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開幕から8連敗となかなか勝ち星に恵まれないヒト・コニュニケーションズ サンウルブズ。
4月27日(金)、スーパーラグビーの第11節(チームにとっては9戦目)、ニュージーランドのウェリントンにある、ウエストパック・スタジアムで、2年前の王者で、今年も開幕から6勝1敗と好調を維持し、ニュージーランドカンファレンス2位につけるハリケーンズに挑んだ。
サンウルブズにとって、ハリケーンズは昨年の開幕戦で17-83と大差で敗れた相手だけに、どこまでディフェンスで粘って、試合を作ることができるかに注目が集まった。
ジェイミー・ジョセフHC(ヘッドコーチ)は「ハリケーンズは、恐らくこのリーグの中で最強のチーム。我々はできるだけ彼らの時間とスペースを奪い、プレッシャーをかけることが重要です。また、ディフェンスも積極的に取り組まなければいけません」と気合い十分だった。
先週、サンウルブズは、昨年の王者クルセイダーズ(ニュージーランド)に試合途中まで競って、11-33で敗れたものの善戦したため、先発は2人変更にとどまった。
PR(プロップ)具智元が頚椎捻挫のために外れて、浅原拓真が3番をつける。また、ブルーズ戦の脳しんとうからHO(フッカー)堀江翔太が復帰した。
「先週のクルセイダーズ戦ではチームはプランを遂行することができ、とてもいい試合でした。したがって先週の試合から一貫性を持つということを大事にし、今回のセレクションにはできるだけ変化(メンバー変更)を作らないということがベストな選択だと考えました」(ジョセフHC)。
一方、開幕戦で敗戦したものの、目下6連勝と絶好調のハリケーンズ。2年連続でワールドラグビーの最優秀選手に輝いているSO(スタンドオフ)ボーデン・バレットと弟のFB(フルバック)ジョーディー、さらにFL(フランカー)アーディーとWTB(ウィング)ジュリアンのサヴェア兄弟といったオールブラックス経験者が先発。
前節まで9トライを挙げてトライランキングトップに立つWTBベン・ラム、6月にはイングランド代表に招集されると噂されているキャプテンのFLブラッド・シールズも先発に名を連ねた。
また、控えにも今年初めて、肩のケガから復帰したオールブラックスのWTBネヘ・ミルナースカッダーが入るなど、ホームということもあり本気の布陣で臨んだ。
前半3分、ハリケーンズがボールを動かしトライと思われたが、その前のプレーでスローフォワードがあり、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)の結果、ノートライとなる。
すると前半9分、サンウルブズが反撃し、ラインアウトを起点にボールを継続。
特にこの試合では、FWのピック&ゴーのアタックが効果的で、最後はこの試合で、2試合連続ゲームキャプテンを務めるFLピーター・ラピース・ラブスカフニが相手のタックルを外して中央左にトライ。SOヘイデン・パーカーのゴールも決まり、7-0と先制する。
前半15分、相手WTBジュリアン・サヴェアにトライを許し、7-7と同点に追いつかれるが、サンウルブズもすぐに反撃し、18分にSOパーカーがPGを沈めて、10-7と逆転に成功する。
ただ、ホームのハリケーンズは調子の良さを見せつけて、スクラムを起点に2トライを許してしまう。前半28分、スクラムからSOボーデン・バリットが切れ込み、内側をフォローしたSHフィンレー・クリスティーが中央左にトライ。
さらに39分にも、スクラムからNO8リード・プリンセプがブラインドサイドに飛び込んで、21-10とリードして前半を折り返す。
11点差のサンウルブズも後半、先にトライを挙げて得点差を縮めたかったが、ミスでチャンスを生かし切れずにいると2分、ハリケーンズFBジョーディー・バレットにビッグゲインを許し、トライを喫して10-26とリードを広げられてしまう。
相手がラインアウトで苦しんでいることや接点での反則もあり、敵陣でのアタック時間が続いたサンウルブズは、後半6分、16分とボールを継続してインゴールへボールを押し込んだが、相手のゴール前の粘りのディフェンスの前にTMOの末に残念ながらトライは認められなかった。
その後もモールと近場のFWのアタックを軸に攻め込むが、なかなかトライラインが遠く、苦しい時間帯が続く。そんな中、後半29分、相手のキックをサンウルブズCTBマイケル・リトルがラックを形成し、途中出場のSH流大がすばやく相手の背後にキック。
