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6月のウインドウマンス(代表月間)が明けて、いよいよ今週からスーパーラグビー2018が再開した。今シーズンも残り3節となったサンウルブズは、6月30日(土)、ホームの1つであるシンガポールに、優勝3回を誇る南アフリカのブルズを迎えた。
2勝11敗で総勝ち点10のサンウルブズ(オーストラリアカンファレンス5位)は第15・16節こそ、アウェーでレベルズ、ブランビーズに敗れたものの、ホームで行われた第13節のレッズ戦、14節のストーマーズ戦には勝利しており、ホームでの3連勝、そしてスーパーラグビー参入3年目にしてシンガポールの地で初の白星を目指した。
昨年、ウインドウマンス明けの試合に大敗した反省から、ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は6月中旬から日本代表に参加していない外国人選手を集めて合宿を敢行し準備を進めた。同時に日本代表で試合時間が少なかった、モチベーションの高い選手の多くをブルズ戦の遠征メンバーに招集した。
ただ、ジョセフHCは腰の手術のためにニュージーランドに帰国。その代わり、最終節までの3試合はトニー・ブラウン アタックコーチがHC代行を務めることになった。
キャプテンのFL(フランカー)ヴィリー・ブリッツを筆頭に、PR(プロップ)クレイグ・ミラー、ジョージア代表として先週の試合に出場したHO(フッカー)ジャバ・ブレグバゼ、LO(ロック)ジェームズ・ムーア。
正確無比のキッカーSO(スタンドオフ)ヘイデン・パーカー、突破力に長けたCTB(センター)にはマイケル・リトルとジェイソン・エミリー、WTB(ウィング)セミシ・マシレワら、スターターにはお馴染みの顔が並んだ。また、ゲラード・ファンデンヒーファーがFB(フルバック)として、サンウルブズ初先発となった。
また、先週まで日本代表として活動していたPR浅原拓真、LOヘル ウヴェ、FL布巻峻介、NO8(ナンバーエイト)徳永祥尭、SH(スクラムハーフ)内田啓介、WTB山田章仁が先発に、同じく代表として試合に出場していたPR石原慎太郎、HO庭井祐輔、SH田中史朗、SO/CTB松田力也、CTB中村亮土もベンチ入りした。
一方、5勝8敗と黒星先行し、昨年もサンウルブズに敗れている南アフリカカンファレンス5位のブルズは、総勝ち点24とカンファレンス2位のジャガーズとは10点差とわずかながらプレーオフ進出できる可能性を残していたため、6月のテストマッチに出場していた南アフリカ代表選手を休ませず、本気の布陣で臨んだ。
スプリングボクスの10番を背負ったキャプテンのSOハンドレ・ポラードを軸に、PRピエール・スクーマン、LOのRG・スナイマン、SHエンブロス・パピエー、CTBジェシー・クリエル、FBウォリック・ヘラントといった南アフリカ代表選手の多くが先発した。
高温多湿のシンガポールの試合。ブルズはサンウルブズよりもFW(フォワード)の平均身長で6.5cm、平均体重で4gkほど上回っており、ブラウンHC代行は「当然今回の試合はとても蒸し暑い中での試合が予想され、肉体的にも消耗するでしょう」とコメント。
「しかし、これを自分たちのアドバンテージとして活かし、クイックなゲーム展開、ボールを動かしていきたい」と意気込んだように、キックを使いつつ、スピードと展開力で大きなFWが自慢の相手に挑んだ。
試合はいきなり、サンウルブズがアタックで魅せる。前半2分、ラインアウトを起点にCTBリトルが抜け出しビッグゲイン、フォローしたWTB山田に渡り、オフロードパスが乱れたもののCTBエミリーが素早く反応しキープ、左に展開し、最後はSOパーカーが左隅に飛び込んでトライ。
自身でゴールを決めて7-0で先制する。さらに19分にはラインアウトのサインプレーからSH内田啓太が抜け出し、トライを挙げて14-0とリードを広げた。
しかし、23分には相手CTBクリエルにFBファンデンヒーファーのキックがチャージされてしまい、そのままトライを許す。28分にもクイックスローイングが乱れ、再びCTBクリエルにトライを献上し、14-14と同点に追いつかれてしまう。
その後はブルズペースで試合が進み、試合終了間際の38分、相手のモールを反則で止めてしまったFLブリッツが、シンビン(10分間の一時的退場)となり数的不利に。その後もFWを前面に押し出したブルズに後手を踏み、40分にはSOポラードにギャップを突かれてトライを与えて14-21でハーフタイムを迎えた。
後半、先に得点を挙げたいサンウルブズだったが、2分、相手にPG(ペナルティゴール)を許し、14-24と10点差をつけられる。
