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先週開幕したザ・ラグビーチャンピオンシップ。ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンの4カ国が南半球No.1を賭けて戦う。その注目選手を紹介するコラム。今回は優勝候補筆頭のニュージーランド「オールブラックス」だ。
◆オールブラックスを支えるリアルロック
サム・ホワイトロック(Sam Whitelock)
所属:クルセイダーズ
ポジション:LO(ロック)
身長/体重:202cm/116kg
生年月日:1988年10月12日
キャップ数:99
202cmの長身を生かし、ラインアウトやキックオフのボールキャッチなどの空中戦はもちろんのこと、激しいディフェンスも目を見張るリアルロックだ。大会前、オールブラックスのロックとしては史上最多の99キャップを数え、ザ・ラグビーチャンピオンシップの初戦で100キャップを達成した。
スポーツ万能で幼少期はバスケットボールもプレーしていたが、すぐにラグビーに専念する。2010年にクルセイダーズでスーパーラグビーデビューすると、オールブラックスにも選出。翌2011年の自国開催のワールドカップの日本代表戦で初出場を果たした。2015年ワールドカップも全試合にフル出場し、ワールドカップの2連覇に貢献した。
所属するクルセイダーズでは2017年からキャプテンに就任し、チームを9年ぶりの優勝に導き、スーパーラグビーの最優秀選手とニュージーランドの年間最優秀選手の2冠に輝いた。今年も引き続き好調をキープし、2連覇の原動力になる活躍を見せた。
今年6月のテストマッチシリーズでは、スティーブ・ハンセン ヘッドコーチからキャプテンに指名され、力強いタックルでチームを牽引し、対フランス代表3連勝に大きく貢献。今後もオールブラックスのFWを引っ張る1人として身体を張り続けるだろう。
祖父もオールブラックスで、4兄弟の三男。トップリーグのパナソニック ワイルドナイツでのプレー経験もある長男ジョージもオールブラックスのキャップを持ち、次男のアダムはクルセイダーズやオールブラックスセブンズでもプレー。
そして末弟のルークもオールブラックスキャップホルダーで、現在ハイランダーズに所属しているというラグビー一家だ。
◆接点で身体を張り続ける、帰ってきた闘将
キアラン・リード(ieran Read)
所属:クルセイダーズ
ポジション:NO8(ナンバーエイト)
身長/体重:193cm/110kg
生年月日:1985年10月26日
キャップ数:109
オールブラックスとして100キャップを超える経験豊富な選手で、2011年、2015年のワールドカップ2連覇に貢献。リーダーシップも評価されているのが、NO8(ナンバーエイト)キアラン・リードだ。
ボールキャリアとしての能力も高く、接点で最後まで身体を張り続け、空中戦にも強い。2013年には、その活躍が評価されてIRB(現ワールドラグビー)の年間最優秀選手に輝いた。
クリケットも同時に行っていたが、高校時代にラグビーに専念し、2007年にクルセイダーズ入り。そして、2008年にオールブラックス初キャップを獲得した。2016年にリッチー・マコウの後を継ぎ、所属のクルセイダーズだけでなく、ニュージーランド代表でも新キャプテンに任命された。
ただ、2017年秋のヨーロッパツアー途中で背中と足を痛め、長らく戦列から離れていたが、7月にスーパーラグビーのプレーオフで復帰し、ブランクを感じさせない活躍を見せ、クルセイダーズ2連覇に貢献。今回のザ・ラグビーチャンピオンシップでも、オールブラックスのキャプテンとして元気な姿を見せてくれるだろう。
クリケットでもニュージーランド代表になれるほどの腕前で、今でも時々趣味でプレーしているという。高校時代は文武両道で、2000人規模の高校でスポーツでも学業でもトップの成績だったという。
競馬ファンでもあり、クルセイダーズのチームメイトだったSHアンドリュー・エリス(神戸製鋼)と競走馬の共同オーナーになっている。ボランティア活動にも熱心で、クライストチャーチ地震以降は清掃活動などを積極的に行っていた。
◆オールブラックスの10番を背負う世界No.1の司令塔
ボーデン・バレット(Beauden Barrett)
所属:ハリケーンズ
ポジション:SO(スタンドオフ)
身長/体重:187cm/91kg
生年月日:1991年5月27日
キャップ数:64
オールブラックス不動の司令塔で、現在、世界ナンバーワンのSO(スタンドオフ)と言っても過言ではない、容姿端麗なスター選手である。2011年、2015年のワールドカップで、オールブラックス2連覇の立役者となったSOダン・カーターがチームを去った黒衣軍団の10番を背負ってチームをけん引している
所属するハリケーンズも2016年にスーパーラグビーの優勝に導き、2016、2017年と2年連続ワールドラグビー最優秀選手にも輝いた、今、一番波に乗っている司令塔と言えよう。キックとパスを交えた冷静なゲームコントロールだけでなく、ステップやスピードも武器で、隙があればランで相手ディフェンスを抜き去り、トライを取る決定力も高い攻撃的な選手だ。
