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ラグビーワールドカップ(RWC)イヤーは、トップチームのすべての試合が本大会へとつながるサバイバルマッチとなる。2月2日、岐阜県の岐阜メモリアルセンター長良川競技場にて行われた「バローグループ presents 日仏ラグビーチャリティマッチ2019 ~FOR ALL 復興~」も、RWCの日本代表入りを目指す選手たちにとって重要な一戦だった。
来日したASMクレルモン・オーヴェルニュは、フランスのトップリーグであるTOP14で2位(試合時)。前日に行われたシックスネーションズのウェールズ代表戦に出場したフランス代表には6名を送り出していたが、来日メンバーも個々の能力は高かった。キャプテンを務めるLOポール・ジェドゥラジアックは、フランス代表として2017年11月の日本代表戦に出場した経験があった。その時は日本代表と引き分けている。「日本代表と戦った経験から、今回もどれほどタフな試合になるかが分かっていたので、良い準備ができました」。
7,585人の観衆が見守る中、午後2時5分のキックオフ。トップリーグ選抜は、いきなりFB山中亮平がディフェンスを突破し、ディフェンス面でも素早く前に出てプレッシャーをかけ、意識の高さを見せる。しかし、ASMクレルモン・オーヴェルニュのCTBジョージ・モアラ(ニュージーランド代表4キャップ)にディフェンスを崩され、開始5分で2トライを奪われた。トップリーグ選抜も14分、SO田村煕とCTB立川理道のループプレーからWTB尾崎晟也がトライし、10分にはPR木津悠輔が目を見張るスピードでタックルをかわしながらゴールラインを越えたが、ここはタックラーに阻まれグラウンディングできず。しかし、16分、自陣からパスをつないでFLボーク コリン雷神がトライし、12-14と差を詰めた。
残念ながら拮抗したのはここまで。28分にASMクレルモン・オーヴェルニュのNO8ペゼリ・ヤト(フィジー代表13キャップ)にトライされると次第に引き離された。ASMクレルモン・オーヴェルニュの攻撃は一人一人にスピードがあり、簡単なミスをしなかった。このあたりは、世界トップレベルのプロ選手たちの基礎プレーの確かさを再認識させられた。ブレイクダウン(ボール争奪局面)でも7度のターンオーバーに成功するなど、リアクションの素早さ、一つ一つのプレーの激しさでもトップリーグ選抜を苦しめた。圧力を受けたトップリーグ選抜は、相手のボールキャリアーに対してタックラーが一人で対する場面が多くなり、何度も外されていた。個々のタックル能力の差は明らかで、組織ディフェンスをしなければ強豪国のパワフルでスキルの高いランナーを止めることができないということを、改めて痛感させられるシーンが相次いだ。
トップリーグ選抜のデーブ・ディロンヘッドコーチは、「トップ14の上位にいるだけあって、ボールキャリーの能力の高い選手が多かった」と相手を称えた。また、この試合が「復興」を支援するチャリティマッチということもあり、「チャリティに少しでも貢献できたことを嬉しく思います」と、5トライを奪って観客を楽しませたことについては選手の奮闘を評価。厳しい言葉は発しなかった。
チームとしてまとまりを欠く状況で力を発揮できない選手もおり、選手選考という意味では評価の難しい試合になった。トップリーグ選抜には日本代表入りを目指すNDS(ナショナル・デベロップメント・スコッド)のメンバーが15名(先発11名)含まれており、どの選手がアピールしたかという視点で見ると、2トライをあげて、トップリーグ選抜側のマンオブザマッチに選出されたWTB尾崎晟也、PR木津悠輔が攻守に豊富に動き回り、非凡な能力をアピールしていたように見えた。
試合後、以下の選手たちがRWCTS(ラグビーワールドカップトレーニングスコッド)の合宿に追加招集されることが発表された。PR山本幸輝、HO北出卓也、HO堀越康介、FL中島イシレリ、SH日和佐篤、SO山沢拓也、CTB梶村祐介、CTBシオネ・テアウパ、FB山中亮平。山沢以外はトップリーグ選抜の選手たちだ。また、この試合でアグレッシブに動いていたFL松橋周平は、練習生としてサンウルブズのオーストラリア合宿に参加することになった。尾崎、木津、試合序盤に低いタックルを連発していたWTB野口竜司など、このメンバーから今後、チャンスをつかむ選手も出てきそうだが、サンウルブズ、RWCTS、NDSに選出されていない選手は、RWCに向かってアピールの場が少なく、大枠でメンバーは固まったということだろう。今後はサンウルブズの試合と、それと並行して行われるスーパーラグビーの若手チームとの練習試合などで日本代表のチーム作りが進められていくことになる。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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