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お互いのプライドがぶつかり合う試合となった。
6月30日、今年も第7回目となる関東大学オールスターゲームが行われた。メインゲームは関東大学対抗戦、リーグ戦の選抜チームが激突した。
昨年は対抗戦選抜が66-24で勝利し、現在の対戦成績は3勝3敗。今年は勝ち越しをかけた一戦となった。
試合前に、対抗戦選抜の控えがLO(ロック)相部開哉(慶應義塾大学)から、星谷俊輔(早稲田大学)に変更された以外は、当初のメンバーが先発した。
写真:WTBにFWに活躍したハラシリ
まず、会場を沸かせたのはリーグ戦選抜のWTB(ウィング)シオネ・ハラシリ(日本大学2年)。近場を突破し、チャンスを作った。
対抗戦選抜もFL(フランカー)川合秀和(慶應義塾大学4年)が大外で突破試みる。しかし、お互いのタックル、ディフェンスが上回り、得点は動かない。
昨年度の大学選手権優勝した明治大学のFW(フォワード)5人を揃えた対抗戦選抜はスクラムで押し込んだが、リーグ戦選抜のFW陣も意地を見せて押し返すなど、序盤はお祭りのような雰囲気はなく、まるでトーナメントの一戦のようだった。
そんな中、拮抗を破ったのは対抗戦選抜だった。前半17分、モールを起点にボールを展開し、最後はSO(スタンドオフ)岸岡智樹(早稲田大学4年)のパスを受けたWTB山村知也(明治大4年)が左隅にグラウンディングし5-0と先制する。
その後はリーグ戦選抜も攻め込むが、マイボールラインアウトに苦しみ、なかなかリズムが出ない。その中でもWTB中根稜登(流通経済大学3年)がゲインするなどチャンスは作ったが、トライに結びつけることができなかった。
すると38分、対抗戦選抜は一瞬の隙を見逃さない。キック後に相手にプレッシャーをかけてミスを誘うと、そのボールをPR(プロップ)安昌豪(明治大4年)が外に展開し、WTB山村が40mを走りきって左中間にトライ。
FB(フルバック)奥村翔(帝京大3年)のゴールも決まって対抗戦選抜が12-0とリードしてハーフタイムを迎えた。
写真:ハットトリックを達成のWTB山村
後半も拮抗した状態が続く中、先に得点を挙げたのは対抗戦選抜だった。後半11分、自陣のスクラムからSO岸岡がランで抜け出し、さらにWTB山村がゲインし、ボールを継続。
最後はインゴールにこぼれたボールを、途中出場のPR細木康太郎(帝京大学2年)が押さえてトライ。ゴールも決まって19-0とする。
攻撃の手を緩めない対抗戦選抜は、後半18分、ゴール前のラインアウトからモールを押し込み、キャプテンHO(フッカー)武井日向(明治大4年)、SH(スクラムハーフ)杉山優平(筑波大学4年)とつなぐ。
最後はWTB山村がそのままインゴールを陥れてハットトリックを達成。ゴールも成功し、26-0と大きくリードすることに成功した。
残り10分、何としても一矢報いたいリーグ戦選抜はスクラムからNO8(ナンバーエイト)のポジションに入ったハラシリがゴールラインに近づくが、対抗戦選抜の粘りのディフェンスの前に、あと1mが届かなかった。
すると流れは再び、対抗戦選抜に。27分には岸岡の裏へのキックを、途中出場のCTB(センター)栗原由太(慶應義塾大4年)が押さえてトライ。31-0として勝負を決めた。
写真:MVPのSO岸岡
37分には、相手ペナルティ後、途中出場のSH(スクラムハーフ)末拓実(帝京大4年)が抜けだし、最後は左に大きく展開。
SO岸岡、CTB(センター)中野将伍(早稲田大4年)、FB奥村とわたり、最後はFB奥村が手を伸ばしてグラウンディングしてトライ。自身でゴールも決めて38-0として、そのままノーサイドを迎えた。
対抗戦が一昨年から3連勝を達成し、通算成績を4勝3敗とした。MVPは後半、雨が降る中でもしっかりとパス、キック、ランでゲームコントロールをした対抗戦選抜のSO岸岡が選ばれ、人気テーマパークのペアチケットが贈られた
「2日間しか時間がなかったので、ほぼアタックの確認だけをしました。MVPを取れたのはこれからの自信にもなりますし、頑張っていこうと思います」(岸岡)。
写真:奮闘したリーグ戦選抜FW陣
敗戦したリーグ戦選抜の木村季由監督(東海大)は「1回目から、毎年みんなで育てていて、選ばれた選手も責任感持ってやっているし、いい意味でレベルアップしている」。
「いいタックルもたくさんあったし、身体を張ったシーンもあったが、流れが自分たちの思う方向に傾かなかった」。
「対抗戦選抜はスタンダードをカチッと合わせてきます。そのあたりのラグビー理解度が高かった」と言いつつも、「来年、また追いつきます」と語気を強めた。
キャプテンPR中野幹(東海大4年)は「フィールドではディフェンスで頑張っていたが、ラインアウトでミスが多く、試合を通して合わなかった」と反省。
しかし、個人的には「むちゃくちゃおもしろかったです。いつもプレーしていない意識高いメンバーとやれたのは、自分にとってもプラスになったし、勉強になった」と前を向いた。
写真:右から相良監督、HO武井、SO岸岡
勝利した相良南海夫監督(早稲田大)は「コンバインドチームでしたが、失点ゼロだったので選手は素晴らしかった。2日間ですが、いいチームで戦えたことを誇りに、嬉しく思います」。
「対抗戦選抜もプライドを持っていたし、リーグ戦選抜もそういう気持ちで戦った。引き締まった試合が出来て、関東の大学ラグビーにとって意義深い一日になったかなと思います」と話した。
キャプテンHO武井(明治大4年)は「0点で抑えられたディエンスの部分、身体を張ったことに対抗戦のプライドが見えた。準備期間が1日しかないなか、上手くコミュニケーション取れて決められたことを遂行できました」。
「能力高い選手が集まって、コミュニケーション取って、2日間ですがいいチームができた。前半ペナルティが多かったので、後半、敵陣でアタックしようと思いました。(大勢のファンや大学生の応援は)力になりました!」と笑顔を見せた。
天候が悪い中でも、5796人も観客が集まった今年の関東大学オールスターゲーム。最終的には点差が付いたものの、中盤まではお互いに集中しており、フィジカルバトルもある見応えある試合となった。
来年は対抗戦選抜が4連勝して白星を伸ばすのか、それともリーグ戦選抜が勝ち星をタイに戻すのか。いずれにせよ、年々、レベル、そして試合の価値が高まっていくオールスターゲームを楽しみに待ちたい。
◆関東大学オールスターゲーム2019 結果
○リーグ戦5部A 15-12 リーグ戦5部B●
○リーグ戦3部 19-12 リーグ戦4部<●br />
○東邦大学 (メディカルセブンズ優勝チーム) 24-14 医歯薬リーグ・セブンズ選抜●
○対抗戦Bグループ 29-21 リーグ戦2部●
○対抗戦選抜 38-0 リーグ戦選抜●
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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