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ラグビー コラム 2018年12月18日

一戦一戦の価値が重く、中身の濃い試合が続いた トップリーグ18/19総括

村上晃一ラグビーコラム by 村上 晃一
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ダン・カーター

強かった。決勝戦で8トライである。久しぶりの優勝を後押ししようと、神戸、大阪から駆けつけたファンですら戸惑ったという。神戸製鋼コベルコスティーラーズの18シーズンぶり10度目の日本選手権優勝、15シーズンぶり2度目のトップリーグ制覇は、55-5という大差で成し遂げられた。

MVPは、ダン・カーター。ベストフィフティーンには、山下裕史、トム・フランクリン、中島イシレリ、アンドリュー・エリス、アダム・アシュリークーパー、リチャード・バックマンの6名が選出された。ベストフィフティーンは、記者投票などによって決まるが、優勝決定後の投票であれば大半が神戸製鋼の選手だっただろう。個人的には、神戸製鋼のアタッキングラグビーを支えたFW前5人、特にLOトム・フランクリン、張硯煥(チャン・ソクファン)の献身的な仕事量を一番に称えたい。

決勝戦の直後、神戸製鋼のデーブ・ディロンヘッドコーチは「みんながチームメイトを思いやりながら戦っていた。会社の歴史を理解し、平尾誠二さん(故人)のことを思って戦った。チームを誇りに思います」とコメントした。

神戸製鋼コベルコスティーラーズ

18シーズンぶり10度目の日本選手権優勝、15シーズンぶり2度目のトップリーグ制覇を成し遂げた神戸製鋼

印象に残る言葉だった。総合順位決定トーナメントが始まる前、チームのアドバイザーを務める神戸製鋼OBの増保輝則さんに話を聞いたことがある。多くの人はダン・カーターの加入がチームを劇的に変えたと感じているようだが、増保さんは、ウェイン・スミス総監督の存在の大きさを語っていた。チームのカルチャーを作るところから再建を始めたからだ。会社の歴史を理解し、震災からいかに復興したかを学び、その延長線上に自分たちがラグビーをしていることを認識させた。決勝戦のフィールドに登場した23名の選手はグランドコートの下に会社の作業着を着用していた。ラグビー部OBの社員が集めてきたものだという。それもウェイン・スミス総監督のアイディアのようだ。

卓越したスキルを持った選手が揃っているだけでは勝てない。ハードなトレーニング、戦術・戦略の理解、チームメイト同士の信頼感、そして、感謝の気持ちである。それを1シーズンで選手に徹底、花開かせた点でスミス総監督以下のコーチ陣の手腕は高く評価されるべきだろう。

尾崎晟也

沢木敬介監督が「日本人選手を育てたい」と、ルーキーほか若い選手を積極的に起用した(写真は尾崎晟也)

一方、敗れたサントリーサンゴリアスも立派に戦ったシーズンだった。沢木敬介監督が「日本人選手を育てたい」と、外国人枠をフルに使わず、堀越康介、梶村祐介、尾崎晟也らのルーキーほか若い選手を積極的に起用し、接戦を潜り抜けてファイナリストとなった。日本代表に多くの選手を送り出し、主力選手には疲労も蓄積していただろう。連覇のあとの準優勝は立派な成績だ。「この負けでまた強くなれる」。沢木監督の言葉がラグビーワールドカップ2019以降のトップリーグに期待を抱かせてくれる。

マット・ギタウ、アンダーソン フレイザー

まだ1月にトップリーグカップ戦の順位決定トーナメントが残っているので、シーズンが終わっていないが、今季のトップリーグの優勝争い、順位争いを振り返れば、短期決戦だけに一戦一戦の価値が重く、中身の濃い試合が続いた。外国籍選手の特別枠(海外で代表経験のない選手)が「1」から「3」に増えたことで、海外出身者が半数を超えるチームもあった。ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリアのトップ選手が多いが、彼らは総じてディフェンス能力が高い。接戦が多くなった一つの要因だろう。

第3節(9月14日)で神戸製鋼がサントリーを36-20で破った試合は、ダン・カーターのトップリーグデビュー戦として印象深い。第6節(10月13日)、太田の地で無敗を誇っていたパナソニック ワイルドナイツがリコーブラックラムズに17-26で敗れた試合も衝撃的だった。立川理道キャプテン率いるクボタスピアーズは地力をつけ、トップリーグ総合順位決定トーナメントではサントリーを苦しめた(スコアは、26-28)。

めきめきと力をつけるトヨタ自動車ヴェルブリッツは、順位決定トーナメント1回戦で優勝候補の一角であるパナソニックを31-27で破った。しかし、準決勝は神戸製鋼に敗れ、3位決定戦では今季限りの退任を発表した清宮克幸監督のヤマハ発動機ジュビロに競り負けている。セットプレーを中心にしたヤマハスタイルは、堀川隆延ヘッドコーチに引き継がれる見込みだ。

下位グループでは、宗像サニックスブルース、コカ・コーラレッドスパークスの九州勢が振るわず、初昇格の日野レッドドルフィンズは初戦で宗像サニックスから初勝利をあげたが、その後は負けが続き入替戦に回ることになった。

岡田

WTBとして大活躍だった岡田優輝(トヨタ自動車)が新人賞を受賞

新人賞は、WTBとして大活躍だったトヨタ自動車の岡田優輝が受賞。最多トライゲッターは、HondaHEATのレメキ ロマノ ラヴァ(8トライ)、得点王は豊田自動織機シャトルズのサム・グリーン(68点)が受賞している。

トップリーグのレベルアップが日本代表の実力を押し上げているのは間違いない。2019年はラグビーワールドカップ優先の日程のため、トップリーグはカップ戦のみになるが、この一年を各チームがどう過ごすか。それが2020年以降の戦績につながる。じっくりとチームを作りなおす機会ととらえて活動してもらいたいと願う。

ジャパンラグビー トップリーグ2018-2019 最終順位

1 神戸製鋼コベルコスティーラーズ
2 サントリーサンゴリアス
3 ヤマハ発動機ジュビロ
4 トヨタ自動車ヴェルブリッツ
5 NTTコミュニケーションズシャイニングアークス
6 パナソニック ワイルドナイツ
7 クボタスピアーズ
8 リコーブラックラムズ
9 HondaHEAT
10 NECグリーンロケッツ
11 東芝ブレイブルーパス
12 キヤノンイーグルス
13 宗像サニックスブルース
14 日野レッドドルフィンズ
15 豊田自動織機シャトルズ
16 コカ・コーラレッドスパークス
村上晃一

村上 晃一

ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。

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