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◆クルセイダーズ vs. ハリケーンズ
スーパーラグビーもいよいよ佳境を迎えており、7月28日(土)、プレーオフ準決勝の2試合が行われた。
第1試合は、ニュージーランドカンファレンス1位&全体でも1位でプレーオフに進出した、昨年の王者クルセイダーズと、同カンファレンス2位&全体4位で、一昨年度の覇者ハリケーンズのニュージーランド勢同士の対戦となった。
クルセイダーズは、第4節、第5節でハリケーンズ、ハイランダーズに連敗を喫したが、それ以降12連勝と圧倒的な強さを見せつけてプレーオフに進出。
先週、7月21日に行われたシャークス(南アフリカ)との準々決勝でも、5トライを挙げ、40-10と快勝しセミファイナルに名乗りを上げた。
対するハリケーンズは、シーズンの開幕戦でブルズ(南アフリカ)に19-21と惜敗したが、その後は順調に白星を積み重ねていった。終盤5試合は1勝4敗と、敵地での弱さを露呈したが、それでも11勝5敗でプレーオフ進出。
7月20日にホームで行われた、同じニュージーランド勢のチーフスとの準々決勝では、先制するも終盤相手に追い上げられる展開となったが、32-31と辛くも1点差で逃げ切り準決勝に駒を進めた。
クルセイダーズの先発メンバーは準々決勝から1名のみの変更で、ケガから復帰したPR(プロップ)のジョー・ムーディが1番に入った。
LO(ロック)はキャプテンのサム・ホワイトロック、スコット・バレットがコンビを組み、PRオーウェン・フランクス、NO8(ナンバーエイト)キアラン・リード、CTB(センター)ライアン・クロッティら経験あるオールブラックスが名を連ねた。
ハリケーンズは準々決勝とはメンバー変更はせず、クルセイダーズのLOスコットの兄弟で、司令塔のSO(スタンドオフ)ボーデン・バレットと、その弟でCTBジョーディ、FB(フルバック)ネヘ・ミルナー=スカッダーと、こちらもオールブラックスが並んだ。
FL(フランカー)アーディ・サヴェアが、リザーブで復帰する可能性も報道されていたが、結局はメンバー入りしなかった。
クライストチャーチのAMIスタジアムでキックオフされた試合は、序盤からホームのクルセイダーズが積極的に攻めて敵陣でゲームを進めるが、ハリケーンズもディフェンスでプレッシャーをかける展開となる。
ゲームが動いたのは15分。クルセイダーズがラインアウトからボールをつなぎ、CTBジャック・グッドヒューが抜け出しゴール前にチャンスを作り、最後はSOリッチー・モウンガがステップで持ち込み中央にトライ。モウンガはゴールも決めて、7-0とクルセイダーズが先制する。
一方のハリケーンズもすぐに反撃。19分にWTB(ウィング)のジュリアン・サヴェアのトライとSOバレットのコンヴァージョンで、7-7の同点に追い付く。
しかし、その後はクルセイダーズペースで試合は続き、28分、相手の反則から敵陣の奥深くでチャンスを得て、ラインアウトをキープした後は、FWが突破しゴール前まで攻め込んでいく。
最後はSH(スクラムハーフ)ブリン・ホールがWTBジョージ・ブリッジに飛ばしパス。ブリッジが15トライ目でトライランキング首位に並ぶトライを決め再び12-7と勝ち越しに成功。
さらにクルセイダーズは前半終了間際の36分、39分にもSOモウンガのPGで追加点を挙げ、18-7とリードして前半を折り返した。
後半、先に得点を取って追い上げたいハリケーンズだったが、4分、FBミルナー=スカッダーが高く上げたキックはミスキックとなり、クルセイダーのカウンターアタックとなってしまう。
CTBジャック・グッドヒューが右サイドを走って大きくゲインし、最後はFBデイヴィッド・ハヴィリに渡ってトライ。ゴールも決まり、25-7と大きくリードすると、ゲームの流れは完全にホームチームに傾いていく。
29分にはブレイクダウンのターンオーバーを起点に、連続攻撃で敵陣深くまで切り込んでいき、SOモウンガのキックパスを、後半途中から入ったWTBブライドン・エノールがインゴールで押さえてトライ、30-7とし勝利を決定付けた。
ハリケーンズは試合終了間際に、WTBベン・ラムが16個目のトライを挙げたが反撃もここまで。結局、30-12でノーサイドを迎えて、クルセイダーズが連覇に王手をかけた。
クルセイダーズのキャプテン、LOホワイトロックは、「自分たちの持ち味であるディフェンスがよく生かされた試合だった」と満足げに語った。
一方、この試合でチームを去るハリケーンズのクリス・ボイドHc(ヘッドコーチ)とキャプテンのブラッド・シールズは「非常に厳しい夜になってしまった。もう一つ先まで進みたかった」と肩を落とした。
◆ライオンズ vs. ワラターズ
準決勝の第2試合は、南アフリカカンファレンス首位&全体2位のライオンズと、オーストラリアカンファレンス首位&全体3位のワラターズの対戦が、ライオンズのホームである、ヨハネスブルクのエリス・パークで行われた。
昨年まで2年連続で準優勝のライオンズは、今シーズンはアウェイでなかなか勝ち星に恵まれず、9勝7敗だったが、それでもプレーオフの切符を手にして、準々決勝ではホームでジャガーズ(アルゼンチン)を40-23で下して準決勝に進出した。
