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1月7日(月)、新しくなった東大阪市花園ラグビー場で「花園」こと、全国高校ラグビー大会の決勝が行われ、優勝候補のAシード同士が激突。大阪桐蔭(大阪第1)が、桐蔭学園(神奈川)を26-24で下して初優勝を飾った。
今シーズン、「白い旋風」大阪桐蔭を引っ張ったのは、「チームの要のひとり」と綾部正史監督の信頼も厚かった、13番のCTB(センター)松山千大キャプテンだった。昨年度の決勝でも先発し、悔しさを知る選手の1人だった。
試合前には「つらくなったときは俺を見ろ。キャプテンとして前に出続ける!」といって仲間を鼓舞。その言葉通り、攻守に渡って身体を張り続け、チームの花園初優勝に大きく貢献した。
決勝戦後は1年間、一緒に戦った仲間に胴上げされた。そして目を赤くしながら肩を組んで、スタンドに応援に来たメンバー外の選手たちと同校の生徒たちと一緒に校歌を歌った。
「自分たちのラグビーで勝てて良かった。キャプテンとして、みんながすごく誇らしかった。ラグビー人生で最高の試合になりました!」と初優勝の味を噛みしめた。
昨年度、花園で準優勝だった大阪桐蔭の今シーズン、スローガンは「越」と掲げた。昨シーズンのチーム、結果を越えるという意味が込められた。
ただ、新チームになって、最初から何もかもが上手くいくはずはなかった。
昨シーズンの花園決勝に進出したチームは3年生が中心だった。先発で出場していた2年生は、CTB松山を筆頭に、HO(フッカー)中川魁、SO(スタンドオフ)/CTB(センター)高本幹也、WTB(ウィング)/FB(フルバック)伴井亮太、そして1年生のFL(フランカー)奥井章仁と計5人のみだった。
チームとして成熟していなかったにも関わらず、松山キャプテンは「新チームになって、去年のチームと実力差はまだまだあったのに、同じことを求めてしまい、突っ走ってしまった」と当時を振り返る。
それが結果として出てしまったのが、昨年4月の選抜大会の決勝だった。桐蔭学園にボールを継続されて7トライを献上し、26-46で大敗。
敗戦後、松山キャプテンは「相手の形を出させてしまった。ディフェンスの部分は1対1の場面で多くのゲインを許してしまったので、チームとして60分間守り続けるディフェンスを目指していきたい」。
そして、「アタック能力はあるが、力不足を感じました。もう1回、ここから再スタートしたい」と冬を見据えていた。
チームとして毎日、全員が朝400g、昼、夜700gの計1800gの白米を食べて、毎週、フィジカルトレーニングに特化した日を設定し、フィジカル強化を続けた。
週2回のアタック&ディフェンスでは、アタック、ディフェンスともに2人目の運動量を求めた。また1対1のタックル練習にもこだわった。
その成果はしっかりと出た。予選から花園の決勝戦まで、最も多く取られたトライは決勝戦の4つという強固なディフェンスを作り上げた。
松山キャプテンは「ディフェンスでどれだけ頑張るかをこだわってきた。桐蔭学園はブレイクダウンも強かったので、チャレンジしようと伝えて、最後にファイトできた」。
「ディフェンスでどれだけいくがキーだったので、後半は修正できました。最高の気持ちです。1年間、日本一になるためにやってきたので結果につながってよかった」と胸を張った。
気づいた人も多かったかもしれないが、松山キャプテンは、決勝も含めて花園大会中、濃紺ではなく、ひとりだけ、少し色あせたヘッドキャップをかぶって試合に出場していた。
大阪桐蔭は兄が同校ラグビー部に在籍していた選手が多いのが特徴で、松山キャプテンは3兄弟の末っ子。
昨シーズンはともにプレーした次兄・SH(スクラムハーフ)将輝(現・近畿大学1年)、長兄・WTB元太(現・大阪体育大学3年)も同校ラグビー部に在籍していた。
松山キャプテンは、練習では次兄のヘッドキャップを、試合では長兄のヘッドキャップをかぶり、2人の兄の思いも背負って決勝に臨んでいたというわけだ。
松山は「花園が始まる前から(兄2人と)日本一になって、嬉し涙を流すと約束していたので、それができた」と安堵した表情を見せた。
最後に、松山キャプテンは「明日から新しいチームになると思うが、後輩たちにはしっかり花園を目指して頑張ってほしい」と1・2年生にエールを送った。
昨シーズンは決勝で涙を呑んだが、松山はキャプテンとして仕事をまっとうし、自分たちの代で「白い旋風」大阪桐蔭の歴史を変えて、最高の形で高校3年間を締めくくった。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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