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ラグビー コラム 2018年11月14日

主務・田中陽太郎、仲間とともに駆け抜けるラストシーズン。慶應義塾大学ラグビー部

ラグビーレポート by 慶應スポーツ新聞会
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慶大蹴球部にはこの男の存在が欠かせない

田中陽太郎(経4・慶應)主務の1日は長い。早朝5時30分には起床し、その15分後には部室へ。彼の1日の始まりだ。

午前中からたくさんの仕事に追われ、現在では自由時間も主務としての仕事のために費やすこともあるという。その内容は多岐にわたる。

例えば、選手の試合のタイムキープ、試合で忙しいシーズン中はお客様からのチケットの注文の処理をすることなどがあげられる。

また、田中主務は「部室の中にいるだけでは選手のことは分からない」と考え、最近では午後にはグラウンドに出て、選手の様子を見ることも始めた。そして、選手の練習が終わった後も、メールの確認などの作業を行う。

このように、たくさんの仕事をこなす田中主務であったが、ここまでできるのはたくさんの学生スタッフ陣はもちろん、選手、さらにはOBの支えがあったからだという。まさに、「慶應」というチームが一丸となって戦っている姿があった。

主務として、ここまで多くの仕事をこなす田中主務であるが、慶大ラグビー部には元々プレイヤーとして入部した。

そんな彼は、SO古田京(医4・慶應)主将や、LO辻雄康(文4・慶應)副主将らと同じ花園世代。当然、プレイヤーとして黒黄のジャージを着てプレイすることを夢見ていたに違いない。

しかし、彼は主務としてグラウンドの外で戦うことを決意した。そこまでに至る経緯にこそ、田中主務がどれほど選手たちからの信頼を集めているのかが表れている。

プレイヤーであった田中主務が、マネージャーになることが決まったのは、2年生の秋に同期の間で行われる投票だった。

「お前の顔を見てロッカールームを出て行きたい」。推薦の理由にはそのように書かれていたものもあったという。

しかし、当時はまだまだプレイヤーとして成長真っ只中。当然、すんなりプレイヤーを諦められるわけもなく、しばらくはプレイヤーを続けながら、マネージャーの仕事を行うという二足の草鞋を履いた。

「同期が活躍している試合が多くて、見ているだけというのは何もできないので歯痒い感じはあります」。今でもグラウンドに立ちたいという思いは拭いきれない。田中主務はその思いを率直に打ち明けた。

しかし、そのような思いを抱えながらも、選手を第一に考えられる田中主務だからこそ、同期からの厚い信頼を集めたのだろう。それが垣間見えたエピソードがある。

対抗戦での帝京大学戦。慶應義塾大学は絶対王者を追い詰めたが、あと一歩及ばず惜敗を喫した。その悔しさは計り知れない。

もちろん主務として、選手の間近にいた田中主務も同じくらい、いや、試合に出られない分、それ以上に悔しかったかもしれない。

しかし、田中主務は「選手が一番悔しい」と思い、1人悔しさを裏に隠して、試合後に両チームで開催されるファンクションの司会をしっかりとこなした。

「僕がいないとその選手たちが試合をできないくらいの位置にいると思っています。選手が第一だと考えているので」。

そう語る彼の口調からは、優しい笑顔の裏で「このチームの主務をできるのは俺しかいない」と言わんばかりの強い覚悟が見えた。

田中主務も共に戦う

いよいよラストイヤーを迎え、慶大ラグビー部としての生活も残りわずかとなった。最後に、主務になるという選択は良かったかを尋ねると、田中主務は、はっきりとした口調でこう答えた。

「良かったと思います。選ばれた当時は思っていませんでしたが、みんなに選んでもらって、すごく自分としても成長できたし、今のチームの主務としていれるのは僕かなという自負はあります」。

時には母親のように選手を優しく支え、時には父のようにチームに欠けているものを厳しく指摘する。まさに、今の慶大にとって彼の存在は、慶大蹴球部の縁の下の力持ちでありながら、大黒柱をも務める非常に大きな存在だ。

対抗戦も残すところ2試合となった。明治大学戦は素晴らしい逆転勝利を収めたものの、チームは依然として負けられない試合が続く。

「日本一」という19年ぶりの悲願達成へ。田中主務は最後までチームのために、愛する仲間たちと共にラストイヤーを駆け抜ける。

文:菊池輝/写真:田中壱規、萬代理人(慶應スポーツ)

◆慶應義塾大学 関東大学対抗戦 放送予定
・11月23日(祝)午後1:50 慶應義塾大学 vs. 早稲田大学
※J SPORTS 1 生中継&J SPORTSオンデマンドLIVE配信
・12月01日(土)午前11:20 青山学院大学 vs. 慶應義塾大学
※J SPORTS 1 生中継&J SPORTSオンデマンドLIVE配信

慶應スポーツ新聞会

慶應スポーツ新聞会

慶應義塾大学文化団体連盟所属の公認サークル。通称ケイスポ。全40ある体育会の取材から記事の執筆、年7回の新聞製作まで全て学生の手で行う塾内唯一のスポーツ新聞サークル。部員数約50名、35年の歴史を持つ。»慶應スポーツWebサイト

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