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今季初勝利をあげたサンウルブズは、つかの間の喜びに浸ったが、休む間もなく次節のストーマーズ戦のため、5月16日、香港へ出発した。19日の戦い場となるのは旺角大球場(モンコックスタジアム)である。香港九龍旺角にあり、陸上トラックのない球技場で約6,600人収容のコンパクトなスタジアムだ。両チームのサポーターは迫力のぶつかり合いを間近で観戦できる。好試合になれば、大いに盛り上がるだろう。
サンウルブズのレッズ戦勝利の理由は、さまざまだが、なによりディフェンスのレベルアップが大きい。ニュージーランド遠征でのクルセイダーズ(第10節)、ハリケーンズ(第11節)との2試合では、昨年の王者と一昨年の王者に対して、攻守にプレッシャーをかけることができていた。鉄壁のディフェンスを前に勝つことはできなかったが、トライチャンスを何度も作ることができた。レッズとの試合ではさらにプレーの精度が上がっていた。堀江翔太はレッズ戦のディフェンスについて、試合後、こうコメントしている。「しっかり顔を上げて前向いて、枚数が合うように。外からのコールで、自分は前に出るのか残るのか、その判断もしっかりするようにしました。なので、相手に余られるシーンもあまりなかったかと思います。ボールに対して2人で入るということも意識しました」。
スーパーラグビー参戦3シーズン目にして初の連勝を狙いたいが、目標達成は簡単ではない。ストーマーズは、南アフリカカンファレンスで最下位だが、ここまで5勝7敗で勝ち点は「23」。同カンファレンスは、ライオンズが勝ち点「31」で首位を走るが、2位のジャガーズ、3位ブルズ、4位シャークスが勝ち点「24」で並んでおり、大混戦だ。つまり、ストーマーズにもプレーオフ進出の可能性は残されており、サンウルブズに対しても必勝態勢で臨んでくるということだ。
リーグ全体のスタッツ(統計数値)で見ると、ストーマーズは、ボールキャリー(ボールを持って走った回数)が、1,392回でリーグ1位。アグレッシブに攻撃してくるチームであることが伺える。軸になっているのは日本の近鉄ライナーズでプレー経験のあるCTBダミアン・デアリエンディ(190cm、105kg、26歳)。個人のキャリー回数は、レベルズのアマナキ・レレィ・マフィに次いで2位、ディフェンス突破回数もブルーズのアキラ・イオアネに次いで2位だ。ランニングスキルが高く、簡単にタックルさせてくれない。もっとも警戒しなくてはいけない選手だろう。
SOダミアン・ヴィレムセ(184cm、90kg、20歳)は、卓越したパススキルを持ち、正確なプレースキッカーでもある。南アフリカ代表の万能BKディリン・レイズ、オフロードパスが巧みなFB/CTBのSP・マレーも防御側にとってはやっかいな選手だ。FWにはHOボンギ・ンボナンビ(180cm、102kg、27歳)、FLシヤ・コリシ(188cm、102kg、26歳)、LOエベン・エツベス(204cm、117kg、26歳)、LOピーター=ステフ・デュトイ(200cm、115kg、25歳)といった南アフリカ代表選手が揃う。
サンウルブズとしては、突破役の選手たちを走らせないようにプレッシャーをかけ続けたい。セットプレーの安定は勝利に不可欠だが、レッズ戦のラインアウトの成功率は91.7%と高く、ミスは一度しかなかった。長身選手が並ぶストーマーズに対してもこのレベルを続けたい。レッズ戦と同じようにスピーディーにボールを動かし、ストーマーズの大型選手を翻弄できれば勝機はあるはずだ。この試合を終えると、ジェイミー・ジョセフヘッドコーチは、6月のイタリア戦、ジョージア戦に臨む日本代表のチーム編成、強化に集中することになる。日本代表の戦いを後押しするような、勢いある試合内容を期待したい。
村上 晃一
ラグビージャーナリスト。京都府立鴨沂高校→大阪体育大学。現役時代のポジションは、CTB/FB。86年度、西日本学生代表として東西対抗に出場。87年4月ベースボール・マガジン社入社、ラグビーマガジン編集部に勤務。90年6月より97年2月まで同誌編集長。出版局を経て98年6月退社し、フリーランスの編集者、記者として活動。
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