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6月3日(月)、東京都内でラグビー日本代表の宮崎合宿参加メンバー42名が発表された。
ラグビー日本代表選手たちは、今後、3度の宮崎合宿を経て、フィジー代表、トンガ代表、アメリカ代表と対戦するPNC(パシフィック・ネーションズカップ)に備える。
そして、3試合を行った後、網走合宿を経て、最終メンバー31名が選ばれ、9月20日のワールドカップ本番を迎える。
冒頭、ラグビー日本代表を率いるジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は下記のように説明した。
「私の主な仕事はワールドカップでチームを勝たせることです。逆算して2月から鍛えていて、9月にピークを迎えたい。PNCの準備として、何人かの選手を外すことになりました。
みんな献身的、真面目な選手なので苦しい作業でした。42人のスコッドで、宮崎で3回の合宿をします。1回目の合宿は、リコネクト、繋がる、作り直しして、鍛えたい。
戦法は公表できないが、それを導入して(ワールドカップでの)対戦相手の対策をする。2・3回目の合宿は純粋にPNCの準備。その後、40名で網走合宿をして、31名を選出します」。
その後ヘッドコーチ自ら口頭で、FW(フォワード)26名、BK(バックス)16名の選手を発表した。
過去3回ワールドカップ出場したベテランLO(ロック)トンプソン ルーク(近鉄)、チーフスでプレーしているWTB(ウィング)アタアタ・モエアキオラ(神戸製鋼)などが選ばれる一方で、2015年ワールドカップ組のCTB(センター)立川理道(クボタ)、WTB山田章仁(NTTコミュニケーションズ)が外れた。
まず、WTBに山田ではなくアタアタ・モエアキオラを選んだ理由をジョセフHCはこう説明した。
「山田、立川だけでなく外れた選手全員にいえることだが、まずはその前に私の責任、仕事ととしては、勝てるチームのメンバーを選ぶこと、その中でバランスを取ること。
バックスリーは福岡、レメキ、松島といった、非常にエクスファクター、特殊能力を持った選手が揃っている。
もう1つの意図としては、アイルランドなど、ハイコンテストでボールを蹴って、空中戦でプレッシャーをかけてくることが想定されるので、空中戦に耐えられて処理できる大きい選手が必要なので、今回の選出にいたりました」。
また、モエアキオラ個人の評価として、指揮官は「違ったタイプの選手で非常にパワフル。これまで自らコーチングをした経験ないが、サンウルブズでケガをしてしまった。
その後はチーフスでプレーしている。まずまずのパフォーマンスをしている。チーフには非常にいいコーチ陣がいるが、そのコーチ陣からのフィードバックでもらっている。
『彼はまだまだだが、中立の立場で見ても高いポテンシャルを持っている選手。あとは彼のアピール次第、力量次第』になる」と一定の評価を与えた。
続いて、ジョセフHCが38歳のLOトンプソン ルークを呼んだ理由はこうだった。
「彼はサンウルでケガ人が出てことによって招集された。素晴らしいプレーを見せてくれて驚いた。彼の経験やレジリエンス(不屈の精神)を評価する。
遅れて代表に入ったので、まだまだ鍛えないといけないし、やらないといけないことがあるが、ワールドカップで成功したチームに一貫しているのは経験者、ベテランが入っていることです。
彼は周りの選手からも尊敬されている。代表選手として誇り高き熱い情熱を持った選手だ。今見せているパフォーマンスを継続すれば、チームにとって貴重な選手になると確信している」。
続いてトンプソンに期待する役割を聞かれて、指揮官は「あくまでも彼は一選手としてポジション競争の中にいる選手だ。2015年ワールドカップ後に彼は自分から代表に参加することを辞退した。
数年前にアイルランド戦で復帰し、そこで25本のタックルをした。彼は自信があり、他の選手の手本になるような行動をする模範的な選手。若くないが、サンウルブズで非常にいいプレーをしてくれた。そこを評価して、今回の決断にいたった。
彼に求めるのは、やはり彼らしくプレーしてほしい、みんなのお手本になるし、彼は周りをサポートすることもできる。若手の面倒見もいい。
ヘッドコーチ就任以来、LOのポジションは非常に苦戦していた。対戦相手は全員、身長が高く、体格の大きい選手ばかり。しかも(ワールドカップで)ピークを迎えて戦ってくる。そこでトンプソンのような選手が必要になる」と話した。
また、今回はLOグラント・ハッティング(神戸製鋼)、LOジェームス・ムーア(宗像サニックス)、FL(フランカー)ピーター・ラブスカフニ(クボタ)、NO8(ナンバーエイト)ラーボニ・ウォーレンボスアヤコ(宗像サニックス)といった外国人選手で、日本代表資格が取れるかまだ確定していない選手が選ばれている。
そのことに関して指揮官は、「資格があるかどうかよりもタイミングを見て選んだ。調査したところ、彼らが日本代表資格を取れる見込みありとのことで、現段階でメンバー入りした。
ワールドラグビーの回答はもうじき来ると思う。その回答を待つと日数が限られてきていて、大会間近になっているので、今の時点でメンバーに入れて鍛えます。『ファンデーション2』は重要な合宿になるので、しっかり参加してほしい気持ちで選びました」。
