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トヨタ トップリーグ初タイトル
1月19日(土)、東京・秩父宮ラグビー場では、今シーズンの日本ラグビーを締めくくる、トップリーグカップ総合順位決定トーナメントの決勝が行われた。
トヨタ自動車ヴェルブリッツとサントリーサンゴリアスが激突し、序盤からトライを取り合う展開となり、8200人の観客を大いに盛り上げた。
なお、この試合には9月に開幕するラグビーワールドカップ日本大会の名誉総裁を務められる秋篠宮殿下が、紀子さまとともに御臨席された。
給水係を務めたキャプテンSH流
カップ戦には原則として日本代表候補選手がプロテクトされ、出場しないこともあり、サントリーは控えも含めて、23人全員が日本人選手という布陣で臨み、ゲームキャプテンはPR(プロップ)垣永真之介を務めた。
沢木敬介監督は「若手をどう成長させるか考えて、成長させなければいけないメンバーをチョイスしたら、たまたま全員が日本人でした」と説明した。
一方のトヨタ自動車、キャプテンのLO(ロック)/FL(フランカー)姫野和樹ら日本代表候補選手は欠場したが、南アフリカ代表FB(フルバック)ジオ・アプロンがゲームキャプテン。
トヨタ自動車の姫野キャプテン
ベテランCTB(センター)イエーツ スティーブンと、突破力に長けたクリントン・スワート、トップリーグで新人賞を受賞したWTB(ウィング)岡田優輝など、主力選手中心でメンバーを組んだ。
FWに4人の外国人選手を先発させたトヨタ自動車は、「縦に走って相手の穴をこじ開けることが今日のテーマ」とSO(スタンド)樺島亮太が言う通り、セットプレーからしっかりと強いランナーが前に出てチャンスを作った。
4分にCTBイエーツ、6分にLOカール・ヴェグナーがトライを挙げて12-0とリードを広げる。
トライも挙げてトヨタを引っ張ったSO樺島
一方、アタッキングラグビーを信条とするサントリーも負けていない。SO田村煕がタクトを握り、果敢に攻撃を仕掛ける。
15分、スクラムを起点にCTB梶村祐介が抜け出し、最後はWTB成田秀平がトライを挙げて12-5。19分にSO田村がPG(ペナルティゴール)を決めて、12-8と追い上げる。
攻撃の手を緩めないサントリーは29分に、トヨタ自動車FL佐藤穰司にイエローカードが出て数的有利となると、ゴール前のモールから最後はHO(フッカー)北出卓也が押さえて、13-12と1点差に迫る。
数的不利だったトヨタ自動車もすぐに反撃。キックカウンターからボールを継続し、FW(フォワード)が前に出た後に、SO樺島が相手ディフェンスラインのギャップを突いて、インゴールを陥れて19-13。トヨタ自動車がリードして前半を折り返した。
トライを挙げるNO8ラウタイミ
後半、またも入りで主導権を握ったのはトヨタ自動車だった。FWの圧力で上回り、4分にLOジェイソン・ジェインキンスがトライ。
7分にはSH(スクラムハーフ)岩村昴太のボックスキックにプレッシャーをかけ、ボールを奪って一気に攻め込みNO8フェツアニ・ラウタイミがトライ。
さらに9分にもオフロードパスをつないで、FL佐藤が左中間に飛び込み、38-13と大きくリードを広げた。
2トライを挙げたサントリーWTB尾崎
もう逆転は難しいと思われが、円陣で「もうやるしかない!」と声を掛け合っていたサントリーは、ボールを継続して攻撃ラグビーを貫く。19分、21分に途中出場のWTB尾崎晟也がトライを挙げて38-27と11点差に追い上げる。
それでもトヨタ自動車は、自陣で相手の接点にプレッシャーをかけてターンオーバー。32分、この試合でゲームキャプテンを務めたFBアプロンがトライを挙げて、43-27として勝負を決めた。
後半37分、サントリーは途中出場のSO小野晃征が、相手のディフェンスラインの隙を突き、最後は相手をはね除けて自ら持ち込み43-34としたが、試合はそのままノーサイドを迎えた。
トライを挙げるサントリーSO小野
チャンスでしっかり得点に結びつけて、7トライを奪ったトヨタ自動車が、後半追い上げるサントリーを振り切りきり、43-34で勝利、初代トップリーグカップ王者に輝いた。