対するワラターズは南アフリカや、ニュージーランドのチームには苦戦したが、同じオーストラリアカンファレンスのライバルには勝利し、9勝1分6敗でプレーオフに進出。
先週、ホームで行われたハイランダーズ(ニュージーランド)との準々決勝は、先制されたものの、後半に3トライを挙げて逆転し、30-23で準決勝に勝ち上がった。
ライオンズはキャプテンのNO8ウォーレン・ホワイトリーを中心に、ケガから復帰したHO(フッカー)マルコム・マークス、SOエルトン・ヤンチース、WTBアフィエ・ディアンティら、スプリングボクスの主力選手を中心に先発メンバーを構成した。
ワラターズのダリル・ギブソンHCは、「フィジカルな戦いになる」ことを想定して、HOを準々決勝のダミアン・フィッツパトリックから、トール・ラトゥに入れ替えた。
それ以外は、ケガのマイケル・フーパーに代わってキャプテンを務めるSOバーナード・フォーリーを筆頭に、LOロブ・シモンズ、WTBタンゲレ・ナイヤラヴォロ、CTBカートリー・ビール、FBイズラエル・フォラウとこちらもワラビーズ経験者を中心に臨んだ。
4年ぶりの優勝を狙うワラターズは、アウェイの戦いながら序盤からゲームの主導権を握る。試合開始早々、敵陣へパスでボールをつないで連続攻撃を繰り返す。
CTBビールからハンドリングミスなくパスをまわすと、最後はFLネド・ハニガンが左中間にボールを持ち込んでトライ。SOフォーリーのゴールも決まり、7-0と先制した。
さらに8分、ワラターズはスクラムから突破力に長けたWTBナイヤラヴォロが自陣から50メートルを走り、大きくゲインすると、ゴール前まで一気に迫り、FBフォラウが中央にトライ。ゴールも決めて、14-0とリードを広げた。
しかし、その後は徐々にライオンズが調子を挙げてくる。21分、ライオンズはFWとBKが一体となって攻撃し、最後はスーパーラグビーのシーズン後、ヤマハ発動機ジュビロに加入する、FLクワッガ・スミスがゴールに持ち込んでトライ。
5点を返してライオンズが、5-14と追い上げると、続く26分、カウンターからWTBディアンティがチップキックし、自分でキャッチしてそのままトライ。SOヤンチースのゴールも入り、12-14とその差を縮めていく。
35分には、ラインアウトからドライビングモールで押し込み、最後はHOマークスが飛び込んでトライ。ゴールも決まり、19-14とついにライオンズが逆転に成功する。
だが、すぐにワラターズも意地を見せて39分、ラインアウトからのサインプレーが決まって、PRトム・ロバートソンが走り抜けてトライ。19-19と同点で前半を折り返した。
後半に入ると拮抗した状況が続く。15分、ライオンズのSOヤンチースがPGを決めて、22-19となりゲームが動く。18分、後半から入ったワラターズのHOフィッツパトリックがシンビン(10分間の一時的退場)となり、ライオンズは数的有利となる。
そのチャンスをライオンズは見逃さず、18分、ラインアウトモールで再びHOマークスがトライを追加し、27-19となる。
さらにホームチームの勢いは止まらず、23分にはFLスミスがギャップを突いて走り切って、この日2本目のトライを上げて、34-19とリードを広げる。さらに33分にSOヤンチースのPGで37-19と引き離す。
ワラターズも必死の反撃を見せて、36分にSHジェイク・ゴードンのトライで、37-26と9点差まで迫った。その後もワラターズが自陣から積極的にアタックを仕掛けたがパスが乱れて、ライオンズがターンオーバー。
SOヤンチースのキックパスからWTBコートナル・スコーサンがトライを挙げてだめ押しに成功。終わってみれば6トライを挙げたライオンズが、44-26で3年連続のファイナル進出を決めた。
就任1年目で決勝進出を果たしたスイス・デブルーインHCは「決勝へ進んでも戦うのは選手たちなので、彼ら自身がモチベーションを上げていくしかない。我々はチームとしてやるべきことにフォーカスするだけ」と冷静に先を見据えた。
一方、敗れたワラターズのキャプテン、SOフォーリーは、「結果が伴わなくて残念だったが、チームを誇りに思う」と前を向いた。
ニュージーランドのクルセイダーズと南アフリカのライオンズと2年連続で同じカードとなった決勝戦は、互いにセットプレーが得意で、しかもアタック能力の高いため、見ているラグビーファンを魅了する熱戦になることは間違いなし。
スーパーラグビーの決勝は8月4日(土)にクルセイダーズのホーム、クライストチャーチのAMIスタジアムでキックオフされる。クルセイダーズの2連覇なるか、それともライオンズが3度目の正直で初の戴冠となるか。
ラグビーワールドカップを翌年に控え、世界中のラグビーファンの耳目を集める一戦は8月4日(土)午後4:25から、J SPORTS 1で生中継、J SPORTSオンデマンドでLIVE配信される。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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