それに反応したWTB福岡堅樹がスピードを活かしてボールに追いつき、そのままインゴール左隅に飛び込んでトライ。
「流ともしっかりコミュニケーションが取れて、裏にスペースが空いていると分かっていたので、急いで戻ってそこを狙いに行きました」(福岡)。サンウルブズは-15-26と、点差を再び11点に追い上げる。
残り10分、早い時間にトライを挙げて逆転の可能性を見出したかったが、相手は、さすが一昨年の優勝チームだった。
サンウルブズのフィットネスと集中力が落ちたところを見逃さず、ボールをしっかりつないで、後半34分にはCTBヴィンス・アソ、37分にFLシールズ、39分には再びCTBアソにトライを決められ万事休す。
結局、後半最後の3トライが響き、7トライを喫したサンウルウブズは15-43とされ、そのままノーサイドを迎えた。
7連勝のハリケーンズはしっかりと勝ち点5を獲得し、総勝ち点を32に伸ばした。一方のサンウルブズは勝ち点を挙げられず開幕9連敗となり、総勝ち点は2のまま。
ゲームキャプテンを務めたハリケーンズのFLシールズは、「サンウルブズはシーズンを重ねるごとによくなっているため、後半に入るまでは苦しめられた」。
「後半、いくつかいいトライを挙げられたので勝利できてよかった。(ここまで)我々はタフなシーズンを過ごしているが、いいステップを重ねていると感じている」と振り返った。
サンウルブズはボールポゼッション61%、テリトリーは67%と、ニュージーランドの強豪相手にボールをキープして、敵陣で攻撃し続けることができたが、敵陣22m内に入っても相手の固いディフェンスの前にトライが取りきれず、2トライしか挙げられなかったことが響いた。
ただ、セットプレーも安定しつつあり、敵陣奧にまで入ることができているだけに、決定力が上がれば勝利は近いはずだ。
ジョセフHCは、「最終的に大きな点差が開いてしまった事は大変残念な事ですが、今日の最終スコアは、この試合全体を反映しているものではないという事を申し上げたい」。
「今日の試合については、全ての側面において改善が見られたと思います。試合に臨む姿勢、正確性、作戦の実行というのも一貫性を持ってきています」と冷静に分析した。
ゲームキャプテンFLラブスカフニは「非常に前半の入りは良かったと思っています。後半に入って我々のプレーも洗練されて、ボールポゼッションも上がってきたと思うが、ただただゴールラインを超えることができなかった」。
しかし、「我々のアタックはすごくよく機能しているし、相手にプレッシャーを与えていることはできていると思う。一番大事な事はこのチームが全体としてポジティブなマインドセットを持ち続ける事です」。
「すべて上手くいっている時は、自分たちが正しいと信じることは簡単です。今は上手くはいっていない時ですが、きちんと自分達のプレーを見つめ信じることによって、結果もいてくると思います」。
「毎週コーチ陣とスタッフが、チームがいい準備ができる状態をしっかり作ってくれています。選手たちは毎週フィールドに出て初勝利を目指しています。勝利はすぐそこだと思っています。継続的に頑張っていきます」と前を向いた。
ニュージーランドでクルセイダーズ、ハリケーンズと連戦を終えたサンウルブズは、次節は「BYEウィーク」(休みの週)で、その翌週の第13節、5月12日(土)、同じオーストラリアカンファレンスのレッズと、ホームの東京・秩父宮ラグビー場に迎える。
この試合はサンウルブズにとって今季、秩父宮ラグビー場最後の一戦となる。タフなニュージーランドのツアーで得た経験と教訓を活かし、次戦こそ多くのファンの前で、今季初白星を奪取し、勝利の雄叫びを上げてほしい!
斉藤 健仁
スポーツライター。1975年生まれ、千葉県柏市育ち。ラグビーと欧州サッカーを中心に取材・執筆。エディー・ジャパン全試合を現地で取材!ラグビー専門WEBマガジン「Rugby Japan 365」「高校生スポーツ」の記者も務める。学生時代に水泳、サッカー、テニス、ラグビー、スカッシュを経験。「エディー・ジョーンズ 4年間の軌跡」(ベースボール・マガジン社)、「ラグビー日本代表1301日間の回顧録」(カンゼン)など著書多数。≫Twitterアカウント
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