トヨタ自動車にとっては、トップリーグ創設以来初、1998年度の全国社会人大会以来の嬉しい戴冠となった。
試合後、トヨタ自動車フィフティーンは優勝カップを掲げて、ロッカールームでは、社歌とクイーンの「We Are The Champions」を歌って優勝を噛みしめた。
接点で圧力をかけるトヨタ
サントリーとしては、ボールをつないでアタックすればトライが取れていただけに、前後半の入りで計5トライ奪われたことが響いた。
優勝したトヨタ自動車のジェイク・ホワイト監督は、「本当に今日の勝利は嬉しく思っています。トヨタにとって素晴らしいことです」。
「決勝、準決勝でこういうプレーをすればするほど、勝ち方を理解して勝ちにつなげることができると思います。サントリーは本当に素晴らしいチームで、決勝の舞台にチームにふさわしいチームだった」と振り返った。
笑みを浮かべるトヨタのホワイト監督
また、トヨタ自動車にとって久しぶりのタイトル奪取の意味は?と聞かれて、ワールドカップ優勝経験もある南アフリカ出身の指揮官は「カップ戦のトロフィーを得たことは、このチームで非常に大きな意味があります」。
「パナソニック、サントリーはサンウルブズや日本代表、各国のテストマッチを戦い抜いた経験豊富な選手が多く、そういった選手は大試合のプレッシャーで戦う意義を理解しているが、トヨタではそういった選手が多くない」。
「(今回)ノックアウトトーナメントを戦い抜いて、勝ち取ることができた。まだ日本代表は少ないが、チームは強くなっていく」と手応えを感じている様子だった。
ジャパンラグビー トップリーグ18/19 ハイライト
カップ総合順位決定トーナメント決勝戦 サントリー vs. トヨタ自動車
今季はタイトルを獲得できなかったサントリー
ゲームキャプテンを務めたFBアプロンは「本当に今日はタフな試合でした。本当にサントリーは素晴らしいチームで、たくさんトロフィーを獲得しているのにふさわしい戦い方をしてきました」。
「トヨタはそういう相手に勝ち、自分もチームも会社にとっても嬉しいことだと思います。今日に限って、この勝利を喜びたい。チーム全体のスコッドが向上したと思うので来季につながる勝利だし、来季のトヨタも楽しみです」と笑顔を見せた。
一方、惜しくも敗れたサントリーの沢木監督は「うちのヒヨッコ軍団がライオンになりかけました。ただ、前半最初の3分、後半最初の3分、そこが負けて勝負つながった」。
前に出るサントリーPR垣永
「いい経験だったし、これきっかけにもっと成長できる選手がたくさんいると思います。ファイトの部分やサントリーのプライドを全員持って(戦えた)、いいゲームだった」と負けたものの、若手選手のパフォーマンスには満足していた。
ゲームキャプテンを務めたPR垣永は「最初の3分、後半最初の3分で落としたゲームです。そこが自分たちの弱さです。強い外国人に対して、じりじり前に出られてしまってトヨタさんのやりたいことやらしてしまった」。
「まだアタックが通用していたので、ボールキープしようとした。ボールキープできて追い詰めたが、(相手に)取られてしまった。来季は這い上がって、選手一丸頑張りたい」と前を向いた。
カップを掲げるアプロンゲームキャプテン
今季の日本ラグビーは、トップリーグカップでトヨタ自動車が初栄冠に輝き幕を閉じた。
トップリーグカップ最終順位
1位 トヨタ自動車ヴェルブリッツ
2位 サントリーサンゴリアス
3位 パナソニック ワイルドナイツ
4位 クボタスピアーズ
5位 東芝ブレイブルーパス
6位 神戸製鋼コベルコスティーラーズ
7位 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス
8位 キヤノンイーグルス
9位 リコーブラックラムズ
10位 NECグリーンロケッツ
11位 ヤマハ発動機ジュビロ
12位 豊田自動織機シャトルズ
13位 コカ・コーラレッドスパークス
14位 Honda HEAT
15位 宗像サニックスブルース
16位 日野レッドドルフィンズ
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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