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「100周年の年に1つ歴史が刻めてよかった」。相良南海夫監督(平4政経卒=東京・早大学院)は、そう喜びを口にした。
早稲田大学にとっては、節目の年の関東大学対抗戦もこの日が最終戦。5勝1敗で並ぶ早大と明治大学が、互いに優勝を懸けて文字通り激突した。
驚異的なスクラムの強さを誇る明大に対して、規律面を徹底して相手ボールスクラムを組ませないよう立ち回った早大。
ここ数試合の課題であった入りの悪さも克服し、先制トライを挙げると、粘りのディフェンスで明大を寄せ付けず。終始先行したまま、31-27でノーサイドを迎え、帝京大学と同率で対抗戦優勝を決めた。
試合は開始直後から動いた。帝京大戦では入りに苦しみ、苦杯をなめた早大。しかしこの日はそれを全く感じさせなかった。
前半2分に右ゴール前でのラインアウトを成功させ、そのまま左に展開するとFB(フルバック)河瀬諒介(スポ1=大阪・東海大仰星)がインゴールに飛び込む。
理想形である敵陣深くでのラインアウトから先制トライを挙げ、チームに勢いを付けた。その後早大は1本、明大は2本のPG(ペナルティゴール)をそれぞれ決めて、10-6の場面。
前半30分、SO(スタンドオフ)岸岡智樹(教3=大阪・東海大仰星)がカウンターを仕掛けて、ステップで明大ディフェンスを突破すると、大外でサポートに付いていたNO8(ナンバーエイト)丸尾崇真(文構2=東京・早実)が合わせそのままトライ。
試合の主導権を握ったように見えた。しかし、早大はここから明大FW(フォワード)陣、別名『重戦車』の脅威を味わうことになる。
34分、ラインアウトでペナルティを取られると、明大ボールのファーストスクラムが組まれる。
「(明大は)ボールを入れてからの第二波が強かった」とLO(ロック)下川甲嗣(スポ2=福岡・修猷館)。練度の高いスクラムで押し込まれ、攻撃の起点をつくられてしまう。
そのままトライを許すと、その直後にも自陣で明大ボールのスクラムを組まれピンチに。それでも何とかターンオーバーし、17-13で試合を折り返した。
次こそ『重戦車』を止める――。そう意気込んで臨んだ後半戦。流れが変わったのは後半11分のことだった。前半の終盤同様にスクラムからじりじりと攻められた早大。
自陣22mライン直前の早大のペナルティに対しても、明大はスクラムを選んだ。インゴール手前でのスクラムという危機に追い込まれた、その時だ。
「スクラムを選択されて悔しい気持ちもあったので、そこでエネルギーがマックスになった」(プロップ鶴川達彦、文構4=神奈川・桐蔭学園中教校)と、早大のFW陣が奮起。
より低い位置でスクラムを組み、明大のコラプシングを誘発したのだ。帝京大戦までマイボールスクラムの成功率98%と、驚異的な強さを誇る『重戦車』を止めて見せた。
FW陣の健闘にBK(バックス)陣も勢い付く。直後に「外にスペースがあるのが見えていた」と、CTB(センター)中野将伍(スポ3=福岡・東筑)が相手のギャップを突いてディフェンスラインを豪快に突破しトライ。
その後も自陣深くから1人で相手陣まで駆けるビッグゲインでチャンスを演出し、その数分後にはまたもカットインからインゴールを叩き割るなど、獅子奮迅の立ち回りを見せた。
その後はBKのコミュニケーションミスなどによる2つの失トライで、あわや逆転という点差まで詰め寄られるが、粘りのディフェンスを発揮。
意地を見せる明大の16フェーズ目で丸尾崇がボールに絡み、ペナルティを奪うと31-27でノーサイド。6勝1敗で8年ぶりとなる対抗戦優勝を決め、選手たちは一斉に喜びを爆発させた。
「僕たちの本当の目標は『荒ぶる』なので、ここから一番のスタートを切らなくてはいけない」と、FL(フランカー)佐藤真吾主将(スポ4=東京・本郷)は試合後も緊張を緩めなかった。
確かに好機で規律を守り、相手の強みを発揮させない立ち回りはできたものの、終盤にディフェンスラインを簡単に突破されてしまったことは、早大にとっては懸念材料として残ることだろう。
勝って兜の緒を締めよ。対抗戦に優勝を果たしてなお、全国大学選手権制覇へ向けて気を緩めない早大。100周年という節目の年に10年ぶりの『荒ぶる』を歌い、新時代を築けるか。早大の真の挑戦が、今始まる。
文:坂巻晃乃介/写真:元田蒼、萩原大勝(早稲田スポーツ)
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