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1月12日(土)、東京・秩父宮ラグビー場でラグビー大学選手権の決勝が行われた。
22年ぶり13度目の優勝を目指す、昨シーズンのファイナリストの明治大学と、1925年の創部以来、初優勝を狙う関西リーグ3連覇中の天理大学が激突した。
明治は関東大学ラグビー対抗戦で3位(4位扱い)だったため、立命館大学、東海大学、早稲田大学と破って決勝に進出した。
一方、天理はシードだったため大東文化大学、帝京大学を下してファイナルに駒を進めた。試合前は、少し雪が舞う曇天の中、2万人以上の観客を集めてキックオフされた試合は、最後までわからない死闘となった。
試合開始早々、「黒衣軍団」が得意の形から先制する。前半5分、優勢とみられていたスクラムでペナルティを誘い、ゴール前のモールからサインプレー。
ブラインドサイドをキャプテンHO(フッカー)島根一磨(4年)が突いて、左隅にトライを挙げて5点を先制する。
しかし、明治も負けていない。SH(スクラムハーフ)福田健太キャプテン(4年)が「明治のプライドを持って戦った。鍵はディフェンスだった」と振り返った通り、この試合、タックルや接点で動きが勝っていたのは紫紺のジャージだった。
明治は、相手の前に出るディフェンスに対してショートパスで攻略、FW(フォワード)、BK(バックス)一体となってボールを動かす。
7分、最後はFB(フルバック)山沢京平から右サイドのWTB(ウィング)山崎洋之(3年)へロングパスが通って、山崎が右隅にトライを挙げて5-5の同点に追いつく。
スクラムは劣勢だった明治は接点だけでなく、ラインアウトでもLO(ロック)片倉康瑛(2年)、FL(フランカー)井上遼(4年)を中心にプレッシャーをかけて相手のアタックをリズムに乗せない。
すると22分、明治はマイボールラインアウトを起点に見事な攻撃を見せる。モールを少し押し込み、SH福田とスイッチしたWTB高橋汰地がクロスでボールを受けて、そのままインゴールを陥れ、FB山沢もゴールを決めて12-5とする。
前半終了間際、天理大もボールを継続してゴール前まで攻め込み、ラインアウトのサインプレーからNO8(ナンバーエイト)ファウルマ・マキシ(4年)が抜け出す。
しかし、明治の粘り強いディフェンスの前に、インゴールにグラウンディングすることができず、そのまま明治が12-5で前半を折り返した。
後半、7点を追う天理大は敵陣でプレー時間を増やそうとキックを多用する。だが、なかなかチャンスが生まれない。逆に、明治が強固なディフェンスで、相手に有効なアタックをさせなかった。
16分、逆に明治はスクラムでペナルティを誘い、FB山沢がPG)ペナルティゴール)を決めて15-5。
さらに、21分、相手のラインアウトミスから敵陣奥深くに攻め込み、最後はHO武井日向(3年)が力強い突破からボールを押さえて、ゴールも決まり22-5とリードを広げる。
残り時間、点差を考えると攻めるしかなくなった天理大は自陣からも積極的にボールを展開する。
29分、ボールを受けたHO島根キャプテンが力強いランで右中間にトライを挙げて22-10。
さらに35分、再びHO島根キャプテンがゲインしチャンスメイク、最後はCTB(センター)シオサイア・フィフィタ(2年)が中央に押さえて、ゴールも決まり22-17と5点差に追い上げる。
残り4分、明治は相手のノックオンの後、FWを使ってボールをキープして時間を使おうとしたが、モールを止められてしまいアンプレアブル。天理大にワンチャンスが残った。
残り1分、逆転を狙う天理はスクラムからアタックをしかけるが、明治のディフェンスは勝負どころで集中力を切らさず、タックルで前に出て相手のノックオンを誘ってそのまま22-17でノーサイド。
その瞬間、紫紺のジャージーの選手たちは喜びを爆発させた。
スクラムで劣勢だったものの、接点、ラインアウトでプレッシャーをかけ続け、好機にしっかりトライを重ねた明治が、天理大を下して1996年度以来22年ぶり、13度目の大学王者に輝いた。
帝京を倒し、7年ぶりの決勝に進出した天理大の小松節夫監督は「いい準備をして臨んだが、ファイナルに勝つ何かが足らなかったのかなと思います」。
「去年、明治さんは悔しい思いをして、ここに勝ち上がって、我々は7年ぶりに来て、そこに差があったのかな。残念ですが、いい経験したと思うので、この悔しさを次の世代の学年が受け継いで、また日本一を目指して頑張っていきたい」と先を見据えた。
負けたものの、2トライを挙げて気を吐いたキャプテンHO島根は「最高の準備をして、挑戦する気持ちで戦ったが、最初のところで受けてしまったのが敗因の一つ」。
また、「明治の強いディフェンスに対して攻めきれなかった。決勝の舞台に立てたのはいい経験をさせてもらったので、下級生も多く残るので日本一を目指して頑張ってくれると思います」と前を向いた。
昨年度はヘッドコーチ、監督に就任して1年目で優勝した明治の田中澄憲監督は「22年ぶりというのは実感なくて、初優勝という気持ちです」。
「天理大は強くてタフで、スクラムも劣勢で、厳しい試合でしたが、明治の選手がそれ以上にタフになって、よく我慢して勝ってくれた」。
「大学選手権に入って厳しいレッスンを受けて、ここまで成長して天理に勝つことができました」としみじみと勝利の余韻に浸っていた。
1年間、チームを引っ張り続けたキャプテンSH福田は「去年は決勝まで行けたが、1点差で帝京に敗れてしまった。その悔しさが1年間、残ったままプレーしました」。
「対抗戦では慶應、早稲田にいい課題を教えていただき、そこでの負けがあったからチームがレベルアップできた。大学選手権に入ってからも成長できた。1年間積み上げてきたことをぶつけて、日本一になれて嬉しく思います」と破顔した。
昨年の決勝戦、帝京に1点差で負けて「エクシード」(EXCEED=去年の結果、チームを越える)をスローガンに、田中監督、福田キャプテンを先頭にチームを鍛えてきた。
その成果を、2年連続出場した決勝で発揮し、明治が今シーズン一番の試合を見せて、見事に大学王者に輝いた。
22年ぶりに優勝を果たした明治は、来シーズンは2連覇を目指すことになる。先発15人中10人が3年生以下と若いチームだっただけに、来シーズンも大学ラグビー界をリードするチームの一つになることは間違いない。
また、天理大は2度目の挑戦も惜しくも勝つことができず、再び、関西で力をつけて大学チャンピオンを目指す。
明治が対抗戦4位扱いから見事に下克上を果たし、13度目の優勝で復活を印象づけ、今シーズンの大学ラグビーシーンは幕を閉じた。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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