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約5か月間にわたる過酷な闘いを制し、2年連続9回目の王座に就いたのはニュージーランド(NZ)のクルセイダーズだった。
8月4日(土)、NZ南島にあるAMIスタジアム(クライストチャーチ)で、2018年のスーパーラグビー決勝が行われた。
2連覇を狙うクルセイダーズと相対するのは、南アフリカから乗り込んできたライオンズ。3年連続のファイナル進出で、悲願の初制覇を目指した。
ライオンズにとって、クルセイダーズは乗り越えなければならない宿敵だ。
去年の決勝は地元ジョハネスバーグ(南アフリカ)で行われた。初優勝のお膳立ては整っていたが、クルセイダーズに17-25で敗戦。
かつての王者を9年ぶりの載冠に導いた新任のスコット・ロバートソンHC(ヘッドコーチ)は、敗戦に沈黙するエミレーツ・エアライン・パークのピッチ上で、歓喜のブレイクダンスを披露した。
はたして3度目の正直は成るのか。
ライオンズは、ワラターズ(オーストラリア)を44-26で撃破した準決勝から、先発を2人変更。FLカイル・ブリンク、WTBコートナル・スコーサンをスターターに入れた。
ホームのクルセイダーズは、NZの強敵ハリケーンズを30-12で破った準決勝から、先発を1名変更。ヘイデン・ベドウェル=カーティスがFLに入った。
先発15人中9人(FW6人、BK3人)が、のちに発表された南半球4か国対抗戦「ザ・ラグビーチャンピオンシップ」のオールブラックスメンバー。
重厚な布陣のクルセイダーズは、まずラインアウトのディフェンスで圧倒した。
ライオンズのWTBルアン・コンブリンクにビッグゲインを許すなどゴールラインを背負うも、クルセイダーズは堅陣を敷き、インゴールを奪われない。
前半10分、得点源であるラインアウトモールでトライを狙うライオンズ。しかしクルセイダーズは逆に押し込んだ末に、ターンオーバー。
ボールを保持して攻め入りながら、得意のモールがまったく通じず。ライオンズは序盤にして苦境に立たされ始めた。
両者がペナルティーゴール(PG)で3点ずつ追加して、迎えた前半18分だった。
クルセイダーズは左マイボールラインアウトから、オープン方向へ階段状にテンポ良くゲイン。
最後は右スミでWTBセタ・タマニヴァルがトライ(ゴール)。スコアは10-3となった。
ディフェンスからライオンズの計画を崩したクルセイダーズ。
PG加点で13-3とすると、前半33分、ハイパントをキャッチしたSOリッチー・モウンガが、得意のランで突破。
FBデイヴィッド・ハヴィリのトライにつなげ、20-3とリードを広げた。
ラインアウトモールを再三にわたり崩されたライオンズは、相手のネックロールによるルペナルティで、PG加点をするのがやっと。前半を14点(6-20)のビハインドで折り返した。
後半に入り、さらにショット成功で3点を失ったライオンズ。
同じく敵陣でペナルティを獲得するが、17点差(6-23)を詰めるべく、左ゴール前ラインアウトへ。
モールで押し込む正攻法を避けたライオンズだが、SOエルトン・ヤンチースの片腕一本のグラウンディングはトライラインに届かず。
直後に選択したスクラムでも、逆にペナルティを取られ、得点機にスコアすることができない。
手詰まり感が漂うなか、後半11分。
クルセイダーズのFLマット・トッドのタックルを解いて、ライオンズのFLブリンクが先発起用に越える突進。そのままインゴールへ突き抜け、10点差(13-23)に詰める。
このまま勢いに乗りたいライオンズ。
しかしボールを積極的に保持するクルセイダーズは後半22分。
FLトッドが、タックルミスを挽回する突進&オフロードパス。SHミッチェル・ドラモンドのトライ(ゴール)が生まれ、スコアは30-12に。
このまま大勢は変わらないと思われた後半26分。
ゴール前のディフェンスでCTBライアン・クロッティがシンビン(10分間の一時退場)となり、ライオンズに攻勢のチャンス。
直後に南アフリカ代表の至宝、HOマルコム・マークスがさすがの突進力で左中間に押さえ(ゴール失敗)、スコアは12点差(18-30)。
しかしこの日、たびたびクイックスローインで乱れた守備網を突いていたクルセイダーズは、後半30分。
クイックスローインから今季15トライのWTBジョージ・ブリッジがビッグゲイン。ラックを経由して最後はLOスコット・バリットが中央に押さえた。
ライオンズは残り4分でオブストラクションの反則によりボールを失い、勝負アリ。ラインアウトモールを完璧に封じ込まれ、その裏のサインプレーを試みるも得点はならず。
ボール支配率は全体を通してライオンズの方が上回っていたが(56%)、クルセイダーズが堅守からペースを握り、高精度な各種スキルで生まれたチャンスをものにした。
スーパーラグビー2018決勝のスコアは、37-18。
クルセイダーズが本拠地で連覇を果たし、ロバートソンHCはホームファンの拍手のなか、円陣の中心でブレイクダンスを披露することができた。
クルセイダーズは2連覇を達成。かつてスーパーラグビーに君臨していた王者は、非の打ち所のないような完成度をもって完全に復活した。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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