それでも6分、14人だったサンウルブズはラインアウトのサインプレーからWTBセミシ・マシレワが抜け出し、最後はFBファンデンヒーファーが左隅にトライ。
ゴールも決まって、21-24と3点差に追い上げる。だが、9分、すぐに相手PRにトライを与えて21-31と再び10点差に。
残り30分、「僕らが走り勝てるのはわかっていたし、相手が疲れてくるのもわかっていたので、ボールインプレー増やそうとした」とNO8徳永が言うように、明らかに相手のFWの疲れが見えてくると、サンウルブズの時間帯となる。
12分、ラインアウトを起点に途中出場のSH田中、WTB山田、FLブリッツとつながり、最後はブリッツが左中間にトライを挙げて28-31と再び3点差に。
相手にPGを決められ、28-34とされた後の25分、ターンオーバー後に自陣から見事にボールをつないで、CTBエミリーのロングパスを大外にいた途中出場のFLラーボニ・ウォーレンボスアヤコが受けて、最後は内側をフォローしたCTBリトルへ。ついに35-34と逆転に成功。
31分、ブルズもSOポラードがPGを決めて、35-37と再逆転するが、残り10分弱、サンウルブズの集中力と意地がブルズを上回る。
35分、自陣22m右のラインアウトから、FLウォーレンボスアヤコが抜け出して中央にトライ、ゴールも決まって42-37とサンウルブズが3度目のリード。最後の3分間ほどは、SH田中がFWを使って時間を消費し、そのままサンウルブズが42-37で勝利した。
サンウルブズにとってはスーパーラグビー3年目で初めてシンガポールでの白星奪取となり、初のシーズン3勝目、そしてホームでの3連勝となった。
サンウルブズは勝ち点4を重ねて、総勝ち点を14に伸ばした。ブルズは7点差以内の敗戦で勝ち点1を獲得して総勝ち点25としたが、南カンファレンス2位のジャガーズが勝利したため、プレーオフ進出は厳しくなった。
痛い星を落としたブルズのキャプテンSOポラードは「気温が高いのは事前に分かっていたので、早い段階で相手よりもボールをキープし続け、チャンスを確実にものにしたかったが、やはり接戦になってしまい、結果的に負けてしまったことは残念」と語った。
そして、「このような湿気のある気候はタフなゲームだったが、それは言い訳にすることはできない。また(南アフリカのホーム・)ロフタス(・ヴァースフェルド)に戻って立て直したい」と前を向いた。
シンガポールで初の勝利を挙げたサンウルブズのブラウンHC代行は「シンガポールでの初勝利になりましたが、素晴らしいことです。全てのラグビーチームが、シーズンが始まる時に前のシーズンよりも向上したいと思うものです。このチームとしては歴史を作ることができました」と目を細めた。
勝因に関しては「リザーブメンバーたちも素晴らしい仕事をしたと思います。いくつかのミスはありましたが、チャンスはどこかで拾うものです。前半は特にプラン通りにいかなかった部分もありましたが、ディフェンス面ではチームとして自信がついてきたと思います」とベンチメンバーと組織ディフェンスに言及した。
FLブリッツキャプテンは「ソフトモーメントはいくつもありました。2、3 のミスから失点に繋がってしまいましたが、我々は次の仕事に集中して取り組むことができたと思います」。
「自分たちのストラクチャー、自分たちのプレーができました。今回シンガポールで勝ち、サンウルブズは新たな歴史を作りました。シンガポールは我々のホームです。だからこそ、ファンのためにも勝ちたいという思いがありました。嬉しい」と声を弾ませた。
ホームで2連勝して自信を得たことはもちろん、昨年の同じ時期と比べて、チームとして一体感、まとまりがあったことも勝因の一つとなった。FL徳永は「布巻、ビリー(ブリッツ)が尽力してくれたので、代表組と他の選手たちとコネクトが早くできた」とリーダー陣の働きを称えた。
この試合でケガなどの理由により、PR石原慎太郎、LOヘル ウヴェ、LO真壁伸弥、FL布巻峻介、内田 啓介、ゲラード・ファンデンヒーファーがチームから離脱。
オーストラリア遠征からPR稲垣啓太、LO/FL姫野和樹、LO/FLヴィンピー・ファンデルヴァルト、FLリーチ マイケル、共同キャプテンのひとりSH流大、CTB立川理道がチーム合流した。
シンガポールで新たな歴史を刻んだサンウルブズは、そのままオーストラリアに場所を移し、7月7日の18節はワラターズと対戦し、13日の19節はレッズと対戦する。残り2試合、アウェーでの初勝利を目指しつつ、5勝まで星を伸ばしてほしい。
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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