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■サンウルブズ(日本)×ライオンズ(南アフリカ)
■スーパーラグビー2019第6節/3月23日(土)/シンガポール・ナショナルスタジアム
■リーグ除外公表のサンウルブズが強敵ライオンズと激突。課題の規律面は克服ならず。
日本を代表して戦ってきたサンウルブズは、2020年をもってスーパーラグビー(SR)を去る。
SRの統括団体SANZAAR(サンザー)は、3月22日(金)、2020年限りでサンウルブズ(日本)をリーグから除外し、2021年から14チームによる総当たり戦にすると公表した。
公式発表はライオンズ戦の前日だったが、選手・スタッフには3月21日(木)に渡瀬裕司CEOから直接伝えられていたという。
パフォーマンスへの影響が懸念される状況だが、トニー・ブラウンHC(ヘッドコーチ)はライオンズ戦後、影響を否定するコメントを発表した。
「金曜のニュースは、今日の試合のパフォーマンスには全く影響はありませんでした。今週はライオンズとの試合に集中し、チームは非常にいい準備ができていました」
サンウルブズとしては目の前のゲームに集中し、今季2勝目という結果でプライド、存在価値を示したいところだった。
チームには今節より日本代表 RWCTS(ラグビーワールドカップ・トレーニングスコッド)の数名が、予定どおり沖縄キャンプから合流していた。
サンウルブズは31-34で逆転負けを喫した先週のレッズ(オーストラリア)戦から、先発6人(FW3人、BK3人)を変更したが、そのうちWTBに入ったセミシ・マシレワをのぞく5人がRWCTS組となった。
フォワードに入ったRWCTS組は、PR三上正貴、PR具智元、LOグラント・ハッティング。
そして先発バックスにはCTB立川理道、FB山中亮平が名を連ねた。
またリザーブにはこちらも合流組の田中史朗、山沢拓也がメンバー入りし、山沢はこの日後半途中出場でSRデビューを飾った。
サンウルブズとRWCTSとの連動性についてだが、FB山中は「やっていることはほとんど一緒です。すぐサンウルブズに溶け込んだというか、やり方は分かっているので、あまり違いはないです」と試合前に語った。
その言葉通り、年間通して気温30度前後の暑いシンガポールで、序盤のサンウルブズはスムースな攻撃で先制した。
狼軍団は開始早々、WTBゲラード・ファンデンヒーファーがビッグゲイン。
攻勢を強めると、前半7分、ボールを左右へ振りながら連続攻撃を続け、WTBマシレワから渡ればトライのラストパス。
しかしこのパスを相手14番シルヴィアン・マフザが手に当て、これが故意のノックオンによるトライセーブと判定されてシンビン(10分間の一時退出)に。サンウルブズにはペナルティトライが与えられ、7点を先取した。
サンウルブズは相手の強みであるスクラムに対しても奮闘した。
タイトファイブ(FW前5人)のうち3人(PR三上、PR具、LOハッティング)の合流組が今季初出場で、さらにはスタイルの違いもあった。
「代表とサンウルブズのスクラムは少し違いがあり、まだ慣れていないところもありました」(PR具)
万全ではない状況で、序盤3本のスクラムは劣勢気味となった。
しかし前半9分、自陣ゴール前で迎えたピンチのスクラムでは、低い姿勢でしっかり対抗した。
「スクラムに関しては、前半の最初に苦しみましたが、レフリーや一列目の選手とコミュニケーションを取ることで、前半の途中からいいスクラムが組めるようになっていきました」(HO坂手)
しかし誤算はディシプリン(規律)だった。
今季は反則数に苦しんでおり、第5節終了時で1試合の平均ペナルティ数は「13」と多い。イエローカードも4枚でリーグワーストタイだ。
2人の一時退場者を出して惜敗した第4節ブルーズ戦(20●28)など、反則数が少なければ、と悔やんだ試合は多い。
サンウルブズはスクラムでは比較的粘ったが、「ブレイクダウンまわり、オフサイド、規律の部分が疲れてくると守れなかった」(FB山中)。
ライオンズは前半13分、36分と連続トライを奪った。
どちらもサンウルブズが反則を犯し、精度の高いラインアウトから強力ラインアウトモールでHOマルコム・マークスがトライ、という展開だった。
そのままライオンズが7-12とリードして折り返す。
後半もサンウルブズは幸先の良いスタートだった。
この日もキック全成功だったサンウルブズのSOヘイデン・パーカーが、PG(ペナルティーゴール)で3点追加。10-12
しかしここから約20分間で失3連続トライ。
1本目はまたも反則から自陣へ下がり、モールこそ防いだものの、相手SHニック・グルームが間隙を突いてグラウンディング。
2本目もレイトタックルの反則から自陣へ後退。ここもモールはこらえたが、ショートサイドへ移動したSOエルトン・ヤンチースが押し込んで、リードは12点差(10-22)に。
3本目は攻守交代直後のカウンターから、CTBライオネル・マプーがスコアラーとなった。10-29
サンウルブズの反撃は後半23分、FW第1列が全員替わったこの日16本目のスクラムから。
敵陣ゴール前のマイボールスクラムという好機から、途中出場のアマナキ・レレイ・マフィが流石の突進でインゴール目前へ。
続けてNTTコムでチームメイトだったNO8ラーボニ・ウォーレンボスアヤコが突っ込み、後半最初のトライ。SOパーカーが難なく決めて29-17とした。
しかし試合巧者のライオンズは、後半29分にPG加点で32-17と突き放すと、同35分にはショートパントを捕球した途中出場のハチヴァ・ダイマニがトライ。
終了間際にNO8ウォーレンボスアヤコがこの日自身2トライ目を奪ったが、間に合わなかった。
最終スコアは24-37。
今季4勝目を挙げたライオンズは、南アフリカ・カンファレンス1位に浮上した。一方、今季5敗目を喫したサンウルブズは、オーストラリア・カファンレンスの最下位となった。
サンウルブズのブラウンHCは敗戦を振り返り、「スタートはよかったですが、ブレイクダウンでやられてしまいました」とコメント。
成功率71.4%(7本中5本成功)だったラインアウトについては、LOハッティングが「良いテンポ、ムーブはあったが、新しい選手が入ってきて(ムーブ等を)覚えなければならず、ミスが多かった」と語り、ラインアウトの連係不足を示唆した。
今季2勝目をファンに届けたいサンウルブズは、シンガポールから次戦の舞台、オーストラリアへ飛ぶ。
次戦の相手はワラターズ(オーストラリア)だ。
第6節で今季無敗だった2連覇王者・クルセイダーズを20-12で破る金星を挙げた強敵が、狼軍団の前に立ちはだかる。
「来週はワラターズと戦います。我々は残りのシーズンもしっかりと自分たちの考えているプランを実行して、そしてまた次の試合に集中していく事を繰り返していくだけです。私はこのチームが試合に勝てる、強いチームである事を信じています」(ブラウンHC)
少ない準備期間、長距離移動、流動的なメンバー…。
2016年のリーグ加入から4シーズン目、他チームより過酷な条件下ながら、通算7勝をもぎ取ってきたサンウルブズ。2019年も荒波の中を進んでいる。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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