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4月14日(土)、東京・秩父宮ラグビー場で、ヒト・コミュニケーションズ サンウルブズの国内第5戦となる三菱地所スーパーラグビー2018第9節、ブルーズ(ニュージーランド)戦が行われた。
サンウルブズはここまで開幕6連敗で、所属するオーストラリア・カンファレンスで最下位(5位)。
もともと2015年W杯の4強(ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン)が参加する最高峰リーグである上、開幕戦から怪我人が続出するなど想定外の事態もあった。
ただ、これまで怪我人の影響もあり毎回大幅なメンバー変更をしてきたが、ブルーズ戦における前節からの先発変更は、LOグラント・ハッティングの1人のみ。
第2戦から6人、11人、5人、11人、9人と続いてきた先発変更が1人に激減し、今季初めて先発15人をほぼ固定することができた。
その先発メンバーを見てみると、成功率92%のスクラムを支えるFW第1列にPRクレイグ・ミラー、HO堀江翔太、PR具智元。両ロックはジェームス・ムーア、前節から唯一の変更となるハッティング。
FW第3列はFL徳永祥尭、FLピーター・ラブスカフニ、前節に続いて8番を背負う姫野和樹。
バックスの先発はSH流大、SO田村優、CTB マイケル・リトル、CTBラファエレ ティモシー。
バックスリーはWTBレメキ ロマノ ラヴァ、WTBセミシ・マシレワ、最高峰に松島幸太朗という布陣となった。
またこの日、9562人が来場した秩父宮のメインスタンドコンコースには、サンウルブズのVR(ヴァーチャル・リアリティ)コンテンツを体験できる「サンウルブズVR体験ブース」が登場し人気を集めていた。
KDDI提供のドーム型VRスペースと、ヘッドマウントディスプレイの2種類で視聴した練習映像、特にスクラムの中から選手を見上げる映像は迫力があった。
その秩父宮に乗り込んできたブルーズだが、1996年のスーパーラグビー元年から2連覇しているものの、近年は2011年以来プレーオフから遠ざかっている。今季はここまで1勝5敗とふるわない。
昨季は第17節(最終節)でサンウルブズに21-48で敗れ、その日ゲーム主将を務めたブルーズのHOパーソンズは帰国後、メディアを通して敗戦をファンへ謝罪した。
2季連続の敗戦は避けたいブルーズは、かつてリコーに所属したエディ・イオアネを父に持つNO8アキラ、CTBリーコのイオアネ兄弟など強力メンバーを先発へ。
3月中旬に左手首を骨折した元パナソニックのソニー=ビル・ウィリアムズ、元トヨタ自動車のFL/NO8ジェローム・カイノらはメンバー外となったが、PRオファ・トゥウンガファシ、LOパトリック・トゥイプロトゥなどのNZ代表キャッパーが並んだ。
午後12時5分、ニック・ブライアント主審の笛でキックオフ。サンウルブズは好スタートを切った。
「今日は絶対に行けると思いました。前半は感覚的に悪いものはなかったですし、通用しました。外にスペースもありました」(FL徳永)
前半3分、ブルーズのLOトゥイプロトゥが危険なタックルでシンビン(10分間の一時退場)。ここで得たペナルティをSO田村が決め、狼軍団が3点を先制。
サンウルブズはボールを保持するブルーズに対し、鋭い出足のディフェンスから、ボール争奪局面でLOハッティング、FLラブスカフニらがプレッシャーをかけて攻撃権を奪った。
成功率の低かったラインアウトも安定し、前半16分には逆に相手ボールのラインアウトでスティール。空中戦のディフェンスも光った。
快調な滑り出しのサンウルブズは前半21分、一時出場していたヘイデン・パーカーが6フェイズ目でライン突破。
左隅でオフロードパスを受けたCTBラファエレが先制トライを決め、精密なキッカーであるパーカーのコンバージョンも決まり10-0とした。
それまでほとんどサンウルブズ陣でプレーできなかったブルーズ。
