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10度目の挑戦で、歴史的初勝利をもぎ取った。
世界ランキング10位(11月22日時点)のフィジー代表が、11月24日、敵地フランスのスタッド・ドゥ・フランス(パリ)で、世界ランキング8位のフランス代表を21-14で撃破。フランス戦初勝利を挙げ、今秋のテストシリーズを2勝1敗とした。
快挙に大きく貢献したのは、セットプレーの安定、そして鉄壁だったディフェンスだろう。
メンバー23人中10人がフランスリーグ「TOP14」所属。4人が参戦2年目の豪州国内最高峰大会「NRC(ナショナル・ラグビー・チャンピオンシップ)」で優勝したフィジアン・ドゥルアのメンバー。
イングランドリーグ「プレミアシップ」所属選手もおり、世界を知るメンバーの身体能力、サイズは折り紙つき。ボールを持てばフランス相手にFLペセリ・ヤト、CTBセミ・ラドラドラらが、強力に前進した。
心配の種は、海外を拠点とする選手が多いことによる連係不足。しかし、フランス戦は今秋3戦目とあってか、マイボールスクラムも安定。ラインアウト・ディフェンスでもスティールを見せた。
献身的かつ現代的なフィジーFWは、確実にマイボールを供給し、連続攻撃に貢献した。一発狙いの強引なプレーをせずとも、強力ランナーを効率的に走らせれば安定的にゲインラインを獲る。
8万人収容のスタジアムは完全アウェー。日本の久保修平レフリーがアシスタントレフリーを務めた一戦で、フィジーは序盤から洗練されたムーブも披露していた。
一方のフランス代表はラインアウトモールに勝機を見出すが、序盤はハンドリングラーが続いてたびたび攻撃権を失った。
すると前半20分、敵陣ゴール前のラインアウトモールは崩されたが、CTBラドラドラが強烈に接点へ走り込み、防御をこじ開け先制トライ。
ラン能力にも長けたSOベン・ヴォラヴォラのコンバージョン成功で7点を奪った。
大声援を背にして負けられないフランスも前半24分、敵陣ラインアウトからモールを組んでトライ(ゴール成功)を返す。7-7
しかしフィジーも反撃。6分後、安定したスクラムから一次攻撃でライン突破。右スミのWTBトゥイソバが巧みにグラウンディング(ゴール失敗)。5点リード(12-7)とした。
この日のフランスは、セットプレーを含めたフォワード勝負で突破口を開こうと考えていたかもしれない。
しかしフィジーのディフェンスは鉄壁だった。時にはノックオンを誘う激しいタックル。防御ラインを後退させなかった。
フィジーはエリア外側のブレイクダウンで、ターンオーバーから一気にインゴールへ運んだ場面も。しかしここはビデオ判定の結果、オフサイドが認められノートライ。この日のフランスは、この幻のトライを含め、ビデオ判定で2度トライを免れた。
フランスは前半終了間際、相手ゴール前でスクラムトライを狙うが、フィジーFWが耐えきる。しかし最終的には前半44分にHOギレム・ギラド主将がモールから2トライ目。
2点リード(14-12)で後半を迎えたフランスだが、モール以外に効果的な攻撃が見当たらないほど、フィジーのディフェンスは強固。
逆にフィジーはSOヴォラヴォラが後半3分に逆転PGを決めると、後半17分にもショット成功で14-18とリードを広げる。
フランスはNO8ルイ・ピカモール、CTBマチュー・バスタローら世界的スターが再三突進するが、フィジーの堅守は続く。
フランスサポーターがいっそう暗澹たる気持ちになったのは、後半36分だろう。
この日の得点源だったラインアウトモールさえも防がれて、フィジーFWが雄叫びを上げたのだ。さらに直後のスクラムでもアングルの反則を取られ、得点チャンスを失った。
残り時間は約3分。相手ラインアウトがオーバーボールとなって攻撃に転じるが、こぼれ球を大きく蹴り返され、万事休す。
最後は後半ロスタイム、自陣ゴール前で犯したペナルティで、SOヴォラヴォラに3本目にPGを決められた。
最終スコアは14-21。フィジーのFLドミニコ・ウンガニブロトゥクラ主将は、試合後、興奮冷めやらぬ様子で「私たちは試合前から『歴史を創りたい』と願っていた。それができて嬉しく思う」と快挙を振り返った。
【フランス】2T2C
トライ(T):HOギラド(前半24分、前半44分)
コンバージョン(C):SHセラン(前半24分、前半45分)
ペナルティーゴール(PG):なし
【フィジー】2T1C3PG
トライ(T):CTBラドラドラ(前半19分)/WTBトゥイソバ(前半30分)
コンバージョン(C):SOヴォラヴォラ(前半20分)
ペナルティーゴール(PG):SOヴォラヴォラ(後半3分、17分、41分)
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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