパワーで押し込んでトライ。SO田村優のゴールも決まって、14-0とリードを広げた。30分にもCTBラファエレ ティモシーがトライして、21-0。それでもフィジー戦ほど歓声が上がらないのは、攻め込んだボールを簡単に奪われるなど、プレーが途切れがちだったからだろう。タックルで倒された選手へのサポートの寄りが遅かったのだ。
立ち上がりのミスの連鎖も気になった。もし、トンガがPGを外さず、インゴールでボールを押さえる直前に足をとられたりしなければ、前半のスコアは、21-10で拮抗していた。日本代表のパフォーマンスは完璧にはほど遠かった。それでも最終的に、41-7としたところは日本代表の地力アップの証明でもある。フィジー戦では押し込まれたモールは止めた。一対一のコンタクトでも巨漢選手の揃うトンガに一歩も身引かなかった。スクラム、ラインアウトも安定し、トンガのラインアウトにもよくプレッシャーをかけていた。
後半39分、交代出場のWTB福岡堅樹が左タッチライン際で2人のタックラーをかわしたトライは、2万人超の観客を喜ばせた。これまでの日本代表は2試合連続で良い試合をすることができないことが多かった。「それはリーダー陣には分かっていたと思います」とリーチキャプテン。「あえて言いませんでした。2試合連続で良い試合をすることがチームの成長につながるということは、みんな分かっていて、それに応えたと思います」。
前日に母親のマウデさんが亡くなり、緊急帰国したジェイミー・ジョセフヘッドコーチに代わって指揮をとったトニー・ブラウンHC代行は、「アタックはとても良かった。たくさんのチャンスを作ることができた」と評価した。その上で、後半、ブレイクダウン(ボール争奪局面)でプレッシャーを受けてスコアが伸びなかったことについてこう話した。「後半、トンガはブレイクダウンにかなりプレッシャーをかけてきました。ということは、他にスペースができるということです。そこを突いていました」。田村の防御背後へのグラバーキック(地面を転がるキック)を捕って松島幸太朗がトライしたシーンはその一つだろう。トンガのプレシャーに苦しみながらも、スペースを見つけて最後はトライを取り切った。上手くいかない展開を我慢し、試合の中で相手に対応して修正できるのは今の日本代表の強さだろう。「このチームの良いところは、リーダー陣が成長しているということ。きょうも、それを感じました」(リーチ)。
日本代表はまだ仕上がっていない。RWC開幕戦(対ロシア)まで残された試合は、アメリカ戦(8月10日)と、南アフリカ戦(9月6日)のみ。その160分間を大切に戦ってもらいたい。
文:村上晃一
【ハイライト】日本 vs. トンガ ラグビー パシフィック・ネーションズカップ2019
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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