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第55回目のラグビー全国大学選手権は1月2日、東京・秩父宮ラグビー場で準決勝2試合が行われた。2試合目は9連覇中の帝京大学(関東対抗戦1位)が、天理大学(関西Aリーグ1位)のチャレンジを受けた。
対抗戦で8連覇し、前人未到の大学選手権10連覇を目指す王者・帝京は、大学選手権の初戦となった準々決勝も、前半はしっかりと接点で身体を当てて、後半は一気に5トライを挙げて45-0で流通経済大学を危なげなく退けた。
今年のチームは4年生のFWが中心だ。キャプテンLO(ロック)秋山大地(4年)、副キャプテンのNO8(ナンバーエイト)ブロディ・マクカランを筆頭に、PR(プロップ)岡本慎太郎、淺岡俊亮、HO(フッカー)呉季依典、LO今村陽良、FL(フランカー)菅原貴人らが接点で身体を張る。
BK(バックス)にはSH(スクラムハーフ)小畑健太郎(4年)、SO(スタンドオフ)北村将大(2年)、FB(フルバック)竹山晃暉(4年)がゲームコントロールし、WTB(ウィング)木村朋也、奥村翔(ともに2年)ら決定力がある選手が並ぶ。
一方、関西王者の天理は、準々決勝で難敵・大東文化大学と対戦。モールを軸に、LOアシペリ・モアラ(1年)、NO8ファウルア・マキシ(4年)がトライを挙げて局面ではスクラム、接点で相手を上回り勝利した。
FW(フォワード)は主将HO(フッカー)島根一磨を筆頭に、PR(プロップ)加藤滉紫(ともに4年)、PR小鍛治悠太(大産大付属)がスクラムを支える。LOは由良祥一(4年)、FL岡山仙治(3年)、佐藤慶(4年)らの運動量豊富な3人が並ぶ。
昨年からハーフ団を組んできた2年生のSH藤原忍、そして準々決勝で負傷して心配されたが先発したSO松永拓朗がチームの中心。
中盤では縦に強いCTBシオサイア・フィフィタ(2年)、CTB池永玄太郎(4年)の2人が存在感を見せ、バックスリーにもWTB中野豪(常翔学園)、久保直人(天理、ともに4年)、野田涼太(天理、2年)らスピードのあるランナーが揃った。
好ゲームが期待された両者の対戦は、前半早々から天理がゲームを支配する。
帝京は前半6分に司令塔SO北村がタックルを受けて脳しんとうの疑いあるために交替。SOにはWTB奥村翔(2年)が、急遽入ったこともあり、アタックにリズムが出ない。
「前半最初からフィジカルにいこう」(島根主将)と積極的にアタックを仕掛ける天理は、SH藤原、SO松永がボールを広く動かし、11分にはエースWTB久保直人(4年、天理)が右端にトライ。
「相手の竹山選手が見えて、ボールを持った時から勝負しようと思っていたのでそのまま行った」(久保)。
さらに19分、天理FW陣が自慢のスクラムを押し込み、帝京が故意に崩したということで、ペナルティトライの判定で12-0とリードした。
22分、CTBフィフィタが帝京ボールをインターセプトして、ゴール前に迫るものの、WTB木村が戻ってノックオンを誘い、失点を許さなかった。
ただ、帝京はアタックでは相手ゴール前でモールを組んだが、天理の粘り強いディフェンスを前に得点を挙げることができなかった。前半はそのまま天理が、12-0とリードして折り返した。
後半、帝京は控えSH末拓実(3年)を投入し、SOをSH小畑健太郎に任せるなど動いてきた。
その効果もあり、4分、FB竹山のグラバーキックをWTB木村が押さえてトライ。FB竹山が難しい角度のゴールを決めて、12-7と5点差に迫る。
ただ、天理の運動量は落ちることなく、スクラムでは相手を圧倒して、後半だけで4度のペナルティを誘うなどし、後半も自分たちのペースでゲームを運ぶことに成功。
13分には、ゴール前で、プレー中からモールを組んで、最後はCTBフィフィタが豪快に中央に飛び込んで19-7。
19分にはスクラムを起点にWTB久保が抜け出して、最後は日本代表2キャップも持つ、NO8マキシが中央にトライを挙げて26-7。
29分にはSO松永がPG(ペナルティゴール)を決めて、29-7とさらにリードを広げてほぼ勝負を決めた。
帝京も残り時間が少ない中で、トライを取ろうと攻める姿勢を貫いたが、最後も天理が守り切って29-7でノーサイドを迎えた。
天理が3度目の挑戦で帝京を破り、7年ぶり2度目の決勝進出を決めた。帝京は2009年度から続いていた連覇が途絶え、10連覇を達成することはできなかった。
天理の小松節夫監督は「本当にイーブンに最後まで戦い続けてくれた。前半風下できっちり、ディフェンスできて、点を取れたことで、いい勝負ができるな思った」。
「帝京は規律を取れたディフェンスを頑張るチームで、ずっとリスペクトしてやってきたので、勝つことができて嬉しい。優勝目指してやってきているので、決勝は一番いい試合をできるよう準備したい」と会心の勝利に喜びを見せた。
キャプテンのHO島根も「日本一になるために倒さなければいけない相手だったので倒せて嬉しい。ディフェンスは伝統的に積み上げてきたものがしっかり出せた」。
「ブレイクダウンにこだわると決めていたので、テンポを出して得点につながったし、最終的に勝利という結果になった。目標は日本一なのでそれに向けて全力でひたむきに行きたい」と胸を張った。
連覇が途絶えてしまった帝京の岩出雅之監督は「本当に天理の素晴らしいラグビーが敗因だと思います。我々の選手たちに、よくがんばったなと敬意を示したい」。
「ロッカールームで選手たちは泣いていたけど、今まで多くのチームの涙を見てきたので、われわれも涙して、しっかり、次に笑えるように頑張ろうと話をしました」。
「連覇が止まったことが悲しいものではなく、久しぶりに味わった本当の悔しさを大切にして、若いので挑戦する姿勢をより高めてほしいし、終わった結果は取り戻せないので、前に向いて進んでほしい」と選手たちを思いやった。
キャプテンのLO秋山は、「1年間準備してきたことを100%出そうと臨みました。自分たちがやるべきことを100%出し切ったが、結果は残念なものになりました」。
「天理の粘り強さが強いディフェンスを80分されたと思います。グラウンドに立てなかったメンバーも含めて、帝京全員で戦った結果がこの結果です。一緒に戦ってくれた仲間を誇りに思います」。
「今日の結果をしっかり受け止めて、1、2、3年生にしっかり来年にこの悔しさをつなげてもらいたい」と悔しさをにじませつつも、毅然とした表情を見せた。
王者・帝京を下した天理は1月12日、東京・秩父宮ラグビー場で行われる決勝で明治と対戦し、天理初の、そして関西勢としては1984年の同志社大学以来の大学王者を目指す。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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