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南半球4か国による対抗戦「ザ・ラグビーチャンピオンシップ(TRC)」がついに開幕した。
前身大会「トライ・ネーションズ」から23回目を迎えた国別対抗戦は、8月18日(土)、ニュージーランド(NZ)代表“オールブラックス”と、オーストラリア(AUS)代表“ワラビーズ”の激突で幕を開けた。
下馬評有利は、大会通算成績で唯一全チームに勝ち越し、トライ・ネーションズ時代を含めて優勝15回を誇るオールブラックスだ。
しかしワラビーズは昨年10月、豪州ブリズベンで2年ぶりのNZ戦勝利(23-18)を手にしている。今回はシドニーのANZスタジアムが舞台であり、母国民の前で連勝を遂げたい。
TRCでは、参加4チームが、ホーム&アウェイで1チーム6試合を行う。
TRCでのオールブラックス戦は、80年以上の歴史を持つ定期戦「ブレディスローカップ」も兼ねている。今年は全3戦で、第3戦は10月27日、横浜市の日産スタジアムで行われる。
ワラビーズにとっては、2003年からオールブラックスが保持するブレディスローカップを奪い返すためにも、今回のホームゲームで白星先行にしたいところだった。
ヤコ・ペイパー主審の笛でキックオフされた試合は、ワラビーズが堅守から主導権を握った。
ジャッカルの名手、NO8ディヴィッド・ポーコックがラックでボールを奪取すれば、FLマイケル・フーパーは鋭い出足から的確なタックルを見舞う。
一方のオールブラックスも、LOブロディー・レタリック、FLサム・ケインらがラックでのボール奪取で見せ場を作った。
世界最高峰の攻防が続くなか、反則が増えていたオールブラックスは前半10分。
NO8キアラン・リードがラックで反則を犯し、ワラビーズはショット選択。ここでモンスターブーツのCTBリース・ホッジが決め、3点を先制。
前半21分には、「アイスマン」の異名を持つ司令塔バーナード・フォーリーがショット成功。ワラビーズのリードは6点となった。
前半30分過ぎには、15フェーズを超える黒衣軍の猛攻をしのいだワラビーズ。
勝負所でのハンドリングミスもあったオールブラックスは、前半36分、スクラムで圧倒しペナルティを獲得。
しかしSOボーデン・バリットがペナルティゴール(PG)を失敗し、得点を刻めず無得点のまま。
しかし世界最強の男たちは、洗練されたスキルと豊かな発想で、停滞ムードを一瞬で断ち切った。
前半終了間際の39分、FBベン・スミスが右サイドを突破。
オフロードパスがタッチライン際でWTBワイサケ・ナホロにつながり、さらに内返しのパスがNO8リード、最後はSHアーロン・スミスへつながった。
ゴールは失敗も、防御のわずかな亀裂からトライを生み出した。2点差(5-7)に追い詰め、前半を折り返した。
後半はオールブラックスの得意分野、攻守交代が起きた直後のアタックが光った。
後半2分だった。
ディフェンスでも見せ場をつくるWTBナホロが、ボールキャリアーからボールを奪取。攻守交代が起こると、自陣からボールを左展開。
CTBジャック・グッドヒューの代表初トライが生まれ、ゴール成功で12-6と逆転。
さらに後半12分、SOバリットが相手のノックオンを見逃さず、すかさず無人エリアへキック。サッカーのような足技でボールをドリブルし、捕球したSOバリットがそのまま右中間にグラウンディング。19-6。
スクラムでも劣勢だったワラビーズは、後半はラインアウトでもNZのディフェンスに苦しみ、この日のラインアウト獲得率は実に38.5%(13本中5本成功)。
畳みかけるオールブラックスは後半23分。
LOレタリックのボール奪取から自陣よりアタック開始。最後もライン参加したLOレタリックがパスダミーから抜け出し、ゴール成功で26-6。
直後にキックチェイスでFBイズラエル・フォラウが左足首を捻って途中退場。暗雲は色濃くなったが、後半27分、FLフーパーのインターセプトからチャンスメイク。
CTBカートリー・ビールの鋭いランから決定機が生まれ、途中出場のジャック・マドックスが代表初トライ。
ゴール成功で13点差(13-26)としたが、後半34、35分にWTBナホロに連続トライを許し、勝負はあった。
序盤こそワラビーズの堅守に苦しんだが、強固なスクラムと巧みなラインアウトディフェンス、そして、攻守交代時の集中力からトライを量産したオールブラックスが、2018年のTRC開幕戦を勝利で飾った。
両国が対決する第2節は、25日(土)に行われる。舞台はワラビーズが32年間黒衣軍からの勝利がないイーデンパークだ。
負傷したFBフォラウの遠征回避が早くも報じられており、ワラビーズに向かい風が吹いている。オールブラックスはこの第2節に勝てば、2003年から続くブレディスローの保持を確定させる。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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