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王座奪還を狙うパナソニック ワイルドナイツ(以下パナソニック)がトップリーグ開幕前にオーストラリアの強豪に挑む。
今年、スーパーラグビー再編により外されたチームの一つ、オーストラリアのウェスタン・フォース(以下フォース)が、鉄鋼業で財をなしたアンドリュー・フォレスト氏のサポートを受けて新設した国際大会が「ワールドシリーズラグビー」である。
5月のフィジー・ウォリアーズ戦を皮切りに始まり、フォースがオーストラリア、ニュージーランド、パシフィックアイランド、アジアなどの地域からチームを招待する形式で行われ、7試合目として8月17日(金)、オーストラリアのパースにあるnibスタジアムで日本のパナソニックがフォースと対戦する。この試合はJ SPORTS 1とJ SPORTSオンデマンドで午後7時20分から生中継される。
パナソニックの先発メンバーの中で、特に活躍に期待がかかるのが、サンウルブズやラグビー日本代表でもエースとしてトライを取り続けている〝スピードスター〟WTB福岡堅樹であろう。
6月、日本代表として出場したイタリア代表との第2テストマッチで負傷したが、リハビリと休養を兼ねて1ヶ月くらいオフをとった福岡は「(地元の)福岡にも2週間くらい戻りましたし、心身ともにリフレッシュできました! ケガもほぼ問題ありません」と8月からチームに本格的に合流した。
対戦するフォースは当然、スーパーラグビー経験のあるオーストラリア人中心だが、LO(ロック)には元ニュージーランド代表ジェレミー・スラッシュが先発し、ベンチのバックスには神戸製鋼でもプレーした元南アフリカ代表ピーター・グラント、サントリーなどプレーしていたトゥシ・ピシの弟であるサモア代表のジョージ・ピシも控える強豪だ。
パナソニックの先発メンバーを見ると福岡を筆頭に、PR(プロップ)稲垣啓太、FL(フランカー)布巻峻介、CTB(センター)松田力也、そしてフォースに在籍経験のあるWTB(ウィング)山田章仁、控えのPRクレイグ・ミラー、HO(フッカー)堀江翔太、SH(スクラムハーフ)田中史朗、FB(フルバック)野口竜司らサンウルブズや日本代表で春シーズンはパナソニックにいなかった選手たちが試合に出場する。
今シーズン、パナソニックで初出場となる福岡は「相手はスーパーラグビーレベルのチームなので、対戦できることが何よりも楽しみです! サンウルブズや代表でプレーしていた選手がしっかりとパフォーマンスして、チームとしての連携を上げていきたい」と意気込んでいる。
また「ワールドシリーズラグビー」では、見ているお客さんがより楽しめるようにとルールが少し変更されている。中でも一番大きい変更点は「パワートライ」だ。自陣22m内からボールを継続してトライを挙げた場合は通常5点のところ7点が入る(トライ後のゴールも含めれば9点となる)。実際に6月、ニュージーランドのクルセイダーズが「パワートライ」を決めた。
パナソニックを率いるロビー・ディーンズ監督は「(フォース戦に向けて)軽い修正をするだけ。ボールを継続したい」と言えば、福岡も「普段と違うルールでやることはなかなかないないですし、機会があれば(パワートライを)狙いたいですね! パナソニックは展開力があるチームなので継続してしっかりトライを取りたい」と試合を心待ちにしている。
◇パナソニック 対フォース戦先発予定メンバー
1 稲垣 啓太
2 坂手 淳史
3 平野 翔平
4 谷田部 洸太郎
5 ヒーナン ダニエル
6 ベン ガンター
7 布巻 峻介 ◎ゲームキャプテン
8 ジャック コーネルセン
9 内田 啓介
10 ベリック バーンズ
11 福岡 堅樹
12 松田 力也
13 笹倉 康誉
14 山田 章仁
15 森谷 圭介
控え
16 堀江 翔太
17 トム モロニー ※練習生
18 クレイグ ミラー
19 谷 昌樹
20 梶 伊織
21 田中 史朗
22 山沢 拓也
23 野口 竜司
そんなパナソニックだがジャージーの右胸に「100」とあるように、株式会社パナソニックが創業100周年を迎えるメモリアルイヤーにあたっており、今シーズンのトップリーグ制覇にかける思いはチームとして強い。
中心選手一人SO(スタンドオフ)ベリック・バーンズが「今年はパナソニックの創業100周年です。ライバルもたくさんいるがタイトルを取り戻したい」と言えば、福岡も「トップリーグに入る前から言われていましたし、絶対優勝したい!」と力強く語った。
昨年、サンウルブズでチーム内MVPに輝いた福岡は開幕から好調を維持して9トライを挙げる活躍を見せ、パナソニックも昨シーズン、レギュラーシーズンは13戦全勝と負けなしだった。
だが日本選手権を兼ねたプレーオフ(総合順位決定戦)ではやや失速してしまい、決勝でサントリーサンゴリアスに敗れて準優勝に終わってしまった。
「キーマンが負傷し不運も重なりましたが、サントリーのここ一番にかける強さを感じた。チームとしてリーグ戦よりもプレーオフの内容がよくなかったことは反省点ですし、個人としても納得できるパフォーマンスではなかった。プレーオフに100%の状態で試合ができるようにしたい」(福岡)。
ただ、今年のトップリーグもレッドカンファレンス、ホワイトカンファレンスと8チームに分かれてリーグ戦を行うため、優勝候補の一つであるパナソニックでも所属するホワイトカンファレンスで上位4チーム以内に入らなければ優勝の可能性はなくなってしまう。
もちろん福岡もそれは十分承知しており、「トップリーグは近年、中位チームも実力を上げてきている。最初から調子を上げておかないとやられてしまうので、今回のフォース戦から調子を上げていきたい」と先を見据えた。
実はトップリーグ3年目のシーズンを迎える福岡は、高校、大学と頂点に立ったことはなく、パナソニックに入った後も優勝できていないので、まだ日本一を経験していない。
「自分が入る前のシーズンまで勝っていたチームですし、自分としては1~2年目に苦渋を味わったので、今年は絶対に勝って終わりたいですし、日本一への思いもあります。必勝のシーズンです」(福岡)。
「今回の大会(ワールドシリーズラグビー)参加は我々の新章をスタートするにあたり、素晴らしい機会となる」とディーンズ監督と言うように、パナソニックとして王座奪還、そして福岡にとって悲願の日本一へ――フォース戦は、トップリーグを控えたパナソニック、そしてWTB福岡にとって開幕前の絶好の腕試しとなろう。
今年から始まった「ワールドシリーズラグビー」のフォース対パナソニックは8月17日(金)、JSPORTS 1とJ SPORTSオンデマンドで午後7時20分から生中継される。トップリーグ開幕前のパナソニックの仕上がり具合に注目しよう!
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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