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2月に開幕したスーパーラグビーも、レギュラーシーズンの最終節を迎えた。7月13日(金)、サンウルブズはオーストラリアのブリスベン・サンコープスタジアムで、同じオーストラリアカンファレンス所属のレッズと対戦した。
前節までで今季のカンファレンス最下位と、全体の最下位は決まってしまったサンウルブズにとっては、今シーズンの最後の試合でアウェイでの初勝利、そしてシーズン4勝目を目指した。
最終節は狼軍団らしく「ラストハント」(最後の狩り)、そして、アウェイで初勝利を挙げて「新しい歴史を創る」(共同主将の一人流大)をテーマに臨んだ。
サンウルブズのメンバーを見ると共同キャプテンのNO8(ナンバーエイト)ヴィリー・ブリッツ、SH(スクラムハーフ)流大が2人先発に入った。
HO(フッカー)庭井祐輔、PR(プロップ)浅原拓真、LO(ロック)ヴィンピー・ファンデルヴァルト、FL(フランカー)リーチ・マイケル、WTB(ウィング)山田章仁、CTB(センター)立川理道ら日本代表メンバーも先発し、追加招集されたばかりのWTB藤田慶和は、嬉しいスーパーラグビー初キャップとなった。
また、すっかりサンウルブズの顔になったPRクレイグ・ミラー、SO(スタンドオフ)ヘイデン・パーカー、CTBマイケル・リトルもスターターに名を連ねた。CTBベンチにはPR稲垣啓太、LOFL姫野和樹、SH田中史朗、SO/CTB松田力也、CTB中村亮土といった日本代表でもお馴染みの選手が入った。
一方のレッズは、NECにも在籍したNO8スコット・ヒギンボサムがゲームキャプテンを務めた。
PRタニエラ・トゥポウ、HOブレンダン・パエンガ・アモサ、LOアイザック・ロッダ、FLラカン・ツイいった6月にオーストラリア代表として活躍した選手も先発。19歳のSHテイト・マクダーモット、20歳のSO(スタンドオフ)ハミッシュ・スチュワートと若きハーフ団がチームをコントロールする。
サンウルブズは初の4勝目をかけた戦いで、一方のレッズは第13節に63-28で敗れているリベンジがかかった戦いであり、前半からお互いに気持ちのこもった試合となった。
試合序盤、サンウルブズはミスがあり、なかなかボールがつながらない。すると前半5分先制したのはレッズだった。スクラムを起点にFBジョノ・ランスが突破しチャンスを作ると、最後は期待のFLリアム・ライトがトライ、FBランスのゴールも決まって、0-7とリードする。
自陣からでもボールを積極的に回し、キックもタッチに蹴らず「ボールインプレー」を長くしようと臨んだサンウルブズも徐々にリズムをつかみ、14分、16分には相手のペナルティから〝ゴールデンブーツ〟のSOヘイデン・パーカーがPG(ペナルティゴール)を決め、6-7と1点差に詰め寄った。
だが、サンウルブズは再びディフェンスがほころびを見せて、NO8ヒギンボッサムに突破を許し、最後は元オーストラリア代表WTBエト・ナンブリにトライされて、6-14と点差を広げられてしまう。
しかし、アタッキングチームであるサンウルブズは28分、ラインアウトを起点に攻撃を重ね、最後はSH流からCTBマイケル・リトルのパスを、相手がインテンショナルノックオン。
そのプレーがなければトライだったということでペナルティトライ(13-14)、ボールを意図的に叩いたと判定された相手CTBダンカン・パイアアウアはシンビン(10分間の一時的退場)となった。
1点差に迫り、さらに数的有利となったサンウルブズは畳みかけたいところだった。
しかし、自陣からアタックする姿勢が仇となり、30分、ペナルティーから相手にPGを決められ13-17、さらに32分にFBランスに突破を許してしまいトライを献上し13-22と逆にリードを広げられてしまう。
さらに狼軍団は苦境に追い込まれる。前半37分、サンウルブズのFLエドワード・カークが一発レッドカード。サンウルブズは先週に続いて前半で一人選手を欠いた状態で戦わなければならなくなってしまった。