しかし自陣でのターンオーバーから攻め込んだ前半28分、WTBジョーダン・ハイランドが右隅でタックルを解いて今季自身初トライ(ゴール失敗)。
ただ自陣ゴール前のピンチをWTBマシレワのタックルを起点に脱出するなど、サンウルブズもスコアを許さず10-5で後半へ。ロッカーへ引き返す狼軍団に拍手が送られた。
乱調が起きたのは後半だった。共同主将のSH流はその原因をこう振り返った。
「後半の最初5分で、コミュニケーションレベルが正直落ちていました。ディフェンスシステムもそうですし、個人のタックルミスもありました。ペナルティでも相手に流れを渡してしまいました」
後半10分、マイボールスクラムでの反則から自陣へ後退した狼軍団は、連続攻撃を受け、9フェーズ目でNO8アキラ・イオアネが左隅を突進。
ここでタックルミスが起こって左中間にトライ(ゴール)を決められ、サンウルブズは10-12と逆転を許した。
さらに似たパターンでの失点が続いた。
サンウルブズは後半13分、ラックでペナルティを犯して自陣へ後退。そこから6フェーズ目で途中出場のダルトン・パパリイが左隅を突破。4人がタックルを外され、同15分にインゴールを明け渡した(ゴール成功)。
その後、サンウルブズは敵陣でフェーズを重ねる機会もあったが、たびたびボールキャリアーが封じられてアンプレイアブル。攻撃を継続できなかった。
一方のブルーズは後半36分、相手ゴール前での徹底したフォワード攻撃から一転、右サイドへ鮮やかに配球し、WTBハイランドがこの日2トライ目をスコアし、勝負アリ。
ブルーズが24-10で今季2勝目を挙げた。
第4節ライオンズ(南アフリカ)戦以来の勝利を挙げたタナ・ウマンガ ヘッドコーチ(HC)は「サンウルブズがどうくるかというよりも、自分たちに何ができるかということに特化して一週間準備してきました」
「この数週間の中でやっていたことが、ここで報われたという感想です」と喜びを語った。
またゲーム主将のHOパーソンズは、優勢だった後半について「ブレイクダウンがポイントでした」と、ボール争奪戦でプレッシャーをかけたことが勝利につながったと分析した。
一方、これで開幕7連敗となったサンウルブズのジェイミー・ジョセフHCは、敗戦を淡々と振り返った。
「非常に残念ですし、チームもそう思っています。前半はブルーズに大きなプレッシャーをかけていて、もう7点とれていたら畳み掛けることができたと思います。ハーフタイムはチームも自信に満ち溢れていました」
「しかし、ブルーズにはXファクターが揃っており、非常にしつこいチームで、攻撃をやめない――ということを念頭においたうえで戦いましたが、主導権を相手に渡してしまいました」
前半はラッシュするディフェンス、ブレイクダウンでのファイトからペースを握り、課題だったラインアウトも安定。十分に勝利を予感させる戦いを披露したサンウルブズ。
しかし後半は反則が増え、自陣へ後退したのち、エリア外側の防御を次々に破られた。逆転を試みるもボールキャリアーが絡まれ攻撃を継続できず、逆転は叶わなかった。
次こそファンへ初勝利を届けたいサンウルブズは、これからニュージーランド遠征へ旅立つ。
遠征先で対戦するのは優勝候補の2チーム、第9節終了時で5勝2敗のクルセイダーズ(4月21日/クライストチャーチ)と、6勝1敗のハリケーンズ(4月27日/ウェリントン)だ。
ファンの心を掴むようなファイトを貫き、今こそ全員で難所を乗り越えたい。
多羅 正崇
スポーツジャーナリスト。法政二高-法政大学でラグビー部に所属し、大学1年時にスタンドオフとしてU19日本代表候補に選出。法政大学大学院日本文学専攻卒。「Number」「ジェイ・スポーツ」「ラグビーマガジン」等に記事を寄稿.。スポーツにおけるハラスメントゼロを目的とした一般社団法人「スポーツハラスメントZERO協会」で理事を務める。
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