2010年に国内リーグでデビューし、2011年からハリケーンズでプレー、2012年にはオールブラックス初キャップを獲得。2015年のワールドカップにも選出されWTB(ウィング)やFB(フルバック)として、6試合に出場して優勝に貢献。2016年はスーパーラグビーで223点を挙げて得点王にも選ばれた。
ザ・ラグビーチャンピオンシップ、そして2019年ワールドカップでもオールブラックスの中心として、ゲームをコントロールして、チームを勝利に導くはずだ。
趣味は海釣りと赤ワインを飲むこと。尊敬する選手はオールブラックスで活躍したCTB(センター)コンラッド・スミスだという。
5兄弟と3姉妹の次男で、一つ下の弟のLO(ロック)スコット(クルセイダーズ)、ハリケーンズで一緒にプレーする弟FB(フルバック)ジョーディーも、すでにオールブラックスデビューを果たしており、今大会も3人揃ってスコッド入りを果たした。2019年ワールドカップも3兄弟揃って日本で活躍が期待されている。
◆スターへと駆け上がった微笑みのプレースキッカー
ダミアン・マッケンジー(Damian McKenzie)
所属:チーフス
ポジション:SO(スタンドオフ)/FB(フルバック)
身長/体重:177cm/78kg
生年月日:1995年4月20日
キャップ数:15
今年のスーパーラグビーでSO(スタンドオフ)として活躍し、プレイヤーオブザシーズンに輝き、2019年のワールドカップでの活躍が期待されているのが、ダミアン・マッケンジーだ。チーフスでまず、FB(フルバック)としてブレイクし、一気にオールブラックスまで駆け上がった選手で、プレースキック前の微笑みがトレードマークだ。
177cmと身長は高くはないが、スピードと変幻自在のステップが武器で積極的なランでトライに絡み、プレースキックの精度も高い。2014年のU20ニュージーランド代表で存在感を示し、2015年は国内リーグのワイカトでプレーし、そのままチーフスでスーパーラグビーデビュー。マオリ・オールブラックスにも選出された。
そして2016年はチーフスで199得点、10トライ。ともにリーグ2位につけるなど大いに躍動。ついに同年10月、アルゼンチン代表戦でオールブラックスデビューを果たした。
さらに2017年はスーパーラグビーを運営する「SANZAAR」の最優秀選手に選出されるまでに成長し、オールブラックスでもコンスタントに試合に出場し続けて存在感を示した。そして、2018年のスーパーラグビーでは10番を背負ってプレーし、チーフスを引っ張り、出色のできを見せた。
オールブラックスではFBはもちろんのこと、SOとしても絶対的司令塔のボーデン・バレット、クルセイダーズを優勝に導いたSOリッチー・モウンガとライバル争いを演じることになるはずだ。
ニュージーランドのインバーカーギル出身で、高校はクライストチャーチで過ごした。兄マーティーもチーフスでプレーするバックスリーで、日本のサンウルブズでもプレーするロビー・ロビンソンは従兄弟だ。実家は農家で、もしラグビーをしていなかったら競走馬のトレーナーを目指していたという。
好きな選手はオールブラックスのチームメイトFBベン・スミスだという。まだ23歳の若者で「iPhoneがないと生きていけない」と若者らしい一面も。
◆世界で最も勢いに乗る若きトライゲッター
リエコ・イオアネ(Rieko Ioane)
所属:ブルーズ
ポジション:WTB(ウィング)
身長/体重:189cm/103kg
生年月日:1997年3月18日
キャップ数:16
2018年で21歳、今、世界で最も勢いに乗っている若きトライゲッター。それがオールブラックスのWTB(ウィング)リエコ・イオアネである。2016年11月にニュージーランド代表史上8番目の若さとなる19歳239日でデビューを飾った新鋭だ。
オールブラックスデビューの1年半前には17歳の若さでニュージーランド7人制ラグビー代表に選出され、ワールドシリーズのニュージーランドのウェリントン大会で2トライを挙げた。その勢いのまま、兄のアキラ(ブルーズ)とともに2016年のスーパーラグビーのブルーズでデビューを飾ると、瞬く間にスターダムにのし上がり、2016年のリオデジャネイロ五輪にも出場を果たした。
2017年も、2015年ワールドカップトライ王であるジュリアン・サヴェアに代わり、オールブラックスのほとんどの試合に先発出場して、1年間で10トライを挙げて世界にリエコの名を轟かせ、ワールドラグビーの最優秀選手にもノミネートされるほど大きなインパクトを残した。惜しくも最優秀選手賞の受賞はならなかったが、新人賞に輝いた。
今年のスーパーラグビーで10トライを挙げたように好調を維持している。このまま黒衣軍団のエースとして国際舞台でも輝き続けるだろう。
ラグビー選手にならなかったら歌手になりたかったというほど音楽好き。ジョーダンという名の犬を飼っている。
サモア代表でも活躍した父エディーは元日本のリコーでプレーした選手であり、エディーはリコーという会社名とお世話になった人の娘の名の両方にちなんで「リエコ」と名付けたという(なお、兄のアキラの名前も同様の理由で名付けられた)。
※キャップ数は2018年ザ・ラグビーチャンピオンシップ開催前のもの
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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