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10月27日(土)、来年のラグビーワールドカップ日本大会の決勝の地である横浜・日産スタジアムで、2015年イングランド大会王者の「オールブラックス」とニュージーランド代表と、準優勝だった「ワラビーズ」こと、オーストラリア代表のライバル同士の「ブレディスローカップ」が行われた。
両者の対戦は1931年から、当時のニュージーランド総督ブレディスロー卿にちなんだカップが勝者に贈られるようになり、現在の対抗戦がスタートした。
年間で、勝利数で上回ったチームが所持するカップは、現在オールブラックスが15年連続で保持している。日本で行われるのは2009年以来9年ぶりのこと。
今年も8月18日にシドニーで行われた第1戦をオールブラックスが38-13、オークランドでの8月25日の第2戦を40-12で2連勝し、すでにカップの保持は決まっている。
それでも、ライバル同士のプライドをかけた戦いであり、さらに来年のワールドカップを見据えて、互いに負けられない激戦となることが予想され、日本ラグビー協会主催試合としては2004年以降、最多となる4万6143人のファンが集った。
オールブラックスは久しぶりに代表復帰したCTB(センター)ソニー ビル・ウィリアムズが、50キャップ目となる試合となった。
この試合ではSH(スクラムハーフ)に試合前の踊り「ハカ」のコールリーダーも務めるSH(スクラムハーフ)TJペレナラが先発し、ダミアン・マッケンジーがFB(フルバック)に、ベン・スミスがWTB(ウィング)に入るという攻撃的な布陣で臨んだ。
一方のワラビーズはFBリース・ホッジがケガで代表を離脱したために、CTBサム・ケレヴィが招集された。そのため普段はFBを務めることが多いイズラエル・フォラウがアウトサイドCTBに入り、FBはデイン・ハイレットペティが入った。
両チームが国歌を斉唱した後、オールブラックスが「ハカ」の一つ「カパオバンゴ」の後、オールブラックスボールでキックオフされた。
序盤は、今年、最後のブレディスローカップで勝利したいワラビーズが積極的に仕掛ける。 開始早々にFL(フランカー)デーヴィッド・ポーコックのタックルからチャンスを作り、抜け出したFBロス・ハイレットペティが左隅に飛び込むが、オールブラックスのLOスコット・バレットが押し出しトライとはならなかった。
その後は、互いのディフェンスが相手を上回り、なかなか得点に結びつかない時間が続く。
前半10分を過ぎてようやく均衡が破れる。11分、オールブラックスは相手の反則でチャンスを得るとパスでボールを回し、モールからSHペレナラ、SOボーデン・バレット、LOスコット・バレット、CTBソニービル・ウィリアムズとつながる。
最後はFLリアム・スクワイアが左中間に走り込んでトライ。SOボーデン・バレットのゴールも決まりオールブラックスが7-0と先制する。
ワラビーズも21分にCTBカートリー・ビールのPG(ペナルティゴール)で3点を返し、7-3とするも、25分に今度はオールブラックスもSOボーデン・バレットのPGで3点を追加、10-3。
その後もオールブラックスも攻勢をかけるが、ワラビーズのディフェンスを前になかなか追加点をあげられなかった。
だが36分、ゴール前のスクラムからキャプテンのNO8(ナンバーエイト)キアラン・リードが、スクラムからそのままボールを持ち込んでトライ。SOボーデン・バレットのゴールも決まり、17-3とリードを広げる。
この試合、FWがしっかりと前に出てリズムを作っていたオーストラリアも反撃する。前半終了間際、ハイウェイ付近のラインアウトからボールをキープし、パスで少しずつ相手ゲインしていく。
39分、オーストラリアは左に大きく展開し、最後はライン際にいたWTBセファ・ナイヴァルが力強い突破で左隅に押さえてトライ。SOバーナード・フォーリーのゴールも決まり、17-10で前半を折り返した。
後半も最初にチャンスを作ったのは、7点差を追うワラビーズだった。モールからキャプテンのFLマイケル・フーパーが抜け出し、フェーズを重ねてゴールに迫っていく。
100キャップ目だったPRスコット・シオのパスを受けたLOロブ・シモンズがゴールポスト下に飛び込むが、オールブラックスも3人で身体を張って惜しくもグラウンディングが認められずノートライ。
それでもSOフォーリーのPGで3点を返して17-13と4点差に追い上げる。その後は、攻めるオールブラックス、守るワラビーズという展開が続き、13分、今度はオールブラックスがSOバレットのPGで追加点を挙げ、20-13と再び7点差に。
さらに19分、オールブラックスは中央左からのスクラムを起点に、SOバレット、WTBリエコ・イオアネ、再び左にサポートしていたSOバレットが走り切ってトライ。自身でゴールも決めて27-13と点差を広げる。
後半27分、途中出場のワラビーズHOトル・ラトゥが報復行為でシンビン(10分間の一時的退場)となり、オールブラックスが数的有利となる。そのチャンスを見逃さず、29分WTBベン・スミスのトライでさらに5点を追加し、32-13とニュージーランドが大きくリードする。
ワラビーズも36分にCTBフォラウのトライとSOフォーリーのゴールで32-20とするが、終了間際の38分、この試合のMOM(マン・オブ・ザ・マッチ)に選出されたWTBイオアネのトライでオールブラックスが37-20で勝利し、今年のブレディスローカップ3連勝で両者の対戦を終えた。
勝利したオールブラックスのスティーブ・ハンセンHC(ヘッドコーチ)は「いいランニングラグビーができたと思いますし、観客のみなさんにもいい試合を見ていただけたと思います」とコメント。
キャプテンのNO8リードは「これまでの(テストマッチの)1週間の中でプレーするのとは違う1週間を過ごしましたが、いい結果にすることができてよかった」と安堵の表情を見せた。
この試合でも出色の出来を見せたSOボーデン・バレットは「セットプレーを通してトライにつながったことがよかった。スクラムからのトライ、満足しています。計画通りだった。練習してきたのでものになった」とFWの尽力を称えた。
また、来年のワールドカップに向けて「選手として日本に来ることはすごく嬉しいし、日本のみなさまはすごくサポートしてくれるので、来年のワールドカップはワクワクします。雰囲気を味わうことはいい経験になりました。スタジアムに慣れる意味でもここでプレーできて良かった」と笑顔を見せた。
一時、4点差まで詰めたが、勝利できなかったワラビーズのマイケル・チェイカHCは「いろいろと努力をしていかないといけないところはあると思います。特に重要なタイミングでのターンオーバーが多かったと思いました」と試合を振り返った。
また、キャプテンFLフーパーは「ポジティブな部分もありましたが、ネガティブな部分もあり、残念な結果となった。オールブラックスにチャンスを与えすぎてしまった」と肩を落とした。
ワールドカップを1年後に控え、強化が進む両チーム。秋のテストマッチシリーズで白星発進となったオールブラックスは主力22名が欧州に発ち、新たに来日する19人を中心に構成するメンバーで11月3日(土)、東京・味の素スタジアムで日本代表と対戦する。
一方、初戦を落としたオーストラリアはそのままヨーロッパに出発して、11月10日(土)、カーディフでウェールズ代表と対戦する。いずれにせよ実りの多い秋とすることができるか。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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