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8月31日(金曜)、ジャパンラグビー トップリーグ2018-2019が開幕する。8月20日、都内のホテルで全16チームの監督・ヘッドコーチ、キャプテンが一堂に介し、新シーズンへの意気込みなど語った。この様子は、J SPORTSのオンデマンドでも生中継された。
冒頭のあいさつでトップリーグの高島正之チェアマンは「我々の狙いは2019年にトップ8に入ること。その成果を見せるとき」と、来年のラグビーワールドカップ(RWC)に言及した。2003年に発足したリーグの目標の一つは「日本代表強化」だった。海外からの有力選手、コーチの加入もあり、試合内容は年々レベルアップ。日本代表の強化を後押ししてきたことは間違いない。サンウルブズのスーパーラグビーへの参戦によって強化が加速したのは事実だが、それを支える選手たちを生み出してきたのはトップリーグだ。
今季は来年のサンウルブズ、日本代表の日程に配慮して変則的な短期スケジュールになっている。すべてはRWCでの日本代表の躍進を願ってこそ。選手たちにとってはRWC出場に向けて最後のアピールの場でもあり、16度目のトップリーグは選手にとってもファンにとても、特別なシーズンになる。一つ試合、一つのプレーに重い意味があるわけだ。
プレスカンファレンスでは、開幕節のカードごとにキャプテンが抱負を述べた。最初に登場したのは、8月31日の午後7時30分より秩父宮ラグビー場で戦うキヤノンイーグルの嶋田直人、東芝ブレイブルーパスのリチャード・カフイの両キャプテンだった(キヤノンは庭井祐輔との共同キャプテン制)。互いに健闘を誓ったが、カフイの言葉がすべてのチームの思いを代弁していた。「今季はスタートが肝心。みんなが優勝を狙っている中で、最初の3試合が大事です」。
今季は参加16チームを2つのカンファレンスに分けて総当たり戦を行い、各カンファレンスの1位~4位、5位~8位がそれぞれ順位決定トーナメントに進む。各チーム7試合のカンファレンスの中で5位以下になれば優勝はない。開幕ダッシュが何より大事なのだ。優勝候補筆頭は、三連覇を狙うサントリーサンゴリアス。沢木敬介監督の課すハードなトレーニングでフィットネスレベルも上がり、昨季以上にボールを動かし続け、スペースを突くラグビーを磨く。6月17日には日本代表選手抜きでオーストラリアのブランビーズに勝利(28-26)。沢木監督は「試合のスタンダードを上げ、日本ラグビーを引っ張りたい」と意欲的だ。
これに続くのは選手層ではサントリーと遜色ないパナソニック ワイルドナイツ。8月17日には、オーストラリアで新設された「ワールドシリーズラグビー」に参加し、ウエスタンフォースと接戦を繰り広げた。今季はここに世界屈指のオープンサイドFLであるオールブラックスのマット・トッドが加入する。元南アフリカ代表監督のジェイク・ホワイト体制2年目のトヨタ自動車ヴェルブリッツも優勝候補の一角。姫野和樹キャプテンは日本代表、サンウルブズでさらに成長し、203cmのジェイソン・ジェンキンス、201cmのカール・ウェグナーら巨漢FWを揃え、フィジカルの強さで勝負する。そして、オールブラックスで112キャップのダン・カーターが加入した神戸製鋼コベルコスティーラーズも楽しみなチーム。サンウルブズのLOグラント・ハッティング、SOヘイデン・パーカー、元日本代表SH日和佐篤ら即戦力の補強で一気に頂点に駆け上がることができるのか。
清宮克幸監督率いるヤマハ発動機ジュビロは208cmのLOリッチー・アーノルド、南アフリカ代表のFLクワッガ・スミスを獲得してチーム力を上げている。加入3年目のCTB濱野大輔がキャプテンになったリコーブラックラムズ、カフイ、リーチ マイケルが引っ張る東芝ブレイブルーパス、ロブ・ペニーヘッドコーチ体制5年目のNTTコミュニケーションズシャイニングアークスあたりも上位争いに絡むだろう。
ただし、今季は外国人出場枠が拡大された影響が大きく出るだろう。海外の代表歴ある選手が2名、代表歴のない選手(特別枠)が3名、アジア枠1名が同時にプレーできるようになった。特別枠が昨年の1から3に増えたことで、全チームの実力差は詰まるはずだ。開幕から4週連続で試合があり、ここでいかに勝ち点を挙げるかが順位を上げるポイントになる。
ここまでリーグ戦について書いたが、今季はカップ戦も行われる。こちらは、日本代表活動期間中の11月にプール戦、翌1月に順位決定トーナメントが行われる。日本代表、サンウルブズの選手は不在になる。日本ラグビーフットボール協会トップリーグ部の太田治部長は、「若手の出場機会を増やし、2023年の日本代表も見据える」と話した。リーグ戦は、8月~10月にプール戦、12月に順位決定トーナメントが行われ、12月8日、15日の準決勝、3位決定戦、決勝は日本選手権を兼ねる。12月15日の決勝で勝ったものが今季のトップリーグ、日本選手権王者となる。
開幕節でもっとも注目されるのが、9月1日、豊田スタジアムで行われるトヨタ自動車ヴェルブリッツとサントリーサンゴリアスの一戦だ。王者がアウェイで迎える開幕戦となる。8月4日、北海道の網走で行われた練習試合では、サントリーが勝ったが、31-26の接戦だった。サントリーもメンバーを前後半で大きく入れ替えたし、トヨタ自動車は新加入の選手を軸に戦っていた。もう一度戦えば結果は分からない。
プレスカンファレンスでは、9月1日の対決に向け、トヨタ自動車の姫野キャプテンが「フィジカルを全面に出しながら、速いバックスを走らせたい」と言えば、帝京大学の先輩でもあるサントリーの流キャプテンは勝つためのキーポイントについて「姫野を止めること」と返した。姫野がトヨタ自動車のフィジカルの強さを象徴する選手だからだ。
各チームに即戦力のルーキーや外国人選手が加入し、開幕節からエンジン全開で戦う今季のトップリーグは、どこを切り取っても楽しめる。選手たちの全身全霊をかけた戦いを、ぜひ、多くの皆さんに観戦していただきたい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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