相手選手がシンビンから戻った40分、ゴール前に迫られ、最後はPRトゥポウが右手を伸ばしてトライ。結局サンウルブズは13-29と大きくリードされて前半を折り返した。
後半、サンウルブズは1人選手が減っても積極的にアタックする姿勢を見せたが、ゴールラインが遠い状態が続く。6分、レッズのFLケイリブ・ティムが危険なタックルでシンビンとなり一時的だが、14対14となる。
だが、11分、FLリーチが相手CTBパイアアウアにボールを強奪され、再びWTBナンブリにインゴールを陥れられてしまい13-36。
その後は数的有利のレッズの時間帯となり、17分にはCTBパイアアウア、24分には途中出場のWTBモーゼス・ソロヴィにトライを許し13-48と大きくリードされてしまう。
しかし、サンウルブズも最後に意地を見せる。32分、CTBリトルのクイックスローから途中出場のCTB中村がスーパーラグビー初トライ。さらに35分には途中出場のHOジャバ・ブレグバゼが角度を付けた素晴らしいランで抜け出しトライを挙げた。
しかし、終わってみれば7トライを挙げたレッズが27-48でサンウルブズを下し、リベンジを達成した。
最終順次は、レッズは総勝ち点28でカンファレンス4位(全体13位)、昨シーズンより1つ多い3勝を挙げたサンウルブズは、総勝ち点14でカンファレンス5位(全体18位)となった。
勝利したレッズのゲームキャプテンNO8ヒギンボサムは「勝ったのは嬉しいが、最終的にプレーオフのワイルドカードに入れなくて残念だ」。
「後半は相手のレッドカードでラッキーな部分もあった。今季は若いチームで中盤、調子が落ちた時期もあったが、選手、スタッフも素晴らしかった」と若手の成長を実感していた。
腰の手術によりニュージーランドに帰国したジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)に代わってHC代行を務めたトニー・ブラウン ヘッドコーチは「(エドワード・カークにレッドカードが出たことについては)我々にとって厳しい判断となりました。2週連続でこのような事が起こり、サンウルブズの本来のパフォーマンスが出せなかった事は非常に残念です」と肩を落とした。
ただ、ブラウンHC代行は「我々はサンウルブズの選手たちを誇りに思っています。チームはシーズンが深まるにつれて、高いパフォーマンスを発揮できる集団になっていきました」。
「ラグビー自体の質も上がり、そして世界最高のチームに対して高いレベルで対抗できるようになりました。将来的にはこういったチームを倒し、スーパーラグビーのタイトルを獲得できるチームを目指していきたい」と先を見据えた。
サンウルブズのゲームキャプテンNO8ブリッツは「ちょっとストレスのたまるゲームだった。特にレッドカードが出た後は。だけどサンウルブズの選手はいつでもエキサイティングなゲームをしようと、最後まで前を向いてボールをキープしようとした」。
「レッドカードはちょっと疑問だけれども、それもラグビーだ。今季は過去最高の3勝を挙げることができてチームも成長した」と最終節とシーズンを振り返った。
こうしてサンウルブズは3勝13敗(総勝ち点14)で1月末に始動した長いシーズンを終えた。順位こそ最下位に終わったが、1年目の1勝1分13敗(総勝ち点9)、2年目の2勝13敗(総勝ち点12)よりも上積みしてシーズンを終えたことは大いに評価できよう。
サンウルブズがスーパーラグビーに参入して4年目の来季は、日本で開催されるワールドカップイヤーであり、シーズンは2月に開幕してウインドウマンスがなく、続いていくタフなシーズンになる。
それでもアウェイでの初勝利だけでなく、接戦も制する粘り強さを見せて白星を重ねて、初のプレーオフ進出を目指してほしい!
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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