そして、立川の落選、CTB陣の選考に関して、ニュージーランド出身の指揮官は言葉を選びながらこう説明した。
「立川はリーダーの1人で、私が監督に就任したときは堀江と主将を務めた。選手から尊敬される、コーチから尊敬される選手を外すのは苦渋の決断でした。単純に他の選手の方がいいパフォーマンスしていると捉えている。
今シーズンはまだ松島はCTBでプレーしていないが、ワールドカップでCTBを経験した。他のCTBではトゥポウ、ラファエレ、中村もカバーできる。梶村も非常に気に入っている。
山中もサンウルブズで非常にいいパフォーマンスをしている。10、12、13番をカバーできる選手。そういう選手がワールドカップでは貴重な選手になる」。
PR(プロップ)、HO(フッカー)といったフロントローの選手を12人招集した理由は「スコットランド、アイルランド、サモア、ロシアはセットピースを間違いなく狙ってくる。
フィールドプレーで動けるだけでなく、相手がセットピースでかけてくるプレッシャーに耐えられる、通用する選手を育成したい。替えが効かない。多くの人数をここから鍛えていきたい」と合宿の中でスクラム、ラインアウトを強化していく方針だ。
現在42名で、3クールによって行われる宮崎合宿が終わると、PNCを戦うスコッド31名が選ばれる。そして、8月下旬、再び40名ほどで網走で合宿を敢行し、8月下旬に、ワールドカップ最終登録メンバーが発表される。
ただ、今回外れてしまったメンバーに関しては、同じポジションにケガ人が出れば招集される可能性もあるという。ジョセフHCは「ドアが閉まったわけではない」と語気を強めた。
続いて指揮官は「(網走合宿の前に)再度40人のスコッドを選ぶ。山田、立川はサンウルブズで試合があるので、しっかり力量をアピールしてチーム入りを目指す機会が設けられている。
スーパーラグビーをモニタリングしたい。3年間見て知っているので、彼らがその試合でどう活躍するか、しっかり検証したい。また、スーパーラグビー後にはトップリーグカップ戦がある。
その中でも、機会を与えられたときにアピールすることが大事。ケガ人は出てくると思うので、どの選手も、いつ呼ばれてもラグビー的にフィットしていること、準備していることが大事」と話した。
ただ、今回選ばれなかった選手は、ワールドカップ出場は他力本願となり、かなり厳しくなってしまったことは間違いないだろう。
いずれにせよ「ワールドカップで勝つチームを、その中でバランスを取った」とジョセフHCが言うように、今回の会見では60名程度の日本代表候補選手を、42名に絞ったに過ぎない。
ここから宮崎合宿、PNC、網走合宿まで、選手たちの代表争い、ポジション争いは続いていく。
◆宮崎合宿メンバー
※数字はキャップ数
PR 稲垣啓太(パナソニック) 25
PR 木津悠輔(トヨタ自動車) 0
PR 具 智元(ホンダ) 7
PR 中島イシレリ(神戸製鋼) 2
PR 三上正貴(東芝) 35
PR 山下裕史(神戸製鋼) 51
PR 山本幸輝(ヤマハ発動機) 6
PR ヴァル アサエリ愛(パナソニック) 5
HO 北出卓也(サントリー) 0
HO 坂手淳史(パナソニック) 13
HO 堀江翔太(パナソニック) 58
HO 堀越康介(サントリー) 2
LO アニセ サムエラ(キヤノン) 12
LO トンプソン ルーク(近鉄) 64
LO グラント・ハッティング(神戸製鋼) 0
LO ヴィンピー・ファンデルヴァルト(NTTドコモ) 9
LO ヘル ウヴェ(ヤマハ発動機) 11
LO ジェームス・ムーア(宗像サニックス) 0
FL ツイ ヘンドリック(サントリー) 43
FL 徳永祥尭(東芝) 10
FL 布巻峻介(パナソニック) 7
FL リーチ マイケル ◎(東芝) 59
FL ピーター・ラブスカフニ(クボタ) 0
FL/NO8 姫野和樹(トヨタ自動車) 9
NO8 ラーボニ・ウォーレンボスアヤコ(宗像サニックス) 0
NO8 アマナキ・レレイ・マフィ(NTTコミュニケーションズ) 22
SH 茂野海人(トヨタ自動車) 7
SH 田中史朗(キヤノン) 69
SH 流 大(サントリー) 15
SO 田村優(キヤノン) 54
SO/CTB 松田力也(パナソニック) 16
WTB 福岡堅樹(パナソニック) 30
WTB アタアタ・モエアキオラ(神戸製鋼) 3
WTB レメキ ロマノ ラヴァ(ホンダヒート) 8
CTB 梶村祐介(サントリー) 1
CTB ウィリアム・トゥポウ(コカ・コーラ) 6
CTB 中村亮土(サントリー) 16
CTB ラファエレ ティモシー(神戸製鋼) 14
FB/WTB 松島幸太朗(サントリー) 30
FB/WTB ヘンリー ジェイミー(トヨタ自動車) 1
FB 野口竜司(パナソニック) 13
FB 山中亮平(神戸製鋼) 12
◆宮崎合宿スケジュール
※シェラトングランデオーシャンリゾート(宮崎市)
・6月9日(日)~19日(水)
・6月23日(水)~7月3日(水)
・7月7日(日)~17日(水)
文/写真:斉藤健仁
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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